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第七十二話 夢の世界の冒険(後編)

 夢の世界に辿り着いたリオンたち。

 すると、そこには複数の人影があったのだ。


「侵入者か?大人しく我々に従え」


 そう言って、集団の中から一人の女性が進み出た。

 その姿を見た瞬間、リオンたちは驚愕した。

 何故ならその女性はアリスと瓜二つだったからだ。

 髪の色も同じで、瞳の色も同じだ。

 違うところといえば、服装と髪型くらいだろうか?

 髪型はポニーテールだが、それ以外はほとんど同じと言っていいだろう。

 しかし、それでも違うところが一つだけあった。

 彼女の手に握られた剣だった。

 その刀身からは禍々しい魔力を感じることができる。


「(あの剣は…!?)」


 リオンはあの剣に見覚えがあった。

 アリスの家に置かれていた呪われた剣。

 そのものだった。

 リオンたちは警戒しつつ、武器を構えた。

 そんな彼らの姿を見て、女性はニヤリと笑みを浮かべると、話しかけてきた。


「なるほど、従う気は無いわけか…」


 そう言うが早いか、女性は剣を構えて突撃してきた。

 凄まじいスピードだ。あっという間に距離を詰められる。

 リオンは咄嵯に身を躱し、反撃に出る。


「はっ!」


 放たれた斬撃は女性に向かって飛んでいくが、その攻撃はあっさりと防がれてしまった。

 どうやらこの女性は相当強いようだ。

 すると、今度は別の方向から矢が飛んできた。それを剣で弾き飛ばすと、

 今度は槍を持った男が突っ込んできた。

 その攻撃を躱しながら反撃を試みるも、悉く防がれてしまう。

 リオンは一旦距離を置いた。


「(強い…!)」


 一方、シルヴィとエリシアも他の兵士と戦闘を繰り広げていた。

 だが、こちらは数の差もあって劣勢だ。

 このままではマズイと判断したリオンは二人に呼びかけた。


「シルヴィ!エリシア!一旦下がれ!」


 それを聞いた二人は即座に後退し、距離を取った。

 それを見たリオンは二人の前に出ると、剣を構える。


「さて…どうする?このまま大人しく捕まるか?」


 女性は鼻で笑うと、再び突撃してきた。

 咄嗟に構え直すリオンに対して、女性が斬りかかる。

 金属同士がぶつかる音が響き渡る。

 そしてリオンの剣は弾き飛ばされてしまった。


「なっ…!」


 驚愕するリオンに、女性が剣を振り下ろす。

 咄嗟に回避しようとしたが、間に合わない。


「ぐっ…!!」


 辛うじて急所は避けたものの、左肩から血を吹き出してしまう。

 あまりの衝撃と痛みで意識を失いそうになるリオンだったが、なんとか堪える。

 しかし、このままではマズイ。

 そう思ったリオンは、魔眼の能力を発動した。

 どうやらこの夢の世界でも問題なく使えるようだ。

 女性の攻撃の軌道を読み、最小限の動きで躱すと、カウンターを放つ。


「なにっ!?」


 予想外だったのか、女性は反応できなかったようだ。

 そのままリオンの剣は女性の身体に突き刺さる…

 かのように思えたが、ギリギリのところで防がれてしまった。

 驚きつつも一旦距離を取るリオンだったが、そこに今度は男性の兵士が襲いかかってきた。


「危ない!リオン!」


 シルヴィが咄嗟に割り込み、槍の一撃を剣で受け止める。

 その隙にエリシアが兵士の槍を蹴り飛ばした。

 それを見た兵士たちは少し動揺しているようだ。


「やはり強いな…お前たち」


 女性は不敵に笑うと、再び剣を構えた。

 リオンは覚悟を決めると、剣を握りしめた。

 そして大きく振りかぶる。

 しかし女性はその攻撃を難なく躱した。

 どうやらこの攻撃は通じないらしい。

 しかしリオンはそのまま剣を振り下ろすのではなく、水平に薙ぎ払った。

 その攻撃をも難なく避ける女性だったが、その動きは少し不自然だったように見えた。


「(なんだ?何かあるのか?)」


 リオンはその隙を見逃さなかった。

 一気に距離を詰めると、再び剣を横に振った。

 すると今度は受け流されることなく、刃が女性の身体を捉えた。


「ぐっ…!」


 女性は苦悶の表情を浮かべると、リオンから距離を取った。

 そして斬られた部分に手を当てると、驚いたような表情を見せた。どうやらリオンの攻撃は効いているらしい。

 その様子を見ていたリオンは剣を構え直した。


「このまま一気に攻め込む…!」


 リオンは決意すると、再び女性に向かって走り出した。

 それを見た女性は剣を構え直すと、迎え撃つ体勢を取った。

 そして…



 激突した。



 激しい鍔迫り合いの末、二人は同時に飛び退いた。

