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第四十四話 帰省と再開

 ガ―レットは母親の元へルイサを連れていくことになった。

 道中は順調だった。

 ガ―レットは馬車を使って移動している。

 ルイサは隣に座っている。

 メリーランは対面に。

 彼女はずっと黙っている。

 外の景色を見ながら、メリーランはある事を考えていた。


「(そういえば、ガ―レットさんの実家に行くのって久しぶりだなぁ)」


 そんなことを考えているうちに、懐かしくなってきたようだ。

 自然と笑い声が出てしまうメリーラン。

 昔はたまにガ―レットの実家に遊びに行ったこともあった。

 わざわざ自分の村から。

 あのころは楽しかった。

 でも今は違う。


「…ねぇ、聞いてんのか!?」


「え? は、はい!」


 突然、怒鳴られて驚くメリーラン。

 どうやら、いつの間にか考え事をしていたらしい。

 慌てて前を見ると、そこには不機嫌そうな顔をしたガ―レットがいた。


「ふん!」


「あぅ…ごめんなさい」


 メリーランは再び謝る。

 その姿を見て、ますます機嫌が悪くなるガ―レット。

 すると今度は、向かい側のルイサが話しかけてきた。

 その目は冷たく、まるで蔑んでいるようにメリーランには見えた。

 そして彼女は言う。

 メリーランの予想通りの言葉を。


「あんた、本当に使えないわね」


「え? そ、それはどういう意味ですか?」


 いきなりの暴言に困惑するメリーラン。

 しかし、彼女は気にせずに言葉を続ける。


「そのままの意味よ。鈍くさいし、グズだし


「ちょっと! 言い過ぎですよ!!」


「…あんたがいても迷惑になるだけなのよね」


 あまりにも酷い言われ方に、流石に怒ったメリーラン。

 だが…


「うっさい! 私は本当のことを言っただけよ!!」


 逆に怒られてしまった。

 あまりの展開に呆然としてしまうメリーラン。

 しかし、ガ―レットは違った。


「おい! うるせぇぞ!! 静かにしろ!!!」


 再び大声で怒鳴りつけるガ―レット。

 それを聞いてビクッとなるルイサ。

 メリーランも怯えてしまい何も言えなかった。

 しばらく無言の時間が続く。


「ったく…ちゃんとしろよな」


「はい…ごめんなさい」


 メリーランは再び俯いた。

 その様子を見て満足したガ―レットは再び外の風景を見るのであった。

 一方のルイサ。


「(ガ―レットさんのお母さん…どんな人なんだろう?)」


 不安な気持ちを抱きつつ、ルイサはガ―レットの故郷へと向かって行くのだった。


「ねぇ、まだ着かないの?」


「うるせぇな…もう少しだから我慢しろよ」


 ルイサが退屈そうに言う。

 それに対して、ガ―レットは苛立った様子を見せる。



 それから少し時間が経過した…

 やがて、目的地に到着した。

 湖の近くにある、森に囲まれた静かな町。

 ガ―レットの母親の住む『キラノシチー』だ。

 ガ―レットたちは馬車から降りる。

 そして彼の先導で、町の中を歩いていく。

 歩いている途中、ルイサは周りをキョロキョロと見回していた。


「静かないい場所…」


 田舎の町なので、王都とは全然違う雰囲気だ。

 特に彼女にとっては初めて見る光景である。

 物珍しさもあって、色々と気になって仕方がないのだ。

 一方、メリーランの方はというと、ずっと下を向いていた。

 落ち込んでいるように見える。

 そんな彼女をガ―レットはチラッと見るが、すぐに目を逸らして前を見た。

 そして…


「ここが俺の母親の家だよ」


 そう言ってガ―レットが指さしたのは、ひときわ大きな屋敷だった。

 この町には似合わぬほどに。

 ルイサはその大きさに驚いているようだ。


「ほれ、早く入れよ」


 そう言ってガ―レットが2人を中へ促す。

