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第五十話 『妹』の生き血

 

 とある日。

 執事に命令し、茶の準備をさせる。

 そしてルイサとイレーネの二人でお茶を飲むことになった。

 広い部屋にルイサとイレーネはいた。

 テーブルを挟んで向かい合っている。

 執事が持ってきた紅茶を飲んでいるイレーネ。

 しばらく無言の時間が続く。

 だが、その沈黙に耐え切れなくなったのか、ルイサの方から話しかけてきた。


「あ、あの…」


「ふふっ…、そんなかしこまらなくていいのよ」


「は、はい」


「まぁ、緊張するのは分かるけどね」


「す、すみません…」


「気にしないでいいわ」


 そう言いつつ、彼女はクスッと笑う。

 それから彼女は再び黙り込む。


「(き、気まずい…)」


 ルイサは心の中で思う。

 何を話せばいいのだろうか?

 と困っているようだ。

 一方、イレーネの方はというと、ルイサのことを観察し続けている。

 彼女がどんな人間なのかを見極めようとしているようだ。


「あなた、出身はどこ?」


「え、えっと、その…」


「言えないような場所?」


「そ、そういうわけじゃないんですけど…」


「じゃあ教えてくれる?」


「は、はい。えっと、その、実は…」


 そして、ルイサは自分の出身地について話す。

 彼女は元々、田舎町の出身だった。

 しかし、とある事情があって都会に出ることになる。

 その後は冒険者となり、いろいろな経験を積んできたことを話す。

 彼女は自分が体験したことを話していくうちに、だんだんと饒舌になっていった。


「へぇ~、そうなの。いろんなことがあったのね」


「は、はい」


「でも、今は幸せなのね」


「はい!とても幸せです!」


 ルイサは笑顔で答える。

 その表情からは嘘偽りの無い言葉だとわかる。

 それを聞いて、イレーネは嬉しそうに微笑む。


「そう…よかったわ」


「はい!」


 ルイサは満面の笑みを浮かべる。

 その顔を見て、イレーネも思わず笑みを浮かべた。

 しかし、彼女の目は笑っていない。

 まるで品定めしているかのようにじっくりと見ている。


「それにしても、あなたの笑顔って本当に可愛いわねぇ」


「え!?」


 突然の褒められ、戸惑うルイサ。

 イレーネはそんな彼女を愛おしそうに見つめている。


「私の知り合いにも可愛い子がいたんだけど、その子に負けないぐらい可愛らしいわね」


「え、あ、あの…」


「本当、食べちゃいたいくらい…ふふっ」


「え…?」


 イレーネの言葉にゾクッとするルイサ。

 ルイサはその瞬間悟った。この人は危ないと。

 本能的に危険を感じ取ったルイサはすぐにその場から逃げようとするが、体が動かない。

 恐怖で震えるルイサ。

 それを見ても、イレーネの態度は変わらない。


「あらあら、どうしたの?」


「か、身体が…」


「ふふふ…」


 そう言って、ルイサに近づくイレーネ。

 ルイサの顔に触れるか触れないかの距離まで近づく。


「ひっ!!」


「フフッ…怖がらないで」


 イレーネはそう言うと、ゆっくりと手を伸ばした。

 そして、ルイサの頬を優しく撫でる。

 ルイサは抵抗しようとするが、体は動いてくれない。

 イレーネはクスリと笑うと、そのままルイサに近づいていく。

 そして、ルイサの首筋にキスをした。

 ルイサは体をビクンと震わせる。

 その様子を見て、イレーネはさらに興奮する。

 彼女はルイサの耳元に顔を近づけると、囁くように言った。


「いただきます…」


 その声はとても甘く、そして官能的だった。

 ルイサの意識は徐々に薄れていく。

 彼女は必死に抵抗するが、その甲斐なく気絶してしまった…









 ------------------





 ガ―レットの部屋。

 そこは、かつてガ―レットが使っていた部屋だ。

 彼は今そこで休んでいた。

 ベッドの上で横になっている。

 先ほどの事を思い出していた。

 母親であるイレーネと再会したときのことを。


「母さん、か…」


 懐かしさを感じたと同時に、少しだけ悲しさも感じた。

