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第八十六話 決闘、スレイド!

 エリシアを攫ったスレイドを追うリオンとアリスの二人。

 あれからしばらく森の遺跡の中を探索していたが、未だに進展はない。

 ずっと似たような通路ばかりが続き、方向感覚も鈍りつつある。

 おまけにこの遺跡にはトラップが仕掛けられているらしく、何度か危険な目にあった。

 だがそれでも二人は進み続けるしかない。

 そして…


「リオンさん、あそこ!」


 アリスが何かを見つけたようだ。

 彼女が指差す方向を見ると、そこには開けた場所があった。

 森の中の遺跡だ。

 朽ち果てた石造りの建造物。

 ところどころに草が生い茂り、遺跡は長い年月の間放置されていたことがうかがえる。

 その祭壇の上にはエリシアが寝かされていた。

 そして…


「ズィルバーさん!?」


 そこにいたのは、ボロボロにやられたズィルバー。

 そしてそのズィルバーと戦うスレイドだった。

 いや、それはもはや戦いと呼べるようなものでは無かった。


「くッ…うぅ…」


 力なくスレイドに殴り掛かるズィルバー。

 しかしスレイドはそれを難なく受け止める。


「無駄なことはやめろ」


「お、お前を殺す…までは…」


「わかっているはずだ。もうそれが不可能だということを」


「く…あッ…!」


「ふん」


 そしてそのままズィルバーの顔面を殴りつけるスレイド。

 強烈な一撃にズィルバーは吹き飛ばされ、地面に倒れる。

 そんな彼にゆっくりと近づくスレイド。


「くッ…くそぉ…」


 なんとか立ち上がろうとするズィルバーだったが、ダメージが大きいのか立ち上がれない。

 そんな彼の前にしゃがみこむスレイド。

 そして彼の首を掴むと、そのまま持ち上げた。

 ギリ…ギリ…と首を絞めるスレイド。

 ズィルバーが苦しそうにもがくが、力で敵うはずもない。


「ぐッ…」


「つまらんな」


 そういってズィルバーを放り投げるスレイド。

 遺跡の壁に叩きつけられて、ズィルバーが倒れる。


「ズィルバーさん!」


 そんな彼に対しリオンとアリスが駆け寄る。

 意識はないが、まだ息はある。


「大丈夫、生きてはいます!」


 アリスの言葉にリオンはほっと胸をなでおろした。

 だが安心してばかりもいられない。

 スレイドがゆっくりとこちらに歩いてくるのだ。


「遅かったな、マティウスのヤツはどうした?死んだか」


「スレイド…!」


 アリスとズィルバーを巻き込むわけにはいかない。

 自然な動きで二人と距離をとる。

 そして剣を構えた。


「フッ…」


 そんなリオンを見てスレイドが笑う。

 余裕の表れだろうか。

 だがここで引くわけにはいかない。


「リオンさん…」


「アリス、キミはエリシアを連れて山を下りてくれ」


 ここから先の戦いはアリスを巻き込むわけにはいかない。

 ただでさえマティウスという恐ろしい敵と戦っているというのに、これ以上彼女に負担をかけることは出来ない。


「ズィルバーさんは俺が必ず連れて帰るから」


「で、でも…!」


「お願いだ」


 有無をいわさぬリオンの口調にアリスも思わず黙る。

 そして彼女は、リオンにある物を手渡した。

 宝石のついたネックレスのようなものだ。


「これは…?」


「お守りです、受け取ってください。あなたに勝利の加護がありますように…」


「勝利の加護…」


「それと…」


「…わかった」


 受け取った後、リオンはゆっくりとスレイドに向かって歩き出す。

 それを確認するとアリスはエリシアを叩き起こした。


「あ、アリスちゃん…」


「行きましょう、この場から離れないと…」


 おぼつかない足取りのエリシアと共に、アリスはその場を離れた。

 本当はズィルバーもこの場から連れて行くべきだった。

 しかし、アリスの力では、負傷して気を失った彼を連れての下山は無理だ。

 止む無く、彼女たちだけを逃がすことにした。


「優しいんだな、待ってくれたのか」


 その一部始終を黙ってみていたスレイド。

 そんな彼に対し、リオンが言った。

 本心か、皮肉交じりか…


「手を出す理由も無い」


「ガ―レットのヤツなら、間違いなく攻撃してきたよ」


 それを聞き軽い笑みを浮かべるスレイド。

 そして…


「来い!スレイド!」


「面白い…!」


 スレイドがニヤリと笑う。

 同時にリオンは剣を振り上げ、斬りかかった!

