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寝取られ追放から始まる、最強の成り上がりハーレム~追放後、自由気ままに第二の人生を楽しむことにした~  作者: 剣竜
第六章 立ちはだかる強敵たち

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第六十三話 追撃のガ―レット!

 次の日、朝になった。

 アリスたちは、廃村の周囲を警戒しながら夜を過ごした。

 交代で休みをとりながら、周囲を警戒する。

 特に変わったことは何も無かったが、油断はできない。

 ヴォルクの予想通りなら、今頃イレーネの部下たちはこの近くまで来ているはずだからだ。


「そっちはどうだ?」


「こっちは異常なし」


「こちらも大丈夫だよ」


 ヴォルクの問いに対し、アリスとエリシアの二人が答える。


「そうか、なら良かった」


 ヴォルクは安心する。

 昨日の夜は何事もなかったとはいえ、いつ敵が現れるか分からない以上気は抜けない。

 三人で朝食をとることにする。

 食事といっても、携帯食料だ。

 出てきた携帯食料は栄養価が高く、味もそこそこ良いものだ。

 固いパンと干し肉を水でふやかし、食べる。

 あまり美味しいとは言えないが、贅沢を言える状況ではないので仕方がない。

 火を起こすこともできる限り避けたほうがいい。

 だが、それでも美味しいとは感じられなかった。


「はぁ…」


 アリスはため息をつく。

 今のこの状態は良くないと思った。


「ねぇ、ちょっと外を歩いてきてもいいかな?」


「ダメだ」


 ヴォルクは即答した。

 それも当然の反応である。

 仮にも追われている身なのだ。

 もし見つかったら、どんな目にあうか分かったものではない。


「でも、少しだけ」


「…少しだけだぞ」


「やった!」


 アリスが危険な目にあってしまうかもしれない。

 しかし、アリスの強い意志を感じたヴォルクは許可を出すことにした。

 それに外の様子を確認しておきたい。

 何か使える道具があるかもしれない、そう言ったものがあれば拾っておくのもいいだろう。

 ヴォルクはそう考えていた。


「三人で行こう、とりあえずオレが先に出る」


 ヴォルクはそう言って、外に出ることにした。

 幸いなことに追手の姿は無いようだ。

 エリシアとアリスもそれに続く。

 ヴォルクはゆっくりと歩き出す。

 廃村の周辺は荒野が広がっている。

 ところどころに岩があり、草木もほとんど生えていない。

 地面は赤茶けた土で覆われており、乾いた風が吹く。

 続いて廃村の内部を確認する。しかし…


「何も無いな…」


 ヴォルクが呟く。


「本当に何も無いね…」


 アリスが言った。

 村の中にはほとんど何も残っていなかったのだ。

 せめて武器の一つでもあればよかったのだが。

 そんなことを考えているうちに、三人は廃村内を全て見て回ることができた。

 結局収穫は無かったが、それは想定内のことだった。

 とりあえず、一番居心地のよさそうな家に居場所を移そうと荷物を運ぶ。

 と、その時…


「おーい!」


 そう言って馬に乗ってやって来たのはシルヴィだった。

 リオンに言われ、メリーランを追跡していた彼女だったが、途中で見失ってしまったのだ。

 荒野を駆けて探そうにも、イレーネの配下に見つかるわけにもいかない。

 そこでアリスたちに合流することにしたらしい。


「シルヴィ!」


 アリスが叫ぶ。彼女は嬉しそうだ。


「なんとか合流できたね…」


 シルヴィはホッとした表情を浮かべる。

 しかしアリスたちは気になることがあった。

 リオンについてだ、それを彼女に尋ねる。

 シルヴィから帰ってきた言葉、それは…

「一人で決着をつける」

 というものだった。

 つまりリオンはまだ戦っているということだ。

 しかも、たった一人きりで…