 十年近く会っていなかったのだ。

 確かに見た目も、性格は全く変わっていない。

 むしろ前より酷くなっている気がする。


「我が母親ながら、えげつない性格してるよなあの人は…」


 そう呟きながら軽く笑うガ―レット。

 恐らく、いや確実にルイサは助からない。

 ガ―レットの母親であるイレーネの手によって。


「ははは。リオンのヤツめ、ざまぁみろ!」



 ----------



 少し時間が経ち、ルイサは目を覚ました。

 彼女が目を覚ましたのは、冷たい台の上だった。

 どうやら彼女は縛られているようだ。

 手足を動かそうとするが、縄のような物によって拘束されているため動かすことができない。

 そして、彼女の目の前にはイレーネが立っていた。

 彼女は妖艶な雰囲気を放っている。

 胸元は大胆に露出しており、体のラインがよく分かる服を着ている。

 彼女はルイサを見下ろしながら話しかけてきた。


「あら、目が覚めた?」


「ここは…私は一体…」


「ふふ、大丈夫よ」


「何を言っているんですか!?これはどういうことなんですか!?」


「まあまあ、落ち着きなさい」


「落ち着けません!早くここから出してください!」


「それはできない相談ね」


「どうして!?」


「だってあなた、これから私と一つになるんだもの」


「はい…?」


 イレーネの言葉の意味が理解できず、呆然としているルイサ。

 そんな彼女を無視して、イレーネは話を続ける。


「それにしても、本当に可愛いわねぇ」


「や、止めて下さい…」


「ふふ、怯えてる姿も素敵よ」


「お願いです。何でもしますから、だから…」


「あなたのことは私がたっぷり可愛がってあげる」


 イレーネはそう言いつつ、ルイサの顎を掴む。

 そして、自分の方を向かせた。

 ルイサの目からは涙が流れており、恐怖の感情に支配されている。

 そんな彼女を見ても、イレーネは笑っているだけだ。

 まるで、獲物を狙う肉食獣のように…


「ふふふ…」


 そう言いながらイレーネは後ろの棚からあるものを取り出した。

 それは大きな刃の付いた剣だ。

 それを見た瞬間、ルイサの顔が青ざめる。


「い、嫌…」


「怖がることは無いわ。すぐに終わるから」


「あ、ああ…」


 イレーネは笑顔を浮かべたまま、ルイサの足に刃を当てる。

 刃の冷たい感触にルイサは震える。

 しかし、イレーネは気にするそぶりもみせない。


「若い女の子の身体っていろいろなことに使えるのよね」


 若い女性を呼び込み、その身体から様々な物を奪う。

 それは生き血であったり、魔力であったり、生命力でも…

 イレーネの異常な若さ、

 美しさの秘訣はそれであった。

 だが、それでも限界はある。

 彼女はもっと若く、美しくなりたかった。

 そのためならどんな犠牲を払ってもいいと思っている。


「私はいい息子をもったわぁ。飽きた女の子を連れてきてくれるんだから」


「それって…嘘!?」


 ルイサは気づいた。自分が騙されていたことに。

 最初からガ―レットは自分を妻にするつもりなど無かった。

 遊んで、飽きたら捨てる。

 ただそれだけ。

 ルイサの顔が絶望に染まる。

 イレーネはそれを見ても顔色を変えない。

 むしろ嬉しそうな表情をしている。


「いや…助けて…」


 ルイサの悲痛な声が部屋に響く。

 イレーネはその声を聞きながらニヤリと笑うのだった。

 彼女が手に持った刃が鈍く光る。


「助けて…助けて!お兄ちゃん!」



面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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[良い点] ルイサざまぁごちそうさまですw
[気になる点] 他人だったキョウナと違い家族でも自分の意思というのを自白してる分読者目線では厳しい もし助けるとしても何らかの罰はないとな
[気になる点] 洗脳されてなかったって事だから、自分の意思で兄貴を刺したんだよね? なんで殺そうとした相手に助けを求めるの?
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