第八十九話 リオンとアリスとシルヴィとエリシア
「…う、う~ん」
港町にある病院。
その一室にてリオンは目を覚ました。
記憶が曖昧だ。
スレイドと戦い、勝った。
噴火の続く島から逃げて…
それから…?
「ここは…?」
清潔感のあるベッドから体を起こし、辺りを見渡す。
どれくらい寝ていたのかわからないが、少し広い部屋に寝ていたようだ。
ここで初めてリオンは、自身が病院にいることを理解した。
改めて自身の身体を見ると、体に受けた傷に包帯が巻かれていた。
軽く体の傷を摩るとまだ少し痛む。
「アリスに薬を…」
リオンの口から出たアリスの名。
そこで彼はこの場に彼女の姿が無いことに気が付いた。
彼はしばしの間昏睡状態にあった。
そのため、まだ頭が本調子でないようだ。
あの戦いの後から何があったのか。
思い出そうとするも、何も思い出せない。
と、その時…
「リオンさん…ッ!」
聞きなれた声がした。
アリスだった。
手に持っていた荷物を落とし、駆け寄ってきた。
そしてそのままリオンに抱き着く。
「よかった…目が覚めたんですね!」
ぼんやりとした瞳をアリスへ向けるリオン。
そして、しばらくボーっと見つめ合う。
「よかったぁ…!もう起きないかと思いました!!」
抱き着かれるリオン。
その勢いに戸惑いながらも、彼は優しく頭を撫でる。
なぜか、こうするのが正解な気がしたのだ。
以前もこんなことがあった気がする。
あれはいつのことだっただろうか…
「あ、アリス、ちょっと…まだ傷が…」
やがてアリスは落ち着いたようで、ゆっくりと体を離す。
今度は深々と頭を下げてきた。
「あ、す、すみません!」
「いや、いいよ。ありがとう。それより…」
リオンはアリスから改めて現状について聞くことにした。
スレイドを倒し満身創痍のまま、リオンは島から逃げ出すことに成功した。
先に逃げていたアリスたちにボロボロの状態で回収された。
そしてそのまま港町の病院に運ばれた、ということらしい。
「俺はどれだけ寝ていたんだ…?」
「十五日です」
「そっか…」
十五日と聞いて、長いような、短いような。
不思議な感覚だ。
もっと長く眠っていた感じさえする。
もっと、もっと…
「シルヴィは…?」
「連日の看護疲れで寝ています」
アリスが部屋の隅を指さす。
そのままではリオンにとって死角になっているので、少し体の角度をずらして覗く。
確かに、壁にもたれかけてシルヴィが寝ていた。
「エリシアちゃんは食事に出てます」
「食事かあ…」
「持ってきましょうか?お医者さんに聞いてみます」
「ああ、お願いするよ。ありがとう」
アリスの言葉を聞き、ふと空腹を意識し始めるリオン。
そうだ、まともな食事をとっていないのだった。
アリスに頼み、すぐに食べれるものを持ってきてもらった。
薄めのスープとパンだ。
パンをスープに浸しながら食べる。
「アリス、君と初めて会った時を思い出すよ」
「ふふふ、そうですね。あの時…」
ガーレットとルイサに裏切られ瀕死のリオン。
そこをアリスに助けられた。
彼女がいなければ、今のリオンはいない。
「ははは…」
「ふふふ…」
静かな時間が過ぎていく。
そんな中、ふとリオンはあることを思い出した。
そもそも、火山島であるキシャル島をリオンたちが訪れたのは遺跡の調査のため。
ロゼッタから依頼されてのことだった。
「…調査、ほとんどできなかったな」
本格的な調査を始める前にスレイドたちと戦うことになった。
そしてそのまま火山が噴火。
結局、ロゼッタから依頼された遺跡の調査はほとんどできなかった…
「あ、それなんですけど…」
「え?」
アリスが懐からあるものをとりだした。
金色の小さなアクセサリーのようなものだった。
わずかな魔力を感じる。
「これ、ズィルバーさんから!」
スレイドと戦った傭兵ズィルバー・ライヤー。
彼は遺跡の最深部を訪れていた。
そこでスレイドと戦おうとしていたわけだが…
「これは…?」
「遺跡の最深部で見つけたものらしいです」
スレイドとの戦いが終わった後、リオンは傷ついたズィルバーを背負い島を走っていた。
そこをシルヴィに見つかり、三人で合流してうまく脱走したといったわけだ。
そしてその後にアリスに救出された。
礼としてズィルバーは遺跡にあった財宝をアリスに渡したという。
俺に入らないから、礼だ。そう言い残して。
そして…
「それとこれも」
「これは…!」
アリスが渡したもの、それは遺跡の調査書だった。
スレイドたちが事前に調べてあったものらしい。
もちろん、スレイドたちが独自に調べたものだ。
有用性があるかはわからない。
しかし、ないよりはずっといい。
遺跡の外観のスケッチや壁画のイラストなども簡単にではあるが描かれていた。
「何かの役に立つかもしれないと思って」
これもズィルバーが持ち帰ったものの中にあったものだ。
譲ってもらったらしい。
「ありがとう。君にはいつも助けられてばかりだ」
「いえ、そんなことないですよ。私だっていつも助けられてばかりですから…」
「ははは…」
「ふふふ…」
「…」
「あの…」
そんな二人のやり取りを、先ほど目を覚ましたシルヴィは部屋の隅でこっそりと見ていた。
二人に悟られるよう、眼を閉じまだ寝ている素振りをしながら。
と、その時…
「おーい!リオンくんが起きたって本当!?」
そう言いながらエリシアが入ってきた。
両手にはよくわからない食材をたくさん抱えていた。
「あ、エリシア!大声を…ッ!」
それを聞き、シルヴィも声を漏らす。
二人を邪魔したくなかったのだが、そうもいかなくなってしまった。
しかし、これでいつもの四人がそろった。
久々に。
「さっきお医者さんの先生にきいて、市場でいろいろな食材買ってきたんだ」
「へ、へぇ…」
「見た目はちょっと悪いけど、元気は出るよ」
よくわからない蛇や薬草、干物などが詰め込まれた紙袋。
病み上がりにはきついかもしれないが、エリシアなりに考えてくれたのだろう。
体調が少し回復したらいただくことにしよう。
「…みんな、ありがとう」
リオンは改めて言った。
アリスも、シルヴィも、エリシアも、皆がいたからこその今の自分がいる。
それを改めて実感した。
ずっと看病してくれたみんなには感謝をしてもしきれないほどだ。
「…ちょっと照れるな」
「…へへへ」
シルヴィとエリシアが軽い笑みを浮かべる。
しばしの雑談。
やがて話題は、退院したら何をするか、という話になった。
そして、今後の目標へと。
アリスは言った。
「私はもっといろいろなことが知りたい!勉強したい!シルヴィは?」
「もっと強くなりたい。まだまだ道半ばだからな。エリシアは?」
「え~…お金貯めて家を買いたいなぁ」
「え?」
エリシアの意外な一言に驚く一行。
普段めちゃくちゃな彼女だが、なんとも堅実な夢だなと。
「リオンくんは?」
「俺は…もっと冒険がしたい!」
以前、メルーアと約束した『世界』、それを見たい。
いつかまたどこかで会おう、キョウナとも約束した。
まだまだやるべきことはたくさんある。
そのためには、まだまだ冒険者として腕を磨かなければならない。
「…ずっと一緒にいますよ、リオンさん」
「ああ、ありがとう…」
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