 荒い息を整えつつ相手を睨む二人。

 そんな光景を見ていた兵士たちは一瞬狼狽えたが、すぐに冷静さを取り戻したようだ。

 そして再び攻撃を仕掛けてくる。

 それをシルヴィとエリシアが迎え撃つ形で戦闘が始まった。

 その後、激しい戦いが続く中、リオンは必死に考えていた。


「(どうすれば勝てるんだ…?)」


 相手はかなりの手練れだ。

 このままでは勝ち目はないかもしれない…

 そう考えた時、ふと頭の中に声が響いたような気がした。

 どこかで聞いたことのあるような『声』だった。

『声』はリオンに語りかけてきたのだ。


(戦いにおいて重要なのは心だ)


 それを聞いて、リオンは少し驚いた。

 しかし同時に納得もしていた。

 確かにその通りかもしれないと思ったからだ。


「(そうか…そうだな)」


 リオンは静かに頷くと、剣を構え直した。

 それを見た女性はニヤリと笑みを浮かべると、再び斬りかかってきた。

 それを今度はしっかりと受け止めるリオン。


「(集中しろ…!)」


 そのまま攻撃を受け流し、反撃に転じるリオン。

 先程までとは違う動きを見せるリオンに、女性は困惑しているようだった。

 しかし、再び剣を構えると、今度は連続で攻撃を仕掛けてくる。

 それを躱し、受け流しつつ攻撃を繰り出すリオン。

 戦況は徐々にリオンの方に傾き始めていた。


「(くっ!どうなっているんだ!?)」


 焦りの色を見せる女性に対して、リオンの攻撃はさらに激しさを増していった。

 先程までの攻防がまるで嘘のように、一方的に攻め立てるリオンの姿に兵士たちは完全に動揺していた。

 その様子を見ていたシルヴィとエリシアも驚きを隠せないようだ。


「凄い…」


「リオンが押してる…!」


 二人は固唾を吞んで見守っていたが、やがて戦況に変化が現れた。

 女性が膝をついたのだ。

 それを見た兵士たちは動揺しているようだが、リオンは全く動じることなく攻撃を繰り出していた。

 そしてついに決着がついた。

 女性は力尽きたように倒れると、意識を失った。

 リオンは安堵のため息をつく。


「ふぅ…勝ったか」


 それからしばらくして、女性は目を覚ましたようだ。

 まだ少しフラついているようだが、意識はハッキリしているように見える。

 彼女はリオンの姿を見つけると、ゆっくりと近づいてきた。

 そして口を開く。


「やるな」


 彼女は不敵に微笑んだ。

 その笑みにはどこか威圧感のようなものを感じた。

 しかしすぐに真剣な表情に戻る。

 疑問を抱きつつも油断はできないと警戒するリオンだったが、その女性は予想外の言葉を口にした。


「時間切れか…仕方ないな」


 そう言うと、女性は剣を収める。

 いったいどういうつもりだろうか?

 そんなことを考えていると、女性は口を開いた。


「今回はここまでだ。次に会った時は私が勝たせてもらうぞ?」


 リオンが問いかけると、女性はフッと笑った。

 そして、そのまま闇の中へと消えていく…










 気がつくと、シルヴィたちは元の場所に立っていた。

 どうやら夢の世界から帰ってきたようだ。


「今のは一体…」


 リオンがそう呟くと、シルヴィたちも困惑しているようだった。

 夢とは思えぬほどの現実感があった。

 まるで本当に戦っていたかのようだった。


「今のは一体…」


「すごく…現実的(リアル)だった…」


 そう呟くシルヴィたち。

 すると、ロゼッタはクスクスと笑った。

 彼女はリオンたちの様子を見て、満足そうに頷いた。

 そしてロゼッタが話しかけてきた。


「お疲れ、どうだった?」


「…すごかった」


「うん、いいデータが取れたよ」


 そう言って笑うロゼッタを見て、アリスは呆れたような表情を浮かべた。


「(この人…相変わらずですね)」


 そんなアリスの表情を見たシルヴィたちは思わず叫んでしまった。

 さきほど、夢の世界で出会ったあの女性を思い出してしまったからだ。

 リオンも同じようなことを考えているのか、表情が暗い。

 そんな彼らの反応を見たアリスは首を傾げた。


「ん?どうしたんですか?」


 不思議そうに尋ねる彼女に対して、エリシアが答えた。


「な、何でもないよ!」


「う、うん…」


 エリシアの言葉に同意するように頷くシルヴィ。

 そんな彼女たちの様子を微笑ましく見ていたロゼッタだった。

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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