 その顔はとても嬉しそうだ。

 そして彼は玄関を開けると、中に入っていく。

 メリーランとルイサもそれに続いて入った。

 家の中に入ると若い男たちが出迎えてくれた。

 全員、メイド代わりの執事たちだ。

 彼らは恭しく頭を下げて挨拶をする。


「お帰りなさいませ、ガ―レット様」


「ああ…ただいま」


「ところでそちらの女性は?」


「ああ、こいつはルイサっていうんだ」


「初めまして、ルイサです。よろしくお願いします」


 そう言って、ルイサは笑顔であいさつをした。

 メリーランはそんな彼女を黙って見つめていた。

 ガ―レットの母親は家の中で待っていた。彼女は、とても優しそうな女性だった。

 背は高く、髪の色は銀色に近い灰色をしている。


「よお母さん、また若くなったな!」


「お帰りなさい。久しぶりね」


「手紙送っておいたけど届いてるか?」


「ええ。もちろんね…」


 彼女はガ―レットの顔を見ると、穏やかな表情を浮かべた。

 ガ―レットの話では、年齢は40代後半らしい。

 しかし、その年齢の割には若く見える。

 まるで20代後半ぐらいにしか見えないからだ。


「(ガ―レットさんのお母さん、いつみても若いなあ…)」


 メリーランは昔、ガ―レットの母親と会ったことがある。

 記憶の中の彼女と、今目の前にいる彼女。

 その姿がほとんど変わっていないことに驚きを隠せないでいた。


「母さん、紹介するよ。こっちの子がルイサだ」


「ルイサといいます。これからよろしくお願いします!」


「まぁ! 元気があって可愛い子ね。私はガ―レットの母親のイレーネよ。こちらこそ、よろしくね」


「はい!」


 ルイサは元気よく返事をして笑みを見せた。

 そう言って、優しく微笑むイレーネ。

 その笑顔を見て、思わずドキッとするルイサ。

 そんなルイサを見て、クスリと笑うイレーネ。

 しかし、彼女の目は笑っていない。

 まるで品定めしているかのように、じっくりと見ていた。


「それで、この子は?」


「メリーランだ、昔会っただろ」


「ええ!?あのメリーちゃん?大きくなったわねぇ。気が付かなかったわ」


「ははは…」


 メリーランは苦笑いするしかなかった。

 確かに子供のころと比べたら、かなり変わった。

 いろいろと自分を磨いて来たし、悪い点は改善してきた。

 十年近く会っていないと、確かに気が付かなくても仕方がないのかもしれない。


「まあいいわ。こんなところで立ち話も何だし…ね…」


 3人は屋敷の中へと入っていく。

 2階にある部屋へと案内された。


「母さん、俺疲れたから部屋で休むわ」


「あら、そう?」


「俺が昔つかってた部屋、片付けてあるだろ?」


「ええもちろん」


「ならそこで休んでる」


 そう言うと、ガ―レットは自分の部屋に向かう。

 あらかじめ、屋敷に帰ることを手紙で伝えておいた。

 その時に、使っていた部屋の掃除を頼んでいたのだ。


「メリー、お前も疲れただろ?」


「いえ、私は…」


「疲れただろ…?」


 何故か、強めの口調で言うガ―レット。

 確かに疲れてはいるが、メリーランは別に休むほどでは無いと思っている。

 しかし、ここで反論すると面倒なことになりそうだ。

 そう思ったメリーランは素直に従うことにした。


「はい、では休ませてもらいます」


「俺の部屋は知ってるだろ?別館の」


「ええ」


 そう言って、別館にあるガ―レットの部屋へと向かう二人。

 ルイサも向かおうとするが…


「ルイサさんは私とお話ししましょう」


「え、あ、はい」


 そう言ってイレーネにとめられた。

 ルイサは少し不安そうな顔をしていたが、大人しく従うことにした。


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