表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/88

第四十六話 荒野の盗賊団

 荒野を進むリオンたち。

 アリス、シルヴィ、エリシアと共に。

 風が強い。

 そのため、砂埃が舞う。

 視界が悪くなる中、彼らは先を急いだ。

 そんな中、突然シルヴィが立ち止まる。

 そして険しい表情を見せた。


「これ以上、進むのは無理だ」


「風が強くて視界が…」


 アリスも同意した。

 思ったよりも風が強く、思うように進めない。

 加えて、強い向かい風に煽られ、体力を奪われる。

 このままだと厳しい。


「うわわ…」


 風にあおられ、小柄なエリシアが飛ばされそうになる。

 何とか踏みとどまったものの、足取りは非常に不安定になっていた。

 シルヴィの言うとおり、このまま進むのは危険だろう。


「よし、少し戻ろう」


 リオンが言った。

 そんなわけで一度引き返すことに。

 丁度近くに小さな村がある。

 そこで風が収まるまで休憩することに。



 村に辿り着いた後、リオン達は宿屋へと向かった。

 部屋を確保し、荷物を置く。

 その後、皆で食事を取ることになった。

 テーブルには料理が並ぶ。

 スープやパン、その他簡単な料理など。

 質素ではあるが、当然ながら味はとても美味しい。

 値段も安い。


「やっぱりご飯を食べるのが一番幸せかも!」


 と言いながら、嬉しそうに食べるアリス。

 彼女はとても上機嫌だ。

 ちなみに、シルヴィとエリシアはというと…


「美味しいね」


「うんうん、これ凄く好きー」


 などと、笑顔で語り合っていた。

 こうして穏やかな時間が流れる。

 しかし、それも長くは続かない。

 なぜなら、突如として現れた一人の男によって、平和なひと時は壊されてしまうからだ。

 男がやってきたのは数分後のことだった。

 彼は扉を開けて入ってくるなり、こう叫んだ。


「早くしろッ!!金を置いていけ!! 」


 いきなりの要求に戸惑う店主。

 だが、男は止まらない。

 そう叫ぶと、剣を取り出した。

 そして、こちらに近付いてくる。

 まずい。

 リオンは咄嵯に判断する。

 ここで暴れるわけにはいかない。

 騒ぎになれば、宿の主人や客にも迷惑がかかるだろう。

 それは避けたかった。

 とはいえ、さすがに見過ごすことは出来ない。


「やめろよ」


 と言って男の手首を掴む。

 すると、あっさりと手から武器を落とすことに成功した。

 それを見た男たちは一瞬怯む。

 だが、すぐに体勢を立て直すと、今度は襲いかかってきた。


「この野郎!!ふざけやがって!」


 そう叫びながら迫ってくる。人数は五人か。

 だが、相手は素人だ。

 リオンは冷静さを保っていた。

 こういった荒事の経験はそれなりにある。

 そして、戦闘において最も重要なこと。

 それが『躊躇わない』ことだということを知っていた。

 俺は拳を振るい、次々と敵を倒していく。


「ぐはっ!?」


「こいつ!!」


「痛ぇ…」


「何なんだ、こいつは?」


 リオンの攻撃を受けて倒れる男たち。

 彼らは痛みに悶える。

 倒した彼らをどうするか、この村には軍の人間もいないようだ。

 リオンがそう考えていた、その時…


「情けないぞ」


 そう言ってはいってきたのは一人の青年。

 どうやら今の男たちを纏める立場らしい。

 リオンは警戒しつつ身構える。

 すると、その男は落ち着いた様子で話しはじめた。


「落ち着け、俺はお前に用は無い。そっちにいるお嬢さんに用があってきたんだが…」


 そう言いながら視線を向ける。

 その先にいたのはアリスだった。

 彼女はその視線に怯えているのか、身体を震わせていた。

 アリスを怖がらせるなんて許せない。

 そう思うリオンだが、それと同時に妙だとも思った。

 なぜ、アリスを狙う必要があるのだろうか?


