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第五十一話 その名は『メルーア』

 

 荒野の中の小さな町。

 リオンたちはそこに滞在していた。


「…ん?」


 アリスを盗賊団から救い出したリオン。

 そんな彼が、ふと空を見上げた。

 何か声がしたような気がした。

 気のせいなのか。

 妙な胸騒ぎを覚えつつも、宿へと戻る。

 シルヴィは一人で瞑想を、アリスとエリシアは道具の手入れをしていた。


「どうした?リオン」


「…いや、なんでもないよ」


 シルヴィの問いにそう答えるリオン。

 以前の盗賊団との小競り合いからまだそう時間もたっていない。

 アリスのためにもしばらくの休息か必要だった。

 ここまでの道のりは決して楽ではなかった。

 戦闘もあり、何度も死線をくぐったものだ。

 しかしなんとかたどり着くことができた。

 だが、まだ終わりではない。

 これから荒野を超える必要があるのだ。

 そのための食料や水を補給する必要がある。

 とはいえ、急ぐ旅でもない。


「もう少し休んでから出発しよう」


「そうですね…」


 ということで、この町でしばらく休憩することになった。

 どうせなら食事でも食べに行くか。

 そう思いながら移動すると、道の外れの木陰に一人の人物が座っていた。

 その人物は全身をマントで隠した怪しい人物だった。

 顔すら見えないほどに大きな帽子をかぶっている。

 奇妙なのは、濃い緑色で全身を包んでいるということ。


「おいお前たち、ここで何をしている?」


 リオンたちに話しかけてきた。

 突然の出来事に戸惑う一同だったが…


「えっと、私たちは旅をしているんです」


「ほう、こんな場所でか?ここは危険な荒野と砂漠の境目。観光目的では近寄らん場所だぞ」


「え?あ、ああ…」


「それに女連れとは…この辺りには盗賊団もいると聞く。危険ではないか?」


 そう言う謎の人物。

 それに対し、アリスが言った。


「いえ、大丈夫ですよ。強い護衛がいるんです」


 そう言ってリオンの方を見る。

 するとリオンが一歩前に出て口を開いた。

 そして自己紹介をする。

 職業は冒険者であり、仲間がいること。

 自分たちが旅慣れていること。

 などを説明した。

 それを聞いた人物は納得したようだ。

 そしてそれを聞き、何故か大笑いを始めた。


「ハッハハ!!これは傑作だ!まさか本当にいたとはな!!」


 一体何のことなのかわからない。

 リオンたちは困惑する。


「なにがおかしい!」


 シルヴィが叫ぶ。だが、それでもその人物は笑っていた。

 ひとしきり笑うとようやく落ち着いたのか話し始めた。


「ははは、いやすまない。それより…」


「?」


「リオン、久しぶりだな」


 そういってその人物は被っていたマントをとった。

 中から現れたのは黒髪の人物。

 年齢は20代前半くらいだろうか。

 端正な顔をしているがどこか不敵な表情を浮かべている。

 そんな姿を見てリオンは驚いている。

 なぜなら目の前にいる人物は…


「め、『メルーア』!?どうしてここに?」


 リオンがそう尋ねると、今度は彼が驚いた様子を見せた。

 だがそれも一瞬のことで、すぐに元の態度に戻る。


「やっと思い出したか。まぁ無理もない。もう何年も会っていないからな」


 そう言って微笑む彼を見て、リオンは動揺していた。

 それはそうだ。

 何故ならメルーアとは幼少期を共に過ごした友人だからだ。

 しかもただの友人ではない。

 リオンにとって唯一無二の親友なのだから。

 そしてリオンとメルーアは互いに見つめ合う。

 だが、そんな空気を壊すようにシルヴィが叫んだ。


「ちょっと待ってよ!二人は知り合いだったの!?」


「あ、ああ。俺がまだ小さいころ、よく一緒に遊んでいたんだ」


「へぇ~」


 そういってシルヴィは二人を見比べる。

 身長はほぼ一緒。

 体格も似ている。

 違うところといえば、リオンよりメルーアのほうが少しだけ大人びた印象を受ける。

 メルーアが年上だからだろう。


「けど、なんでメルーアがここに来たんだ?」


「まあちょっと用事があってな…」


 そこまで言うと、メルーアはシルヴィたちの方を見た。

 正確にはシルヴィを見て、次にアリスを見て、最後にエリシアを見る。

 すると、エリシアに近づいていった。

 エリシアの前まで来ると、じっと見下ろして観察し始める。

 エリシアは突然のことに驚きつつも不思議そうに見上げていた。

 そして、メルーアはエリシアの頭に手を置くと優しく撫で始めた。

 エリシアは目を丸くしてされるがままになっている。


「おーよしよし」


 そう言いながら頭を触り続ける。

 エリシアは恥ずかしそうに頬を染めながらも何も言わなかった。

 それを見ていたリオンが慌てて止めに入る。


「ちょ、やめてあげてくれ!」


「ああ、悪い。ついおもしろくてな」


 そこでようやく手を離した。

 解放されたエリシアはほっとした表情を見せる。

 だが、まだ緊張しているのかリオンの背中に隠れてしまった。


「おいメルーア!」


「おっと、怖い怖い」


 そういって肩をすくめるメルーア。

 どうやら本気で悪気は無かったらしい。

 お詫びに近くの店で食事をおごってくれるらしい。

 なので一行はついて行くことにした。

 町の中にある酒場にて。

 テーブルに座る5人。

 その席にはリオン、アリス、シルヴィ、エリシアとメルーアが座っている。

 他の客もちらほらといる。

 その中で、まずはアリスたちが自己紹介をした。

 それからメルーアが話を始める。


「メルーア=バーダ、見ての通り旅人だ」


 かるく自己紹介をして頭を下げるメルーア。続いてリオンが話す。

 自分のことを。

 旅の目的を。

 今までの旅のことを。


「この前、王都の武術大会で…」


「お、知ってるぞ!実質的な優勝だってな!」


「え?知ってるのか?」


 メルーアの言葉を聞いて驚くリオン。

 あのバッシュ・トライアングルとの戦いは一般には報道されていないはず。

 何故メルーアが知っているのか?

 そう考えていると、メルーアがカバンから一枚の新聞を取り出した。

 民間で流通しているものだ。


「これだよ、記事が載ってるだろ」


「あ、ああ…」


 確かにそこにはリオンとバッシュの絵と共に記事が書かれている。

 実質的な優勝者として大きく取り上げられているのだ。


「いやぁ、お前の試合を見たかったな」


 そう言って笑うメルーア。

 リオンはその言葉に安心感を覚えた。

 自分を覚えていてくれたこと。

 そして、試合を楽しみにしてくれていたことに。


「それと、俺の仲間たち!」


 リオンがアリスの方に視線を移す。

 それに気づいたアリスはぺこりと礼をする。


「アリス・ベルフォードと申します」


 そう言うと、アリスは自身が薬学者であることを説明した。

 シルヴィも続いた。


「ボクはシルヴィです!」


 そう言った後、リオンの方を見る。


「それで、この子が…」


「あたしはエリシア…よろしくね」


 そういって微笑む。

 エリシアは相変わらずリオンの陰に隠れている。

 そんな彼女を微笑ましく思いつつ、再びメルーアの方を向いた。

 すると彼は楽しげな笑みを浮かべている。

 そして、口を開いた。

 次の瞬間、衝撃的な一言を口にする。

 メルーアはこう言った。


「それで、ルイサとキョウナは?」


面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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