 その鋭い一撃を受け止めるスレイド。

 再び激しい戦いが始まった。

 ズィルバーを任された以上、負けるわけにはいかない。

 そんな決意とともに戦うリオンだったが…


「ぐッ!?」


 腹部に強烈な衝撃を受ける。

 スレイドの蹴りだ。

 そのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。


「くッ…」


「どうした?」


 余裕の表情を見せるスレイド。

 彼は再びゆっくりとこちらに歩いてくる。

 さらにスレイドが攻撃を続ける。


「くっ…」


 なんとかカウンターを当てるも、決定打にはなりえない。

 もっと相手の懐に潜り込まねば、リオンに勝機は無い。


「どうした?せめて俺に本気を出させてから死ね」


「まだ本気じゃないのか…!」


 まだこれでも本気ではないのか、そう考えると若干気が遠くなってくる。

 しかしそんな感情を押し殺し、戦いを続けるリオン。

 とはいえスレイドも余裕、という訳には行かない。


「(あの剣は厄介だな…)」


 リオンがロゼッタから譲り受けた剣。

 その真価をスレイドは見抜いていた。

 そしてリオンが、その剣の扱いにも当然長けているということを。

 しかし当然スレイドはその対策も取ってある。

 リオンと一定の距離を常に保ち、戦闘をしているのだ。

 一瞬、攻撃をしたらすぐに離れる。

 それを繰り返すことで、勝負の流れを完全につかんでいる。


「(だが…)」


 リオンを確実に仕留める算段は既についている。

 この勝負、スレイドが必ず勝つだろう。

「ふぅ…」


 呼吸を整えて再び切りかかるリオン。

 その攻撃を片腕で受けるスレイドだったが、ここで違和感に気づく。

 突如彼の剣からオーラのようなものが出始めたのだ。

 それはまるで炎のような赤と青の輝きだった。

 そして次の瞬間にはスレイドの体が吹き飛ばされていた!


「なッ!?」


 予想外の展開に驚きを隠せないスレイド。

 だが今のはなんだ? 奴の持っているあの剣の力か…!?


「はぁッ!」


 この隙に追撃するリオン。

 しかし…


「…フッ」


 すぐに体勢を立て直すと、スレイドが高速移動で姿を消した。

 今度は姿が見えなくなった彼に対して警戒を強めるリオン。

 すると…


「ぐッ!」


「そこか…!」


 背後に現れたスレイドの一撃がリオンを襲う。

 なんとか反応して剣で防ぎきる。

 衝撃を殺し、その場で体勢を立て直す。

 互いに距離をとり、再び対峙する二人。


「珍しい技を使うな」


「俺と師匠の絆だよ」


 先ほどのリオンが見せた『炎のような赤と青の輝き』の剣。

 あれは間違いなく魔術だ。

 それもただの魔術では無い。

 魔術を剣にまとわせ、威力を強化するという高等技術だ。

 並みの剣ではリオンの魔力に耐えられない。

 そのため、ロゼッタはこの剣に長い月日をかけて『耐久性強化』の魔力を練り込んでいた。


「なるほどな」


 落ち着いた声で呟くスレイド。すると彼は腕を天高く掲げた。

 そして魔力を込め、硬質の刃を形成した。

 そう、それはまさに炎が燃え上がるかのように剣が赤々と輝き始めたのだ。

 その魔力量も尋常ではない。

 まるで刀身そのものが燃えているかのような光景だった。


「魔力で形成した刀身…」


 思わず息をのむリオン。

 そんなリオンに対してスレイドは告げる。

 この技を喰らえば命は無い、と…

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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