 その事実にアリスたちは驚くしかなかった。


「あのバカが…!!」


 ヴォルクが怒りの声を上げる。

 だが、アリスは冷静だった。


「(きっと大丈夫だよ)」


 アリスは自分に言い聞かせる。

 リオンは強い。

 彼のつょそは自分がよく知っている。

 そして、絶対に負けるはずはない。

 しかし一抹の不安も感じていた。


「リオンさん…」


 そんな彼女とは別に、ヴォルクはシルヴィに食料を渡す。

 夜通し馬を走らせて疲労も溜まっているだろう。

 そう考えてのことだ。


「食っとけ」


「は、はい」


「夜になったらまた移動する。それまで身体を休めておけ」


 ヴォルクはそう言った。

 出来る限り気配を殺し、夜を待つ。

 それまで特にすることも無い。

 武器の調整をしたり、道具の手入れをした。

 そして、夜になる。


「行くぞ」


 ヴォルクの言葉に従い、三人は再び廃村を出た。

 辺りは真っ暗だ。

 夜になると、魔物たちの姿もちらほらと見えるようになった。

 出現しているのは低級の魔物ばかりで、アリスたちの敵ではない。

 だが、なるべく戦闘は避けるべきだ。


「大丈夫ですか?」


 エリシアが心配そうに聞く。


「問題無い」


 ヴォルクは狼の獣人なので夜目が利く。

 そのため、暗闇でも周囲がよく見えた。

 四人は慎重に移動を始める。


「よし、俺の上に乗れ」


 巨大な狼に姿を変えたヴォルクが三人に言った。

 今夜中に夜の闇に隠れ、次の村であるクーレス村にたどり着きたい。

 そのために、少しでも移動距離を稼いでおきたかったのだ。

 三人はヴォルクの背中に乗ろうとする。

 と、その時…


「へへ、見つけたぜ…」


 そう言って四人の前に現れたのはガ―レットだった。

 明かり代わりの松明を片手に持っている。

 夜の間も探していたのだろう。

 運悪く見つかってしまったのだ。

 彼はニヤニヤと笑いながら、こちらに近づいてくる。

 その表情からは余裕が感じられた。

 そんな最中、ガ―レットは何かに気づいた表情に変わる。

 そして、アリスのことをじっと見つめ始めた。


「そういやあんまり顔を見たこと無かったな…」


 そう言って彼はアリスの方へと近寄ってくる。

 予想外の行動にアリスは動揺する。

 何をされるのか分からず怯えている様子だ。

 そんなアリスに彼は言った。


「なぁ、お前って可愛いよなぁ」


 その言葉を聞いた瞬間、ぞくりとした感覚に襲われる。

 目の前の男は何を考えてるのか…

 いや、何を考えているかはすぐに分かった。

 彼はアリスを自分のものにしようとしているのだ。


「俺と一緒に来ないか?いまクラックビレッジの町に宿を用意してもらってるんだ」


「いや…」


 性的な意味での欲望と支配欲が垣間見える眼差しだった。

 アリスは嫌悪感を覚えた。

 そんなアリスの様子を見てか、ガ―レットはさらに近づいてきた。

 彼の鼻息が荒いのが伝わってくる。興奮しているようだ。


「(気持ち悪い…)」


 アリスの中に恐怖心が湧き上がる。

 恐怖で身体が震えそうになる。

 そして彼が手を伸ばした瞬間…


「そいつの目を見ちゃダメ!」


 ガ―レットを突き飛ばし、剣を構えるシルヴィ。

 そんな彼女が叫んだ。

 その場に倒れそうになるガ―レットだったが、その表情はすぐに怒りへと変わる。


「ヤツの魅了の魔法を受けるぞ!」


「てめぇ…」


 彼はシルヴィを睨みつけた。

 シルヴィはアリスのことを庇うような仕草を見せる。

 しかし、その視線は明らかにガ―レットを警戒していた。

 彼女もまた、目の前の相手が危険な存在だという事に気づいているのだろう。

 それでも彼女なりにアリスを守ろうとしているのだ。

 そんなシルヴィをガ―レットは睨みつける。

 しばらく無言のままにらみ合う両者、最初に動いたのはガ―レットの方だった。


「ふざけやがって!!」


