第七十五話 エリシアとの買い物
リオンはエリシアと共に、ゴールドバクトの村にある防具屋へと来ていた。
そこでエリシアが新しい防具を買おうと言ったため、リオンも一緒についてきたのだ。
中に入ると、カウンターには店主らしき女性がいた。
彼女はこちらに気づくと声をかけてくる。
どうやらこの店の主らしい。
店内は広くはないが、置いてある装備品の種類は豊富だった。
リオンはエリシアに似合いそうな防具を探していた。
一方エリシアは…
「防具なんて適当でいいよ、使えれば」
「ダメだ、ちゃんとした物を用意しないと」
「う~ん…」
あまり防具にこだわりが無いらしい。
今までも安めのアーマーやバックラーなどを使い、壊れては買い換えてきたとのこと。
自分で修理もしていたというが、やはりちゃんとした物をそろえたほうがいい。
リオンはそう考えていた。
「(どれがいいかな…?)」
「いらっしゃいませ」
考えながら店内を物色していると、突然声をかけられた。
振り向くと、そこには店員らしき女性が立っていた。
彼女はこちらの顔を確認すると、微笑んで話しかけてくる。
「何かお探しでしょうか?」
「えっと…この子の防具を探しているんですけど…」
リオンがそう答えると、店員はエリシアの方を見て尋ねた。
「どのような防具をお探しですか?」
その質問に対して、エリシアは少し恥ずかしそうに答える。
「あの…じつはあんまり詳しくなくて…」
すると店員はにっこりと笑うと、丁寧に説明を始めた。
そしてカウンターに置いてあった一つのアーマーを指差した。
それを見てエリシアは首を傾げる。どうやらピンと来ていないようだ。
だがリオンはそのアーマーを見てあることに気が付くと、彼女に声をかけた。
「ちょっと着てみてくれないか?」
「え?う、うん…」
戸惑いながらも試着室に入り、そのアーマーを着る。
するとエリシアの表情が驚きに変わった。どうやら気に入ったらしい。
それを見た店員は微笑みながら言った。
「いかがでしょうか?」
「…かっこいい!」
店員の問いに、彼女は目を輝かせながら答えた。
どうやら気に入ったようだ。
その様子を微笑ましく見ていた店員だったが、ふと何かを思い出したかのように手を叩いた。
そして再びエリシアに話しかける。
「他にはこちらのアーマーなどいかがでしょう?」
そう言って別の防具を指差した。
リオンはその商品を見ると驚いた表情を浮かべる。
何故ならその防具は非常に性能の良いものだったからだ。
リオンが驚いていると、それに気づいた店員が言う。
「そちらの商品は最近入荷したばかりの新作です」
「そうなんですか…」
興味深そうに見ていると、店員がさらに説明をしてくれた。
どうやらこのアーマーは他の防具と比べても高い防御力を持ちながら、軽量であることが特徴らしい。
それに加えて動きやすさも抜群らしく、エリシアのような冒険者にピッタリだと教えてくれた。
「(確かにいいかも…)」
そう思いつつエリシアの方を見ると、彼女は目をキラキラと輝かせていた。
どうやら欲しいようだ。その様子を見た店員はにっこりと笑うと値段を告げた。
その言葉にエリシアは一瞬固まる。だがすぐに笑顔になるとこう言った。
「買わせてください!」
「ありがとうございます」
こうしてエリシアの新しい防具が手に入ったのだった。
防具屋からの帰路、エリシアはずっと嬉しそうにしていた。
「えへへ、かっこいいな~」
そんな様子を見て微笑むリオン。
なんだか妹ができたような気分になった。
すると突然エリシアが立ち止まり、何かを思い出したかのようにリオンの方を向いた。
そして上目遣いで見つめてくる。
どうしたんだろうと思っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
その言葉に思わずドキッとする。
「ありがとう、リオン!」
笑顔でそう言う彼女に、思わず見惚れてしまった。頬が熱くなるのを感じる。
