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純潔の愛を君に

作者: タチバナ

 散歩のつもりが思わぬ遠出になってしまった。

 私は花屋に並ぶ色とりどりの花をじっくりと観察していく。

 桜が舞い散る風景を見て、妻との大切な日がもうすぐだということを思い出したのだ。


「何かお探しでしょうか、お客様?」

「ああ……、実は妻に贈る花を探していましてね」

 店員さんに話しかけられた私は、少し照れながら答える。

「奥様へのプレゼントですか。素敵ですね。

 それではこちらのカーネーションなどいかがでしょうか?」

 店員さんがそう言って差し出してきたのは、オレンジのカーネーションだった。

 確か花言葉は「熱烈な愛」や「純粋な愛」というものだっただろうか。


「いえ、それよりも百合の花を探していましてね。

 それもとびっきりの白い百合がいい」

「白百合ですか……?

 申し訳ございません、生憎当店には供花用のものしかございませんので……」

 店員さんは申し訳なさそうに、私に頭を下げた。

 しかし、私は手を振りながら、続けて言った。


「いいですよ、それで」

「え……、しかし……」

「……いいんですよ、それで。何も間違っておりません」

「これは……、大変失礼をしました……。お悔やみ申し上げます……」

 そうして私は白百合を手にして帰宅した。きっと妻も空の上で喜んでくれることだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い文章のなかに、奥さんへの想いがにじみ出ていて、感じ入る作品でした。 [一言] 白百合は『純潔』を意味する花言葉があるのと同時に、『死』を含ませるため、結婚式、葬式の両方に使われるので、…
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