脇役剣聖、全力を見せる②
五対一。
しかも五人は七大剣聖。俺じゃなかったら絶望するような面子だが、俺はワクワクしていた。
この五人と、全力で、しかも同時に戦える機会なんて、恐らくもう二度とない。
普段は戦いなんてめんどくさいし、できることならさっさと終わらせたい派の俺だが……弟子たちのあんな姿を見せられたら、もうマジになっちゃうね。
「ラスティス……あなたの神器を見せてくれた礼に、私も見せましょう」
ランスロットが右手を前に突き出すと、淡い輝きが右腕を覆う。
右腕を肩まで覆う鎧、背中には輝く翼が生えた。
「『剣神器ソード・オブ・アグライア』……久しぶりに、全力を出しますが、よろしいですか?」
「おう。大歓迎だぜ」
そしてロシエルは水色のナイフを構える。
すると、周囲に水の球がポコポコと浮かび上がる。
「『水神器アパス』……口、利けなくするから」
「ははは、やってみな」
低い声で言うロシエル……こりゃマジで殺すつもりだな。
そして、アナスタシアの口元にマスクが装着される。
「『音神器ミューズ』……さて、楽しみましょうか」
「マスク? なんだそれ? それが神器?」
「ええ。ふふふ」
なんか、口元が隠れるだけなんだが、威圧感が増した気がする。
そしてラストワンが指を鳴らすと、背中に髑髏のような顔、そして髑髏から四本の金属棒が生えてきた。金属棒というか、金属製の虫の脚みたいな……背中にデカい虫がくっついてるように見える。
「へへへ、カッケェだろ? オレの『増神器ルシフェリオ』だ」
「……なんかキモイけど」
「同感ね」
アナスタシアも同意し、ラストワンは「ひっでえなオイ!!」とアナスタシアにツッコミ。どういう能力なのかわからんけど、初見じゃ形状だけで判断できないな。
そして、フルーレ。
「ラスティス・ギルハドレッド。一時的だけど……私は、あなたの弟子でもあったわ」
「ああ、そうだな」
「あなたを超える。たとえ、五対一でも、こうして戦えることに感謝する」
冷気が漂う。
すると、フルーレの身体に氷が纏わり付き、鎧として形成される。
さらに、足元にサファイアを削ったような形の、二メートルほどの狼……いや、犬が現れた。
「『氷神器クイーン・オブ・スカディ』……そして、この子は眷属の『冰犬ユミル』よ。さて、
この姿になった私は、全てを凍らせる……命をもね」
「……ほー」
全員が、神器を展開した。
恐らく、カジャクトもこの五人には勝てないだろう。
アルムート王国最強、七大剣聖に相応しい力だ。サティもイチカもルシオも、すごい力を見せつけたが、この五人にはまだまだ届かない。
驚いたのはフルーレ……こいつ、桁違いに強くなってやがる。
「さぁて、全員準備ができたな。みんな、本当に強い。でも言わせてもらうぜ……俺のが強い」
俺が五人を威圧する。
空気が張り詰めるが、誰も引こうとしなかった。
さて……やりますか。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
最初に動いたのは、ロシエルだった。
水を自在に操る『水神器アパス』を振る。形状はナイフで、誰よりも攻撃を早く行える。
ナイフを振ると、視認できないほど細い『水の糸』が数百本、ラスティス目掛け四方から降り注ぐ。
「『ラインピアス』」
ロシエルがボソッと言う。
すでに、他の四人も攻撃に映っているが、ロシエルが一番早かった。
だが、すでにラスティスの攻撃は終わっていた。
「『閃牙・乱蛇』」
ロシエルよりも早く抜刀し、ロシエルの『水の糸』全てを両断した。
思考すら追いつかない速度だった。
ロシエルが攻撃するより前に、ロシエルの『水の糸』がどこにどう放たれるかを察知し、全盛期の『閃牙』を放った。
ロシエルは、自分の『ラインピアス』が両断されたことに気付くのに、ラスティスが一瞬だけ視線を『わざと』送ってようやく気付いた。
「『真・聖光剣』」
「行きなさい、『冰犬ユミル』!!」
冰の犬が走り、光の斬撃が飛んで来る。
だがラスティスは一直線に突っ込んだ。
「ははっ、身体かっる!!」
キキン!! と、鍔鳴りがした瞬間、光の斬撃が霧散。さらに、ラスティスは冰犬ユミルが飛びついてきたのを躱し、なんと回し蹴りでユミルを蹴り飛ばす。
すると、ラストワンが。
「へへ、いくぜ」
蟲の脚のような四本の金属触手から、オレンジに輝く『杭』が生み出された。
ラスティスが怪訝な顔をすると、ラストワンはその『杭』をラスティスに向かって投げる。
斬ろうとしたが、ラスティスは回避。
杭の一本が地面に突き刺さると、なんと杭が爆発し、小さな杭が無数に飛んで周囲に突き刺さった。
「爆発する杭……」
「正解。まあ、爆発はおまけ。本命は……」
背中の金属脚から、オレンジの杭が再び生まれる。
「なるほどな。杭は無限に作れるのか」
「正解」
「『止まりなさい、ラスティス』」
次の瞬間、ラスティスの動きが止まった。
「っ!?」
アナスタシア。
一瞬だけ、ラスティスの動きが急停止。
その隙をフルーレは見逃さない。
氷の鎧、背中から冷気を噴射し、レイピアを突き出してきた。
「『冰犀刺突』!!」
「───!!」
速い。
これまでとは違う、鋭い突き。
身体はもう動く。ラスティスはニヤリと笑う。
「『閃牙・冥轟』」
「なっ……!?」
刀身ではない、刀の『腹』でフルーレの突きを弾き飛ばし、さらにフルーレの胸を叩いて吹き飛ばした。フルーレは派手に吹き飛ぶ……が。
「『フルーレ、私の隣へ』」
アナスタシアが言うと、上空を飛んでいたフルーレが消え、アナスタシアの隣へ瞬間移動した。
「『フルーレ、傷を癒しなさい』」
「ぐぅ……助かったわ」
フルーレの傷が綺麗に消えた。
ラスティスは「へえ」と呟いて言う。
「アナスタシアの神器……『名前を呼んだ相手に対して要求し、叶える力』ってところか。それが物理法則に反しても実現する……代償は、お前の体力か?」
「……正解」
アナスタシアは、すでに大汗を流していた。
能力は、ラスティスが言った通り。だが、各上に対て『要求』することは完全にはできない。今のアナスタシアでは、ラスティスに対し一瞬だけ動きを止める程度だろう。
ラスティスは、剣を肩に担いで言う。
「挨拶は終わりか。お前ら五人の神器、なんとなくわかった。さ~て……ここからは、さらに派手にやろうぜ」
戦いは、まだ始まったばかりだ。