そんな自分をごまかすかのように顔を背けると、ぶっきらぼうに答えた。
「…どういたしまして」
それを見たエリシアは楽しそうに笑ったのだった…
「(妹か…)」
心の中でそんなことを思いつつも、不思議と悪い気はしなかった。
不思議な感覚に戸惑いつつも、リオンはエリシアと共に屋敷へと戻るのだった…
そしてその日の夜、リオンの部屋にて。
リオンとエリシアはベッドに腰掛けながら話をしていた。
話題はもちろん今日のことだ。
エリシアは買ったばかりのアーマーを嬉しそうに手入れしている。
どうやらかなり気に入ってくれたらしい。
その様子を見て、リオンは思わず微笑んでしまった。
するとそれを見た彼女が尋ねてくる。
「どうしたの?」
「いや…なんでもないよ」
誤魔化すように答えるリオンだったが、エリシアは不思議そうに首を傾げていた。
だがすぐに笑顔を浮かべると、嬉しそうに話しかけてきた。
その言葉にリオンは耳を疑った。
「今日のお礼にマッサージしてあげる!」
エリシアの申し出に驚きつつも聞き返すと、彼女は笑顔で頷いた。
どうやら本気らしい…
「(どうしよう…でも断る理由も無いしなぁ…)」
少し悩んだ末に、結局承諾することにした。
すると彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべた。
そして両手を広げてリオンに言う。
「おいで!」
その言葉を聞き、思わずドキッとする。
その笑顔を見ると胸が高鳴った。
「…うん」
小さく返事をすると、リオンはゆっくりと彼女に歩み寄った。
彼女のマッサージが始まった。
まずは肩揉みだ。凝っている箇所を的確に探り当て、念入りに揉んでくれる。
あまりの気持ちよさにうっとりしてしまうほどだった。
次に背中を押してくれるようだ。
ゆっくりと体重をかけながら押されるので痛みは全く感じない。
「あぁ…」
だが、身体の疲れが取れていくような感覚があった。
思わず声が出てしまうほどに気持ちが良かったのだ。
次に足裏のツボ押しをしてくれたのだが、これがまた絶品だった。
足の裏から身体中にじんわりとした気持ちよさが広がり、疲れが取れていくのを感じたのだ。
思わず声が出てしまったほどだ。
エリシアはその様子をみてクスクス笑っていたが、リオンにとってはそれどころではなかった。
「(なんだこれ…気持ち良すぎる…)」
今まで感じたことのない快楽に、リオンはただ身を委ねるしかなかった。
そしてエリシアはそんなリオンの様子を見てクスッと笑うと、耳元で囁くように言った。
「気持ちいい…?」
ゾクッとするような声で囁かれ、身体が震える。
思わず声が出そうになったがなんとか堪えることができた。
だが心臓の鼓動はどんどん早くなっていく…
「ふふ…可愛い…」
そんなリオンの反応を楽しむかのように、エリシアはさらに耳元へ口を近づけてきた。
吐息が耳にかかりくすぐったい…
だがそれが心地よくもあった。
まるで頭の中を直接愛撫されているかのような感覚に、頭がボーッとしてくる…
そしてそのまま意識が遠のいていきそうになったその時、突然エリシアが離れた。
「はい、終わりだよ」
そう言って微笑む彼女に対し、リオンは呆然としていた。
もっとして欲しいと思ってしまった自分に戸惑っていたのだ。
だがそんな様子を見て察したのか、エリシアはクスクスと笑うと言った。
「続きはまた今度ね?」
その言葉にドキッとしたが、すぐに我に返る。
その様子を見たエリシアは楽しげに笑っていた。
完全に手玉に取られてしまったようだ…だが不思議と悪い気はしなかった。むしろ心地よいくらいだと感じたのだ。
「(不思議な子だな…)」
そんなことを考えているうちにマッサージが終わり、二人は眠りについたのだった…
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