第七十三話 アリスとの休日
とある日。
リオンとアリスは二人で隣街へ遊びに来ていた。
今日は祝日ということもあってか、街は賑わっていた。
そんな中、アリスが嬉しそうに笑っていると、ふと気になるものが目に入ったようで足を止める。
そんな彼女に釣られるようにリオンも足を止めた。
視線の先には露店があり、そこで様々な品物が売られているのが見えた。
それを見たアリスは目を輝かせる。
「わぁ…すごい…!行ってみましょう!」
「あ、おい…!」
リオンの制止を振り切り、アリスは駆け出した。
そんな彼女を追いかけるように彼も後に続いた。
そして二人で露店を見て回るうちに、ある物を見つけたようだ。
それは指輪だった。
アリスはそれを手に取ると、キラキラとした目で見つめていた。
どうやら気に入ったらしい。
「(綺麗だなぁ…)」
そんなことを考えながら眺めていると、店主が声をかけてきた。
「嬢ちゃん、それが気になるのかい?」
そう言われてハッとするアリスだったが、素直に頷いた。
すると店主は嬉しそうに笑った後、説明をしてくれた。
どうやらこの指輪は魔宝石を使った魔道具であるらしい。
身につけているだけで魔力が増幅するという代物で、なかなかの高級品だそうだ。
値段を見たアリスは少し悩んだ後、店主に尋ねた。
「あの…これください」
「まいど!」
代金を支払い、品物を受け取るアリス。
大事そうに手に持つと、リオンに見せた。
嬉しそうに微笑む彼女を見て、彼は思わずドキッとした。
「どうですか?」
「いいんじゃないか?似合ってるよ」
心の中でそんなことを思いつつ、彼はアリスの頭を優しく撫でた。
「わぁ…っ!ちょっと…!子供扱いしないでくださいよ!」
「はいはい」
顔を真っ赤にして抗議する彼女の手を摑むと、リオンはそのまま歩き出した。
そんな彼女に引っ張られる形で歩きつつも、彼女の表情は満更でもなさそうだった。
「(可愛いところあるじゃないか)」
そう心の中で呟くと、リオンは笑みを浮かべた。
ふと前を見ると、いつの間にかアリスが立ち止まっていることに気づく。
何事かと思い近づくと、彼女はあるものをじっと見つめていた。
そこにあったのは、薬品の素材として使える品物が並ぶ店だった。
彼女は興味津々といった様子で商品を見ていた。
店内に入ると、様々な種類の商品が並んでいるのが見えた。
どれも綺麗なその様子を見て、思わず微笑んでしまうリオン。
「ははは、本当に興味を持ったら一直線なんだな…」
そう思いながらも、彼女に付き合うことにしたのだった。
しばらくして、アリスが一つの品物を手に取った。
どうやら薬の素材を探しているようだ。
そして手に取ったものをじっと見ている。
その様子を見たリオンは声をかけた。
「何か欲しいものはあった?」
「えっと…これなんですけど」
彼女が示したものに視線を向けると、そこには様々な色の粉末があった。
その色によって効能が違うらしく、赤は魔力回復などが期待できるようだ。
青は傷薬などに使われるらしい。
他にも緑には解毒作用があるそうで、黒には一時的に攻撃力を上げる効果があるとのことだった。
いずれも様々な素材を調合して作られたものだという。
「なるほどな…」
リオンが興味深そうに眺めていると、アリスも一緒になって商品を眺めていた。
「うーん…どれにしようかな…」
悩んでいる彼女を見ていると、自然と笑みがこぼれてしまうリオンだった。
そんな様子を店員に見られていたことに気づくと、咳払いをして誤魔化した。
しかしアリスは商品に夢中なのか気づいていないようだった。
彼女は決めかねている様子だった。
そこで助け舟を出すことにしたリオン。
「迷ってる?」
「はい、どれにしようか…」
「それなら、いくつか買ってこう」
そう言うと、彼女はパッと表情を明るくさせた。
そして嬉しそうな表情で頷くのだった。
会計を済ませると、二人は店を後にした。
その後、アリスは大切そうに袋を抱えた。
よほど嬉しかったのだろう。
そんな様子を見て、リオンも満足げだった。
「さて、そろそろ帰るか」
「そうですね!」
二人は帰路につくことにした。
しかしそこでアリスが何かを思い出したかのように立ち止まった。
「ん?どうした?」
不思議に思い問いかけるリオンだったが、彼女は首を横に振った。
「いえ…なんでもないです」
そう言って再び歩き始めるアリス。
その後二人は街を散策し、日が暮れる頃になると宿に戻った。
そして夕食を食べ終えると部屋に戻り、のんびりと過ごしていた。
「ふぅ…美味しかったですね」
ベッドの上でくつろいでいたアリスは満足そうに呟いた。
そんな彼女の様子を見たリオンは少し笑うと、口を開いた。
「そうだね、確かに美味かったよ」
と思いつつも同意するリオン。
それからしばらくの間、沈黙の時間が続くとふと思い出したかのようにアリスが言った。
「そういえば…」
そう言って彼女は懐から何かを取り出した。
それは小さな紙袋に入ったものだった。
それを見て首を傾げるリオンに、彼女は笑いながら言った。
「お土産です」
それを聞いて納得した様子のリオンであった。
シルヴィとエリシア、ロゼッタへの土産だろう。
「覗いてみてもいい?」
そう尋ねると、アリスは笑顔で頷いた。
リオンが中身を取り出すと、そこには小さな瓶が入っていた。
中には焼き菓子が詰まっている。
それを見たリオンは思わず笑みを浮かべた。
「みんな喜ぶよ」
そう言うと、アリスは照れ臭そうに笑い、嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
ふと彼女がこちらを見ていることに気づいた。
その顔は赤く染まっているように見えるが気のせいだろうか。
不思議に思っていると、彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべながら口を開いた。
「えっと…リオンさん」
名前を呼ばれて首を傾げるリオン。
すると彼女はもじもじしながらも言葉を続けた。
「わ、私も…」
彼女の意図を察したリオン
はそっと頭を撫でると、優しく抱きしめた。
突然のことに驚いた様子の彼女だったが、
すぐに身体を預けてきた。
そんな彼女を抱きしめながら、彼は思うのだった。
「(幸せだな…)」
こうして二人っきりの夜を過ごすリオンとアリス。
この幸せがいつまでも続くことを願う二人だった。
そんなことを考えているうちに眠気に襲われ、二人はそのまま眠りについた…
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