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第四十七話 アリスはどこだ!?

 翌日、リオンたちは出発した。

 目指す場所は、かつて使われていた前線基地。

 その廃墟には現在、盗賊たちが住み着いているのだという。

 だが、油断はできない。

 相手は何人いるのか分からないし、どこに潜んでいるかも分からないからだ。

 いつ襲われるか分からない状況の中、慎重に進んでいった。

 しばらくすると、目的地が見えてきた。

 そこは大きな砦のような建物。

 周囲には高い塀があり、簡単には侵入できそうにない。

 人数は少ないが見張りも立っているようだ。


「ここが敵のアジトか…」


「うん、間違いないみたい」


 エリシアが答える。

 彼女の片手には地図が握られていた。

 まずは偵察だ。

 中の様子を探る必要がある。

 幸いにも見張りの数は少ない。

 チャンスは今しかなかった。


「行こう」


 小声で呟くリオン、それを聞き頷くシルヴィとエリシア。

 物音を立てないように注意しながら、少しずつ近づいていく。

 そして、ついに入口までたどり着いた。

 そのままゆっくりと扉を開け、中に入ろうとする。

 だが、そのとき。

 突然背後から声をかけられた。


「おい、お前たち。こんなところで何をしている?」


 振り返ると、そこには一人の男が立っていた。

 年齢は40代くらいだろうか。

 背が高く、筋骨隆々とした体格の男だ。


「えっと俺たちは旅人でして。道に迷ってしまって」


 咄嵯に嘘をつく。

 男は鋭い眼光でこちらを睨みつけていた。

 おそらく、怪しい人物だと疑われているのだろう。

 なんとか切り抜けなければならない。


「しるか!」


 しかし、次の瞬間、男の拳が目の前に迫ってくるのが見えた。

 それを受け止めるリオン。

 そして次の瞬間…


「うっ…」


 その男に一撃を与え、気絶させるエリシア。

 彼女は隠密行動や暗殺任務と言ったことが得意だと言っていた。

 まさかこれほどとは思わなかった。


「ありがとう、助かったよ」


「いやいや、当然当然」


 エリシアは涼しい顔で言う。

 この調子なら大丈夫そうだ。

 続いて建物の中に足を踏み入れる。

 内部は薄暗く、荒れ果てた状態だった。

 床には瓦礫などが散乱しており、歩きにくい状態だ。

 慎重に進んでいくと、奥の部屋から話し声が聞こえた。

 どうやら誰かいるらしい。


「お頭、例の少女を連れてきましたぜ」


 さらに、もう一人の女らしき声もする。


「ふーん、こいつがあの子なんだぁ。可愛いじゃん!」


「ああ、だから高く売れるはずだ。傷つけるんじゃねぇぞ」


 と、会話が続く。

 話の内容を聞く限り、アリスを連れ去った連中の一味に違いない。


「さあ、来い!こっちへ来るんだ!」


 と、手下の一人が叫ぶ。

 どうするか? このままではアリスが連れ去られてしまうかもしれない。


「俺が行く」


「待って、私が行く」


 と、エリシアが言う。

「ボクも行くよ」と、シルヴィも続く。

 二人は戦うために来たのだ。

 しかし、全員で戦っても仕方がない。

 アリスを人質にされたら意味が無い。

 リオンとシルヴィが戦っている間にエリシアがアリスを助ける。


「これでいこう」


「わかった」


 そして、アリスがいると思われる部屋へと突入していく。

 そこにいたのは六人。

 一人は、少女の腕を掴み、連れ去ろうとしている女盗賊。

 もう一人は、宿屋に現れたあの青年。

 そして取り巻きの男三人。

 これで五人、それから人質の…


「アリス!?」


「えっ…?」


「じゃない!?」


 思わず叫んでしまう。

 なんと、その場にアリスはいなかった。

 いたのは見知らぬ別の少女だった。歳は10代後半といったところか。

 髪の色は金色に輝いており、瞳の色も青く澄んでいる。

 そして何より特徴的なのはその服装だ。

 彼女は白いドレスに身を包んでいた。

 恐らくどこかの貴族の娘なのだろうか…?


