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第八十七話 噴火の中の死闘

 スレイドは腕を天高く掲げた。

 そして魔力を込め、硬質の刃を形成した。

 そう、それはまさに炎が燃え上がるかのように剣が赤々と輝き始めたのだ。

 その魔力量も尋常ではない。

 まるで刀身そのものが燃えているかのような光景だった。


「魔力で形成した刀身…」


 思わず息をのむリオン。

 そんなリオンに対してスレイドは告げる。


「この技を喰らえば命は無いぞ」


 魔力で硬質の刃を形成した即席の刃。

 攻撃性能は非常に高い。

 しかし…


「ははは」


「なぜ笑う?」


 笑みを浮かべるリオン。

 それに対し疑問符を浮かべるスレイド。

 当然の感想だろう。

 彼の問いに対し、リオンが答える。


「その技、あんたの母親イレーネも使ってたよ」


「ッ…!」


「それにその構え、ガーレットと同じだ。やっぱり血を分けた家族なんだなって…」


 その言葉を聞いた途端、スレイドの顔に怒りの感情が宿る。

 あんな愚か者共どもと一緒にされたこと。

 それに対する怒りだ。


「俺があいつらに似ている…と?」


「ああ。そっくりだよ」


「ははは。そうか」


「…」


「その言葉が、俺を苛つかせるッ!」


 その言葉とともに、スレイドが魔力で形成した刃でリオンに襲い掛かる。

 以前のイレーネの攻撃よりもさらに強力な一撃。

 軽々と大岩を切断するほどの斬撃だ。


「うおッ…!」


 その威力に驚きを隠せぬリオン。

 しかし、リオンにとってこの攻撃はそこまで脅威ではない。

 というのも、もともとスレイドの攻撃は強力。

 一撃一撃がとても重い。

 今更威力が上がったところでオーバーキルにしかなりえない…


「避けてばかりでは勝負にはならんぞ?」


「くっ…」


「魔力切れでも狙っているつもりか、そんな愚かなことを俺がすると思うか?」


 以前、リオンが戦ったイレーネはスレイドと同じ技を使っていた。

 その時は魔力切れを誘発し勝利することができた。

 しかし、今のスレイドにそれは難しいだろう。


「やってやる…!」


 剣を構えるリオン。

 難しいことなどない。

 正面からぶつかるだけだ。

 師匠であるロゼッタから譲り受けたこの剣で。


「…ふっ」


 スレイドも魔力で形成した刃を構える。その刃には、スレイドの怒りが乗っているかのようだ。

 すさまじい威力を持った一撃を放てるだろう。

 二人の戦いが再び始まろうとした。

 その時だった。

 突如として大地が揺れた。


「…始まったか」


 スレイドが呟く。

 そう。

 この島は火山島。

 しかも、その火山は活動中。

 いつ噴火しても不思議ではない状況だ。

 しかし、そんな状況でもスレイドは戦う意思を見せる。

 リオンも同じく戦う意思を示す。


「まさか、噴火…!」


「それがどうした、俺は戦うぞ」


 スレイドは火山の噴火など気にも留めない。

 しかし、その噴火が戦いに影響を及ぼすことは明白だ。


「くっ…!」


 そんな状況でもリオンは戦う姿勢を見せる。

 まだ噴火は本格的には始まってはいない。

 それに、アリスたちのことも気になる。

 彼女たちは無事に逃げ切れただろうか。

 そんなことを考えていると、スレイドが攻撃を仕掛ける。

 激しい連撃だ。

 上段から振り下ろす一撃をリオンは受け止めるも、あまりの威力に後退してしまう。

 後退するリオンに対して追撃を行うスレイドだが、リオンも負けていない。

 鋭い反撃を放つ。


 しかし…


「ふっ」


 それでもスレイドは動じない。

 そして、再び魔力の刃を形成させるのだった。

 そんなやり取りがしばらく続いた後、二人の技が再び激突した。

 噴火の予兆により大地が激しく揺れる中、リオンとスレイドの戦いも熾烈を極めていた。