「一体、どういうつもりだ?」


 と問いかけるリオン。

 すると、青年はこう答えた。


「どうもこうもない。依頼されただけだ」


「誰に?」


「我らが首領『ライル・ベルドア』さまの指示だ」


 そう言うと、懐に右手を入れる。

 そこから取り出したのは短刀だ。

 それを俺に向けてくる。

 まさか…

 と、思った次の瞬間…


「とあッ!」


 その男は左手から煙玉をさく裂させた。

 右手の短刀に目が行き、左手にまで注意が及ばなかったのだ。

 リオンの完全な失態だ。

 そしてそれと同時に

 周囲が真っ白に染まっていく。

 視界が完全に塞がれてしまったのだ。

 まずい。

 これは非常にまずい状況だ。

 そんな中で声が聞こえた。


「来い!」


「わぁッー!!」


 アリスの叫ぶ声が響く。

 やがて煙玉の煙が張れたとき、アリスと青年の姿はそこから消えていた。

 彼女は攫われてしまったのだ。

 アリスが誘拐されてしまった。


「アリス!?」


 放っておくわけにはいかない。

 一刻も早く助け出さなければならないだろう。

 だが、焦ったところで仕方がなかった。

 冷静さを欠いてしまえば、余計に混乱してしまう可能性がある。


「大丈夫、きっと見つかるよ」


 エリシアが励ましてくれた。

 彼女もまた不安そうな表情を浮かべていたが、気丈に振舞っていた。


「そうだね、まずは落ち着いて考えないと」


 シルヴィは冷静な口調で言う。

 彼女はこういうときに頼りになる存在だ。

 続いて、リオンは先ほどの青年が言っていたことを思い出した。

 ヤツは『ライル・ベルドア』の指示だと言っていた。


「店長さん、『ライル・ベルドア』というヤツを知らないか?」


「アイツは…」


 店長はライル・ベルドアについて詳しく話してくれた。

 この辺りを根城にしている盗賊団の首領だという。

 普段は大人しくしているが、最近になって急に活発に動き始めたらしい。

 しかも、その行動には謎が多く、何を考えているのかよくわからない人物なのだとか。

 だが、これだけ聞けば十分だろう。


「…役に立ちましたか?」


「ええ。ありがとうございます、店長さん」


 つまり、その男こそが今回の事件を引き起こした黒幕に違いない。

 そして、アリスを連れ去ったのも恐らく同じ男だろう。

 リオンはそう確信していた。

 今すぐにでも助けに行きたいところだ。

 しかし…


「ライル・ベルドアの一味は『吹き荒れる風』の読みに長けています。今追うのはやめた方がいい」


 店長がそう言った。

 彼らはこの荒野の風を熟知している。

 強風が吹き荒れる今、追うのは無謀な行為だ。

 ベルドア盗賊団はかつて隣国の精鋭部隊から逃げ切り、半壊に追い込んだとの記録もあるという。

 今の状況で追うのは、燃える林の中を歩くのに等しい。


「明日、太陽が昇るころにはこの風も収まる。それまでは待機していた方がいい」


「…わかりました」


 リオンは素直に従うことにする。

 確かに、今は焦りすぎているかもしれない。

 焦りは禁物、冷静に、確実に対処する。


「とりあえず今日はもう休んでください」


「ああ、ありがとう」


 こうして、リオン達は部屋に戻った。

 そして、アリスを助けるための計画を練ることにした。

 共に旅をする少女シルヴィ、エリシアと共に。


「よし、じゃあ始めようか」


 そう言うと、リオンは地図を広げた。

 店長から借りた、この村の周辺の地図だ。

 これから救出作戦を開始するのだ。


「まずは場所の確認をしよう」


「うん」


 そう答えると、シルヴィは地図を覗き込む。

 そこには赤い印が付けられていた。

 それは盗賊団がアジトにしていると思われる位置を示していた。

 かつての戦争で使われた前線基地の廃墟、そこを根城にしているらしい。


「ここにアリスがいる可能性が高いね」


「絶対に助け出さないと…」


 そう言って、改めて決意を固める。

 だが、同時に疑問もあった。

 なぜアリスをさらったのだろうか?

 彼女はただの旅の少女に過ぎない。

 それなのになぜ…?


「とにかく、行くしかない」


 理由を考えるより先に動くべきだと判断した。

 ここで悩んでいるだけでは何も解決しない。


「もちろん、私も行くよ」


 と、エリシアが言う。

 彼女の言う通り、一緒に来てもらうことにしよう。

 エリシアは身軽な動きが得意だ。いざというときには役に立つはずだ。


「同じく、ボクもついてくよ」


 シルヴィが言う。

 彼女がいれば心強い。

 何しろ、あの剣の腕があれば大抵の敵は蹴散らしてくれるだろうからな。

 それに、今回は戦うことだけが目的ではない。

 あくまでも、目的はアリスを救出することだ。

 そのためには人数がいた方が都合が良い。


「ありがとう。頼りにしてるよ」


「ああ」


「それと、まず、一人で行動しないこと。それから…」


 場合によっては戦闘になることも想定しておく。

 もしもの場合、戦えるのはシルヴィとリオンのみ。

 エリシアは直接的な戦闘は苦手だ。


「わかったよ、気を付けるね!」


 と、エリシアは答えてくれた。

 これで準備万端だ。

 明日の夜明けとともに出発する。

 リオンたちは体力を温存するため、すぐに寝ることにした。

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