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寝取られ追放から始まる、最強の成り上がりハーレム~追放後、自由気ままに第二の人生を楽しむことにした~  作者: 剣竜
第六章 立ちはだかる強敵たち

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第五十八話 狼の魔獣人

 アリスの故郷の村を訪れたリオンたち。

 彼女の親代わりの狼の魔獣人、ヴォルクからの歓迎を受けた。

 机の上には彼が作った家庭料理が並べられていた。

 それらはどれも非常においしく、旅の疲れを癒してくれる。

 シルヴィは、アリスがなぜこんなにも明るくいられるのかを理解した気がした。

 きっと彼女は、この家で幸せに暮らしていたのだろう。


「ありあわせの材料で作ったものだ、口に合うかどうかわからんが…」


 机の上に並べられた料理は、野菜や木の実のスープや、パンや獣肉のソテーといったものばかりだ。

 しかしその味は、とても素朴で優しく、どこかほっとするものだった。

 シルヴィは思わず呟く。


「おいしい…」


「うん!」


 それは、とてもおいしかった。

 隣を見ると、エリシアも同じ感想を抱いたようだった。

 二人とも、夢中で食べている。

 その様子を見たヴォルクは、眠たげな目を細めて笑みを浮かべた。

 彼の料理をご馳走になりながら、彼らはアリスの旅の話をヴォルクに話した。

 アリスは今まで、色々な場所を旅してきた。

 そして、そこで出会った人々や出来事を語る。

 ヴォルクは興味深そうに聞き入った。


「ほう、それは興味深い」


「でしょー?」


 普段のアリスとはまた違う、家族にのみ見せる表情。

 シルヴィたちは、そんな彼女を温かい目で見守るのであった。


「あ、そうだ!これお土産!買ってきたの」


 そう言ってアリスはある物を取り出した。

 それは以前、リスターの魔法都市で彼女が購入したお酒だった。

 彼女自身はあまり酒は飲まないので、リオンたちはなぜそれを購入したのかと不思議に思っていた。

 しかしどうやらこれが理由だったらしい。


「おお、随分といい酒じゃないか」


「うん!おじさん好きでしょ!」


「ああ、ありがとう」


 ヴォルクはとても嬉しそうだ。

 この辺境の村ではあまり上等な酒も流通していない。

 おそらく、ヴォルクにとって久々の贅沢品なのだろう。

 彼は器を手に取り、酒を注ぐ。

 それをじっと見つめて、ゆっくりと口元へと運ぶ。

 一息ついてから、彼は再び口を開いた。

 どうやら、とても気に入ったらしい。


「ところでアリス、お前の師匠という人物はどんな奴だったんだ? 」


「うん、ロゼッタ師匠はね…」


 そう言って話をするアリス。

 リオン、シルヴィ、エリシアも話に加わり、四人はしばらく語り合った…




 夜が更け、そろそろ寝ようということになった。

 エリシアはリビングの机に突っ伏して眠ってしまった。

 シルヴィはアリスの部屋で一緒に眠ることにした。

 リオンとヴォルクは、まだしばらく飲みあうことにした。

 久しぶりに呑み相手ができたことで、ヴォルクも偉く機嫌がいい。


「ほう、お前もなかなかいけるクチだな」


「ははは、まあそこそこは」


「そうかそうか! オレも若い頃はよくやったもんだよ」


「そうなんですか」


「まぁ、今も充分若いつもりだがな」


 そう言いながら、豪快に笑うヴォルク。

 その顔は確かに若々しく見える。

 二人は他愛のない会話をしながら、酒を飲み続けた。

 ヴォルクの顔には、とても優しい笑顔が浮かんでいた。

 彼は本当にアリスのことを愛しているのだろう。


「俺たち、いつか他の国も回ってみようと思うんです」


「他の国…?」


 リオンの一言、それを聞きヴォルクの表情が一瞬変わった。

 少し険しいものへと。


「この周辺諸国以外の国だと『中央大陸』がある。そこに行くのかね?」


「えっと…」


「もし行くなら気をつけた方がいい。あの大陸は戦争中だからな」


「そうなんですか」


「ああ」


 ヴォルクの表情は真剣そのもの。

 それだけ危険な場所なのだろうか。

 器の酒を一気に飲み干しながら、さらに話を続けるヴォルク。

 かなり酔いが回ってきているようだ。


「リオン、お前の実力はどれほどだ?」


「…俺ですか? 俺は…」


「隠さなくていい。お前さんが相当な手練れだってことは見れば分かる」


 ヴォルクの言葉に、リオンは何も答えない。

 ただ黙って、彼の言葉の続きを待つ。

 リオンはヴォルクの目を見据えたまま何も言わず、ただ聞いていた。


「リオン、お前の実力を試させてもらいたい…!」


「それは一体…?」


「ふっ」


 リオンは尋ねる。

 その口調は穏やかだが、そこには強い意志が感じられた。

 ヴォルクは少し迷ったような表情を見せた後、静かに語りだした。


「えッ…!?」


 突然の提案。

 リオンは戸惑う。