「誰だ、貴様らは?」


 と、手下の男が尋ねる。


「その子の仲間だよ」


 シルヴィが答える。

 実際はこの少女のことなど一切知らない。

 アリスを助けに来たと思ったら、別の少女がいたというだけだ。

 しかし、今はこういっておいた方がいいだろう。

 シルヴィはそう考えていた。


「ほう、仲間か。じゃあお前たちも一緒に連れて行くとするかな」


 と、盗賊の女が言う。


「いいや、それはできないな」


 そう言って、リオンは剣を構えた。


「なるほど、お前たちは我々の邪魔をしたいというわけか」


「そういうことだ」


「面白い、ならば相手をしてやる!!」


 こうして戦いが始まった。

 最初に動いたのは敵側だった。

 取り巻きの三人はナイフを構えながら突進してくる。

 まずは敵の攻撃をかわさなければならない。

 だが、相手は三人もいる。


「ボクが相手をするよ」


 そう言ってシルヴィが前に出る。

 この三人は彼女に任せることにした。

 リオンは女盗賊と青年を相手にすることに。


「ふんっ!」


 まずは敵の女が殴りかかってくる。

 それを紙一重の差で避ける。

 しかし突然、背後から気配を感じる。

 振り返るとそこにはもう一人の男が立っていた。


「くッ…!?」


 回り込まれてしまった。

 とにかく今は、この場を切り抜けることだけを考える。


「死ね!!」


 男は叫び、剣を振り下ろす。

 だが、その攻撃はあっさりと避けられてしまった。

 余裕の表情を見せるリオン。

 そのまま相手の腕を掴むと、関節技を決める。


「ぐっ…」


 男は苦痛の表情を浮かべる。

 しかし、まだ諦めてはいないようだ。

 なんとか逃れようと必死にもがく男。

 それを見たリオンが、すかさず男の腹部に拳を入れる。


「がっ…」


 男は悶絶し、気絶した。

 リオンは小さくガッツポーズをする。


「ちっ…」


 手下を倒した二人を見て、舌打ちする女盗賊。

 あまりの一瞬の出来事だったため、人質の少女を使って脅すこともできなかった。

 しかし…


「おい、こっちには人質が…あれ?」


「もう助け出したよ」


 そう言いながら、人質の少女を優しく地面に座らせるエリシア。

 どうやら既に救出していたらしい。


「なんだと…?くそっ!!」


 そう叫ぶと、今度はエリシアに向かって突っ込んできた。

 彼女ごと人質にするつもりなのだろうか?

 だが、エリシアはそれを軽々と受け止めた。


「なに!?」


「人を見た目で判断しちゃだめだよ」


 その声と共に、反撃の拳を打ち込む。

 すると、彼女の一撃を受けた女盗賊はそのまま吹っ飛んでいった。

 壁に激突すると同時に意識を失う。

 こうして、あっけなく決着がついた。


「アリスはどこにいる!?」


 倒れているあの青年に尋ねるリオン。

 外にいる盗賊の部下たちが気付くのも時間の問題だ。

 それまでにアリスの居場所を聞いて逃げたほうがいい。

 青年はかすれた声で言った。


「こ、ここにはいない…」


「じゃあどこに!?」


「東の廃屋敷…そこにベルドアと…」


 そこまで言うと、彼は気絶した。

 どうやら気絶してしまったようだ。

 アリスの行方を聞き出せたのは良かったが、それ以上は何もわからない。

 とりあえず、急いでこの場所を離れることにする。

 外に出て、走り出す三人。

 まだ外の盗賊たちは異変に気付いていないようだ。

 だが、それも時間の問題だろう。

 リオンは焦っていた。

 アリスが攫われたという事実もそうだが、何より自分の力不足を感じ、悔しかったのだ。

 もっと強くならなければ。

 そんなことを思いながら、全速力で駆け抜けていった。


面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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