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第七話 旅の少女エリシア

 翌日、グリーンリレイアの村で薬を売り終えたアリス。

 リオンも、村の人々にキョウナのことを尋ねたが、知っている者はいなかった。

 次なる目的地、リーブルシティへと向かう。

 ここからリーブルシティへは少々時間がかかる。

 数日はかかるだろう。

 道中で食べる食料などを買いだめしておく。

 そして、出発しようとしたその時…


「ま、待ってください!」


 誰かの声が聞こえた。

 振り向くと、そこには一人の少女がいた。

 年齢は十三歳ほどだろうか。

 小柄で、栗色の髪の少女である。

 可愛らしい顔立ちをしており、美少女と言っていいだろう。

 彼女は息を切らしながらこちらに向かって走ってきた。


「どうしたの?」


「あの…少しだけ、話を聞いてくれ…あ、いや…」


「えっと…」


「は、話を聞いていただいてもいい…あ、いや、よろしいでしょう…か?」


 突然の出来事に戸惑うアリス。

 助けを求めるようにリオンの方を見たが、リオンも困った顔をするばかりである。

 たどたどしい敬語で話すその少女。

 少なくとも悪人ではなさそうだ。


「大丈夫だよ。落ち着いて、ゆっくりで構わないから」


 とりあえず、リオンは少女の話を聞くことにした。


「はい。あの、あたしはエリシアと言います。リーブルシティを目指して旅をしているんですけど、その途中で魔物に襲われて…」


 怪我をして動けなくなってしまったところを、この村で助けてもらった。

 怪我の方はもう治ったが、足を痛めてしまい、まだうまく歩けないという。


「それは大変だったね」


「はい。そこでお願いなのですが…」


「私達と一緒に行きたいということ?」


「はい。もちろん、ご迷惑でなければですが…」


 不安げに尋ねるエリシア。

 リオンとアリスは考える。

 正直、自分達は急いでいるわけではない。

 ここで出会ったのも何かの縁だ。

 一緒に行くのも良いかもしれない。


「別にいいですよ。私達も急いでいるわけじゃないので」


「本当ですか!?」


「あぁ」


「ありがとうございます!!」


 嬉しそうに頭を下げるエリシア。


「よろしくお願いします!」


「こちらこそ。あと、自然体でいいよ」


「じゃあそうする!」


 こうして、リオン達は新たに一人仲間を加え、三人となったのであった。

 そしてリーブルシティへ向かう道の途中。

 リオン達は休憩を取っていた。

 この辺りは草原地帯となっている。

 見晴らしが良く、奇襲を受けにくい地形と言える。

 また、周囲には魔物の姿もない。

 絶好の休息日和というヤツであろう。

 そんな場所で、アリスは昼食の準備をしていた。

 リオンが護衛につき、エリシアは木陰に座って休んでいる。


「よし、完成です」


 小さな鍋で作った野菜スープ。

 バスケットから取り出したパン。

 それを見て、エリシアは目を輝かせた。


「美味しそうだね」


「ふふん。パンはグリーンリレイアの村で買ったばかり、スープは自慢の一品です」


 得意気に言うアリス。

 彼女の作る料理はどれも美味しい。

 特にスープ系は最高なのだ。


「では、食べましょうか」


「うん」


「いただきます」


「いただきます」


 三人とも手を合わせると、食事を始めた。

 まずはスープを一口。


「ん~!美味しい!」


「ありがとう」


「アリスちゃんは良いお嫁さんになるよ」


「あはは、ありがとう」


 照れくさそうにするアリス。

 そんな二人を見てエリシアは言った。


「そういえば、二人は恋人同士なの?」


「ちっ違いますよ!」


「そっか。じゃあ、まだ結婚とかしていないんだ」


「けけっ…!」


「こ、ここここ!」


 言葉にならない声を上げるアリス。

 そして、顔が真っ赤になる。

 ニヤニヤとした笑みを浮かべるエリシア。

 そんな二人を見た彼女はさらに言う。


「おやおや?どうしたんだい?」


「な、何でもありません!」


「隠さなくてもいいんだよ?」


「だから違うってばー!」


 必死に否定するアリス。

 そんな二人のやり取りを微笑ましく見るリオン。

 賑やかな時間が流れるのだった。

 食事を済ませ、後片付けをする。

 と、その時…


「ん?」


「どうしたんだエリシア?」