 凄まじい連撃を繰り出すスレイドに対し、リオンはそれを受け流す。

 さらに反撃を放つものの、それすらも受け止められてしまう。

 このままではラチが開かないと考えたリオンは一旦距離を取ることにした。

 しかし、その行動は読まれていたようでスレイドはすぐに距離を詰めてきた。


「甘いな」


「…ッ!」


 再び激しい戦いが始まる。

 だが、今度は先ほどよりもさらに激しくなっていた。

 二人の剣がぶつかり合い、火花を散らす。

 一撃一撃の破壊力も増しており、その衝撃で地面が大きく揺れた。


「ぐっ…!」


 あまりの衝撃にリオンは顔を歪める。

 だが、それでもリオンは屈しない。

 渾身の力を込めて剣を振るった。


 しかし…


「甘いな」


「うおっ!?」


 スレイドはリオンの一撃を受け止め、そのまま反撃に転じた。

 それを間一髪で回避したリオン。

 しかし、その表情には焦りが見え隠れしている。


「(まずいな…このままじゃ押し切られる…)」


 そう思ったリオンは、魔力を一気に解放させ身体能力を向上させる。

 そして渾身の一撃を放った。

 その攻撃はスレイドの魔力の剣によって受け止められた。

 だが、リオンの目的は攻撃ではない。


「(このまま吹き飛ばす…!)」


 遺跡の岩壁にぶつければダメージが通るはず。

 そう考えたリオンだった。

 しかし、スレイドは再び魔力を解放させた。

 そして、その魔力によって強化された身体でリオンを押し返した。


「…ッ!」


 その力強さに驚くリオンだったが、すぐに体勢を整える。

 しかし、その直後にはスレイドが接近していた。

 その距離はほぼゼロに等しい状態であり、リオンにとっては不利だと言えるだろう。

 しかし、それでも彼は諦めない。

 剣を振るうが、スレイドはその悉くを受け止めた。


「このっ!」


 リオンの剣速はさらに上がっていき、ついにスレイドの防御を破りかけた。

 しかし…


「そこだ!」


 そんな声とともにスレイドは魔力の刃で攻撃してきた。

 その一撃は重く、鋭いものだった。


「ぐあっ…!」


 攻撃を受けてしまったリオンは大きく吹き飛ばされた。だが、それでもすぐに立ち上がる。

 そして再び剣を構えたその時だった。


 空気が大きく揺れた。

 それとともに、轟音が鳴り響く


「ついに噴火した…!」


 それは火山の噴火だった。

 突然の噴火に驚くリオンだったが、スレイドは冷静であった。

 しかし、その表情には怒りが宿っていた。

 彼はこの噴火でさらに戦闘を続けることを宣言しているようにも見えた。

 そして、再び戦いが始まるのだった…




 ---------------------



 一方その頃。

 リオンに言われ、その場を離れたアリス。

 彼女はエリシアを連れ安全地帯へと非難していた。

 その安全地帯とは、海の上。

 戦いが収まるまで海上へ避難することにした。

 幸いにも、この海域は波が高くないため安全に避難することができたのだ。

 そんな彼女だが、今は落ち着いている。

 しかし、アリスの心の中には不安が募っていた。


「(リオンさん……大丈夫かしら?)」


 彼女はリオンのことを心配していた。

 スレイドと戦っているであろう彼のことを想うだけで胸が締め付けられるような感覚に陥る。


「シルヴィ…」


 敵の少女を追っていったシルヴィ。

 彼女のことも気になる。

 少なくとも、アリスは彼女と合流できなかった。

 彼女が負けるとは思えぬが、無事かどうかもわからない。

 しかし噴火が始まったあの島に、気絶し負傷したエリシアとともに居続けることもできない…


「無事でいて…」


 アリスにはただ祈ることしかできなかった…

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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