 なぜ自分が戦う必要があるのか、その理由を尋ねようとした。

 しかし次の瞬間、ヴォルクは拳を握りしめた。

 そしてそのまま、勢いよく立ち上がった。

 酒が入っているとは思えないほど素早い動き。

 彼は本気のようだ。


「来い、オレが直々に稽古をつけてやる!」


「…分かりました」


 リオンは立ち上がり、拳を構えた。

 二人が外へ出ると、空には星が輝いていた。

 満天の星。

 まるで地上を照らすかのように、煌々と光を放っている。

 月明かりに照らし出された草原。

 リオンとヴォルクは向かい合い、お互いの様子を探るように睨み合っていた。

 リオンの手には、剣の代わりに訓練用の木剣が握られていた。


「いいんですかヴォルクさん、素手で」


「ああ。あらゆる手段を使ってかかってこい」


 風が吹き、草花が揺れる。

 二人の髪も微かに靡いた。

 そして、先に動いたのはヴォルクだった。

 彼は地面を強く蹴り、一瞬で距離を詰めてきた。

 凄まじい速さで繰り出される拳による攻撃。

 リオンはなんとか防ぐ。

 一撃が重い。

 剣で受け止めたリオンの腕が痺れる。


「どうした、反撃しないのか!?」


「くっ!」


 リオンはヴォルクの攻撃を防ぎ続ける。

 しかし徐々に押され始めた。

 このままではまずいと悟る。


「はぁぁぁ!」


「ぬぅ!」


 リオンは全力で押し返した。

 しかし、それでもなお力負けしている。

 狼の魔獣人のヴォルクと人間のリオンの力の差だ。

 彼はすぐに体勢を整え、再びヴォルクへと向かっていく。


「はぁ!」


「むん!」


 木刀を振り下ろすリオン。

 それをヴォルクは両手で掴んだ。


「な…ッ!」


「ふん!!」


「うわ…!」


 そのまま片手で持ち上げられ、投げ飛ばされてしまった。

 地面に叩きつけられるリオン。

 しかしすぐさま起き上がり、再び攻撃を仕掛けていく。

 何度も何度も打ち込むが、全て受け止められてしまう。


「(ダメだ、通常攻撃は全く通用しない…!)」


 リオンは必死に食らいつくが、やはり差は歴然だ。

 ヴォルクは余裕すら感じられる様子で攻撃を捌いている。


「そろそろ終わりか?」


「まだまだ…!」


 リオンは諦めずに挑みかかる。

 ヴォルクの拳を受け止める。

 だが、衝撃に耐えきれずに吹っ飛んでしまった。

 空中で身を翻して着地するリオン。

 だが、ヴォルクは既に目の前に迫っていた。


「く…!?」


 攻撃は直撃した…ように思えた。

 しかし、寸前のところで回避をしていたのだ。

 今の攻撃を避けられるわけが無い。

 ヴォルクはそう考えた。

 しかしリオンは回避している。


「…予知能力か」


「ええ、『予知の魔眼』です」


 リオンの持つ特殊能力、魔眼。

 その能力は『予知の魔眼』、これならば、近い未来の出来事を視ることができる。

 それを利用して、ヴォルクの攻撃を回避したという訳だ。


「なるほどな。それならオレの動きについてこられるはずだ」


「はい」


「面白い、もっと見せてみろ!」


 ヴォルクは構え直す。

 リオンもそれに応え、木剣を構え直した。

 二人は同時に地を蹴った。

 戦いはさらに激しさを増していった…






 しばらくして、その場には荒い息遣いだけが響いていた。

 立っているのはリオンだけだった。

 彼は全身傷だらけになりながらも、しっかりと二本の足で立っていた。

 一方ヴォルクもかなりのダメージを負っており、苦しそうな表情を浮かべている。

 しばらく沈黙が続いた後、ようやく口を開いたのはヴォルクの方からだった。

 彼はリオンに問いかける。

 何故そこまで強くあろうとするのかと。


「俺は…守りたいものがあるんです」


「守りたいもの…?」


「はい」


「俺が弱いせいで『守れなかった人』がいるんです」


「だから俺は強くなりたい」


「大切な人をを守れるくらいに強く…」


 その言葉を聞き、ヴォルクは何も言わなかった。

 ただ黙ってリオンを見つめている。

 そしてゆっくりと近づいていき、彼の肩に手を置いた。

 その手は暖かく、優しさを感じさせるものだった。

 リオンはその手を黙って受け入れた。

 少しの間そうしていたが、やがてヴォルクはリオンから離れ、背を向けたまま話し始めた。


「お前さんの気持ちはよく分かったよ」


 そう言うと、ヴォルクは歩き出した。

 そして振り返ることなく言葉を続けた。

 ヴォルクは、この国にいる限りいつでも稽古をつけてやると、彼に伝えた。


「お前にならアリスを任せても大丈夫だな」


 そう言うヴォルク。

 夜空を見上げるリオン。

 そこには星が輝いていた。

 まるで地上を照らすかのように、煌々と光を放っていた…

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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