再戦・サティVSイフリータ(後編)
サティは興奮していた。
ルシオ。才能の化身とラスティスは言っていたが、まさか『臨解』と『神器』を同時に発現させるなどあり得ない……というか、考えもしなかった。
そして、それを見て思ってしまった。
ルシオは間違いなく、将来は七大剣聖になる。そして……自分を超える。
悔しいと同時に、どこか誇らしさもあり、姉弟子としてまだまだ背中を見せてやりたいと思った。
同時に、イチカの目に鋭さ、希望の光が灯ったのも見えた……イチカは、ルシオの強さに絶望することなく、前を向いて並び立つことを決めたのだ。
サティは、笑う。
「楽しそうだな、サティ」
「イフリータだって。さっきのルシオくんの戦いを見て、何か思ったことあるんでしょ?」
「まあな。アレは神スキルに愛され生まれてきたとしか思えん。あと十年もあれば、七大剣聖の長として成長し、魔族ですら滅ぼせるだろうな」
「同感。でも……あたし、そう簡単に負けないから!!」
紫電が爆ぜ、双剣を構えたサティが消える。
下半身が『雷』となる。まさに、電光石火。
「「『鳴雷』、『伏雷』!!」
「──雷、なるほどな」
死角に移動し、双剣による斬撃を叩きこもうとした瞬間、イフリータの神器『烈火盾ウェスタ』が手から離れ、イフリータを守るため自動で防御。
しかも、大盾そのものが高熱を帯び、炎を噴射した。
「うぁっ!?」
「ウェスタは私を自動で守る『盾』だ。私を守るためなら、速度は雷を超越するぞ!!」
そして、超高熱を帯びた『灼炎剣ブリギッド』による一閃。
サティは双剣を交差し防御するが、剣そのものから炎が噴射して推進力となり、強烈な一撃となってガードを弾き飛ばした。
サティは地面を転がるがすぐ立ち上がる。
「この『灼炎剣ブリギッド』を手にしていれば、私は全身のどこからでも炎を噴射することができる。攻守隙のない炎……それが、この神器の力」
「……すごい」
まるで間欠泉のように、イフリータの身体から炎が噴き上がる。
オートガードの盾、持つだけで身体のどこからでも炎を噴き出せる剣。
サティは、近づいて攻撃することもできなかった。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
バランスのいい神器……と、俺は思った。
するとランスロットが俺の隣へ。
「いい神器だな」
「ええ。実は、神器を手にできたのは偶然でした。というか……私のせいなのですがね」
「あん?」
ランスロットを見ると、罪悪感を感じているような目をしていた。
そして、なんとなく察してしまう俺。
「……お前。イフリータの枷を外す時、神を完全顕現させただろ」
「……お見通しですか」
「まあな。まあ、俺も同じことやったけど……たぶん、お前自身が強くなるためだろ?」
「本当に、お見通しですね」
つまりランスロット、本来はまあ……『半顕現』と呼ぶか。枷を外し神スキルを強力にするために『神魔解放』を半顕現で止めるのではなく、完全顕現させてから倒したのだ。
俺の場合は、ルプスレクスにやり方を聞いたからエミネムの神を完全顕現させたけど……こいつは、自分の修行のためにわざと、イフリータの神を完全顕現させた。
結果、ランスロットが勝ち、イフリータは臨解と神器を手に入れた。
「私は、まだまだ強くならねばならないのですよ。あなたに勝つために……という理由では、許されることではないでしょうね」
「まあ、結果的にいいんじゃねぇの? それより俺もけっこう昂ってるからよ、次の試合……」
「ええ。覚悟していますよ。ふふ……」
ランスロットは笑った。
こいつ、俺が何を考えてるのか理解してやがる……まあ、いいけどな。
「さあ、強者同士の戦いはすぐに終わりを迎えます。サティ、そしてイフリータの決着も近いですね」
「おう。お前も準備運動しておけよ」
戦いはいつの間にか、最終局面に入っていた。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
「『八尺瓊勾玉』!!」
サティが双剣の切っ先から、小さな『雷玉』を発射。だが、イフリータの『烈火盾ウェスタ』がオートで防御する。
「行くぞサティ!! 我が紅蓮の一撃!!」
そして、イフリータの背中から炎の翼が生える……正確には、翼ではなく噴射。
イフリータは跳躍すると、そのまま噴射で一気に上空へ。
「『炎牙両断』!!」
背中、剣の刀身から炎が一気に噴射し、落下の勢いを増幅させた斬撃となりサティに襲い掛かる。
サティは躱そうとした……が、歯を食いしばる。
「受けるよ、イフリータ!! その一撃、止めてみせる」
雷がこれまで以上に爆ぜる。
姉弟子として、ルシオやイチカにカッコいい……逃げない背中を見せたかった。
イチカ、ルシオはサティの背中を見ていた。
「……すっげえ」
「……馬鹿な、逃げ、いや躱さない……のか?」
「相手の渾身の一撃。逃げちゃダメな時を、サティはわかってんだよ」
ラスティスがいつの間にかルシオ、イチカの傍にいた。
「サティは見せようとしてるんだ。お前たちに、逃げちゃダメな時があるってことを……よーく見ておけ。あれが、お前たちが目指す最初の背中だ」
サティは双剣を交差させ、全身のリングが回転する。
「『神世七夜』!!」
渾身の一撃ではない。渾身の七撃が放たれる。
そして、イフリータの全身全霊の一撃と真正面からぶつかりあった。
「ぐあああおおおおおおおおおおお!!」
一撃、二撃、三撃……サティの技をイフリータが両断していく。
ウェスタによる防御がある。だが、紫電は盾を超え、イフリータの身体を掠めていく。
四撃、五撃、六撃を辛うじて破ったところで、イフリータは意識を失いかける。
だが……イフリータは目を見開いた。
「負ける、ものかァァァァァァ!!」
七撃……最後の一撃を相殺した。
サティが崩れ落ち、イフリータの大剣が倒れたサティの顔スレスレの地面に刺さった。
同時に、ボーマンダが叫んだ。
「勝負あり!! この勝負、イフリータの勝利とする!!」
こうして、二度目の戦いはイフリータの勝利で幕を閉じるのだった。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
俺は、気を失ったサティを抱き起そうとしたが……せっかくなのでルシオを呼んだ。
「ルシオ、サティを起こせ」
「え」
「さっき膝枕してもらっただろ。そのお返しだ」
まあ、こんなこと言ってる場合でもないんだが……ルシオはカチカチになりながら、サティをそっと抱き起こす。
「ぅ……」
「サティ、眼ぇ覚めたか」
「……し、師匠」
「負けたぞ、お前」
「……ぁ」
サティは顔を上げ、顔を真っ赤にしているルシオ、そしてイチカを見た。
「……まけた」
「ああ。互いに出し尽くした、いい一撃だった……ほれ」
俺が視線を向けた先には、ランスロットに支えられたイフリータが立っていた。
サティは立ち上がろうとしたので、ルシオに支えてもらい立ち上がる。
そして、イフリータが言う。
「今回は、私の、勝ち……だな」
「……うん」
「これで一勝一敗だ。サティ……次の勝負で決着を付ける。覚悟しておけ」
「イフリータ……」
「強かった。本当に……お前は、強い」
「……うん!! イフリータ、強かったよ、あたし……次は勝つから」
互いに、ボロボロの手を伸ばして握手。
俺とランスロットは顔を見合わせ、小さく頷くのだった。
次世代……本当に、俺が剣を振るうことがなくなるのは、近いかもしれんな。