「あそこ、馬車が襲われてる!」


 エリシアは指を差す。

 確かに、一台の馬車が盗賊と思われる集団に襲われているようだ。

 一人の騎士が抵抗しているが、多勢に無勢。

 しかも、あまり手慣れでは無いらしい。


「助けないと…」


 そう言い残し、エリシアは走り出す。

 リオンとアリスも後に続く。


「おい待てエリシア!危ないぞ!」


「大丈夫、私にはこれがあるから」


「そうじゃなくて!」


 エリシアが手に取ったのは、一本の小剣。

 それを握り締めると、彼女はスピードを上げた。

 そして、瞬く間に現場にたどり着く。


「そこまでだよ!」


「何だテメェは!?」


「通りすがりの冒険者だよ」


「冒険者だとぉ?」


「へぇ、ガキにしちゃ上玉じゃねぇか」


 下卑た笑い声を上げる男達。

 しかし今、彼女は怪我をしている。

 治ったとは言っていたものの、戦いに出すわけにはいかない。

 エリシアの剣を借り、リオンが前に出る。


「ここは俺に任せてくれ」


「でも…」


 心配そうな顔をするエリシアだが、「大丈夫だって」と言うリオンの言葉に渋々引き下がる。

 リオンは一歩前に踏み出し、剣を構える。


「テメェ一人でやるつもりかい?」


「まぁね」


「舐めてくれるぜ…」


「かかってこいよ」


 リオンが挑発すると、男は激昂して斬りかかる。

 リオンはそれを難なくかわすと、カウンター気味に男の顔面に一撃を入れた。

 鼻血を出しながら倒れる男。

 借りた剣を使うまでも無かった。


「次は誰が相手だ?」


 リオンはそう言って周囲を見回す。

 既に残りは四人となっていた。

 その誰もが武器を構えており、油断はできない状況である。

 リオンは警戒しながら、周囲を見回していた。


「(一人だけ強そうなヤツがいるな…)」


 先程、エリシアに叫んだ男。

 他の連中より明らかに鍛え方が違う。

 おそらく、この男がリーダーだろう。

 どこかで訓練を積んだ、何らかの実戦経験のある人物と見た。


「おいお前ら、あのクソ生意気な野郎からやれ!」


 リーダー格の男の命令に従い、一斉に襲い掛かってくる。

 三人が同時に攻撃してくる。

 それに対し、リオンは冷静に対応する。

 まずは右側からの攻撃を避け、左側の攻撃を小剣で防ぐ。

 そして、反撃として相手の足を払う。

 体勢を崩した敵に対し、首筋に刃を当て牽制。

 そのまま押し、弾き飛ばす。

 更に、後ろから迫る敵に回し蹴りを食らわせ、吹き飛ばす。

 残ったのはリーダー格の男のみとなった。


「チッ、仕方ねぇ。お前ら、撤退だ!!」


「お、おおお…」


 リーダー格の男の指示に従い、盗賊達はその場を離れる。

 それを見てリオンはホッと息をつく。


「…クソッ!覚えてろよ!」


 捨て台詞を残し、逃げていった。

 護衛の薄い馬車を襲うつもりが、面倒な相手と出会ってしまった。

 そう考えたのだろう。

 リオンは深追いはしなかった。

 この状況ではしても意味が無い。

 それよりも、襲われていた馬車だ。


「怪我はないですか?」


 エリシアは馬車に向かって駆け寄る。


「あぁ、大丈夫だ。ありがとう」


 御者が礼を言う。

 その後、エリシアはリオン達のもとへ戻った。


「二人とも強いね」


「いや、あの程度の奴らなら余裕だよ。それより…」


 リオンは視線を向ける。

 そこには先ほどまで居なかった少女の姿があった。

 どうやら馬車の中に隠れていたらしい。

 高貴な姿をした、貴族の娘のようだ。


「えっと、君は?」


 リオンが尋ねると、少女は答えた。


「私は『リリア・ブルーローズ』と言います」


「ブルーローズ…?」


 その名前を聞いて驚くアリス。


「どうかしたか?」


「う、うん…この子、リーブルシティの貴族さまみたい」


「ええっ!?」


「ふふん、よろしくお願いしますね」


 リリアと名乗った少女は笑みを浮かべるのだった。

 アリスが言った通り、本当に貴族の娘であったらしい。

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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[一言] 作者さんのペンネーム厨二っぽくて結構すき
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