 彼は拳を握り、シルヴィに向けて襲い掛かる。

 シルヴィはそれを躱すと、反撃に出た。

 だが、ガ―レットもまたそれを避け、再び拳での攻撃を繰り返す。


「うわっ」


 シルヴィが攻撃を受け倒れる。

 ガ―レットも実力はかなり高い。

 シルヴィでは全く歯が立たない様子だ。


「シルヴィくん!」


 エリシアが叫ぶ。

 彼女を助けようと、駆け寄る。

 しかし、それより早くガ―レットが動いた。

 彼はシルヴィの髪の毛を掴み、容赦なく彼女を地面へと叩きつける。


「痛っ!」


 悲鳴を上げるシルヴィ。

 だが、ガ―レットは…


「以前のあの(ロゼッタ)の時は油断して失敗したからな。お前はここで殺す」


 そう言いながら、彼はシルヴィに向かってゆっくりと近づいて行く。


 だが、その時だった。


 ヴォルクがガ―レットの左腕に噛み付いた。

 鋭い牙が肉に食い込む感触が伝わってくる。

 そして、血が噴き出した。


「うおッ!?」


 ガ―レットは舌打ちをすると、ヴォルクの頭を蹴り飛ばすが、全く効かない。

 肉を裂かれ、その牙はガ―レットの骨にまで達しようとしていた。


「うあああああ!!」


 ヴォルクに食いつかれたままのガ―レットが悲鳴を上げる。

 そして、そのまま地面に倒れた。


「はぁ…はぁ…」


 荒い息遣いのヴォルク、その顎からはガ―レットの血が滴り落ちていた。

 腕を噛み千切る勢いだったが、ガ―レットは無理矢理腕を引き抜くことでなんとかそれを防いだ。

 しかし、腕からは大量の血が流れ出ている。


「ちっ…てめぇ…」


 ガ―レットは忌々しそうにヴォルクを睨みつける。

 エリシアはシルヴィに駆け寄ると、回復魔法をかける。

 淡い光が傷を包み込み、シルヴィの傷が癒されていく。

 その間にヴォルクはガ―レットに向かって吼えるのだった。

 追撃を仕掛けるつもりだ。

 と、その時…


「ガ―レット様!」


 そう言って近づいてくるのはイレーネの部下の騎馬隊たちだった。

 ガ―レットが襲われたのを聞いて、急ぎ駆けつけてきたのだろう。

 その数は十人を超える、全員が鎧を纏い武装しており油断はできない相手だ。


「(まずいな…)」


 ヴォルクは心の中で舌打ちをする。

 このままでは数で押されてしまうだろう。

 戦えば勝てるだろうが、アリスとエリシア、手負いのシルヴィを護りながら戦うのは難しい。

 ヴォルクは瞬時に考えを巡らせた結果、撤退を選んだ。


「引くぞ!」


 ヴォルクが叫ぶと、三人は一斉にヴォルクの背中に飛び乗る。

 アリスたちは必死に逃げるが、それを逃がすまいと騎馬隊が追いかけてくる。

 ヴォルクは考える、しかし良い案は思いつかない。

 そんな時、エリシアが叫んだ。


「ねえ、そういえばこの先って!?」


 この先には大きな地面の亀裂がある。

 荒野を裂く、大きな斬撃痕といってもいい。

 それを利用すれば騎馬隊から逃げることも出来るかもしれない。

 そう考え、ヴォルクは迷わずそこへと向かって行った。


「逃がすな!」


 イレーネの配下である騎馬隊の隊長が部下たちに指示を出す。

 だが、彼らは加速し続けるヴォルクのスピードについて行くことが出来ない。

 やがて地面の亀裂に辿り着くと、そのまま亀裂を飛び越えた。


「なにっ!」


 亀裂と言っても、その大きさはかなりのものだ。

 深さは谷ほどもあり、距離は大きな川を横断するときほどもある。

 それをヴォルクは飛び越えたのだ。


「そんな…」


 呆然とする騎馬隊、そしてガ―レット。

 彼らは、ヴォルクたちの姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていたのだった…

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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