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第三話 ガーレットの屋敷にて



 あの事件から一か月が過ぎた。

 リオンとは冒険中に命を落とした、そう伝えられた。

 冒険者がその道中で命を落とすのは仕方のないことだ。

 ガ―レットの、そして何より妹のルイサの証言があったのだから。

 リオンが生きている可能性は極めて低いだろう。

 まさかこの二人が、リオンを殺そうとした者たちとはだれも気付かなかった。

 いや、気付いていたとしても証拠がない以上どうしようもなかったのだが…



 深夜、街を包む満月。

 ガ―レットはこの街にある屋敷に現在は住んでいる。

 王都から少し離れた位置にある栄えた都市。

 その街の外れにある特に大きな屋敷。

 ガ―レットは親が国の重臣をしている。

 この屋敷もその親から与えられたものだった。

 その屋敷の寝室に広がる少女たちの甘く淫靡な声。


「あっ…んん…」


「んっ…ガ―レット様ぁ…」


 キョウナの姿はとても妖艶であり、普段の様子からは想像もできないものだった。

 一か月前までとは打って変わって、彼女が今ではすっかりこの有様である。

 彼女たちの変貌ぶりは一体どういうことなのか…

 二人の少女の声を聞きながらベッドの上で寝ているガ―レット。

 そんな彼を左右から挟んでいる二人の美少女。


「二人とも可愛いよ」


「嬉しいですわ、私たちのことをそこまで想ってくださるなんて」


「うぅ~、ガ―レットさまぁ」


 左右の二人が同時に彼の頬にキスをする。

 ガ―レットとルイサのこの肉体的な関係。

 それは、ずっと前から続いていた。

 リオンがこのことを知っていたのかどうかは分からない。

 だが恐らくは知らなかっただろう。

 元々彼はこのようなことに疎い性格だったから。

 旅の時よりもより女性らしくなったルイサ。

 そして…


「キョウナ、お前も随分と素直になったなぁ」


「あぁ…それはぁ…」


 甘い声をあげる少女。

 それは連れ去られていたキョウナだった。

 一か月前の抵抗していた彼女の姿からは想像できぬその様子。


「いいぞぉ、もっと俺を気持ちよくさせてくれぇ!」


「はぃ…喜んで…」


 キョウナは彼を抱き寄せてキスをした。

 二人の少女との交わり。

 それはもう日常茶飯事のことだった。

 激しく絡み合う音。

 それが部屋の中に響き渡る。


「ほら、もっと俺を求めるんだ」


「ひゃっ!」



 悶えるキョウナ。

 彼女はもう完全に彼の虜となっていた。

 こうして毎日のように女を抱く日々。

 ガ―レットはこの生活が気に入っていた。


「ガ―レットぉ、もう一度ぉ…」


「はははキョウナ、今のお前をアイツが見たら泣くぜ?」


「…ッ」


 リオンとが崖から落とされた一か月前の事件。

 目の前で彼の死を見てしまったキョウナ。

 ガ―レットに拉致された後も数週間はずっと心を閉ざし続けていた。

 精神的ダメージがかなり大きかったのだろう。

 しかしある日を境に急に従順な態度を見せ始めたのだ。

 一体彼女にどんな心境の変化があったのか…?


「ふふふ…」


 その様子を見ながら軽く笑う、魔術師の少女『メリーラン』。

 椅子に座りながら眺めている。

 彼女はガ―レットの古くからの仲間だ。

 最古参と言ってもいい。

 心が折れた者に付け入ることは容易い。

 あとは甘い言葉と虚言、嘘交じりの愛の言葉でも呟けば簡単に堕ちる。

 ガ―レットが女を落とす際に使う得意手だった。

 しかしそれだけでここまで、人が変わるものだろうか…?


「おいルイサ、お前も来いよ。三人でやろうぜ」


「はぁい」


 一通りの行為を終えたキョウナ。

 そんな彼女に代わり、リオンの妹であるルイサが抱かれた。

 同じように甘い声をあげるルイサ。

 兄のリオンと共に冒険者を続けていては、まずあげぬような声だった。

 行為を続けながら、ガ―レットは部屋にいる別の少女に尋ねた。


「なあ、お前はどう思う、あいつのことをよ?」


「別に…」


「あ?」


「あたしはそのリオンという男とは顔を合わせたことが無いんだ」


「そうか、そうだったな」


 ニヤリと口元を歪めるガ―レット。

 そしてベッドではルイサとキョウナ、二人の女性が乱れている。

 その様子を見ている一人の少女がいた。


「そんなヤツに意見なんかあるわけないだろう」


 そう言ったのは旅人の少女『バッシュ・トライアングル』だった。

 他の女とは違い、部屋に置かれていた酒を一人で煽っていた。

 どこか冷たい目をした、黒い髪のその少女。

 そのままつまみの料理と酒を持って、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 壁にかけてあったローブを羽織って。


「チッ…何だアイツ…」


「ガ―レット様ぁ…もっとぉ…」


「ははは。わかったわかった。キョウナ」



 部屋にガ―レットの笑い声とキョウナの甘い声が響き渡る。

 一方、部屋から出て行ったバッシュ・トライアングル。

 歩きながらつまみの料理を食べ、月の光が差し込む廊下を一人歩いていた。

 するとその時、一人の少女と鉢合わせた。

 それは他の者達よりも一回りほど幼い少女だった。


「あーめんどく…アッ!」


「おぉッ!びっくりした…」


「なんだミドリのガキか」


「ガキとはなんだよ。失礼なヤツだなー」


 そう言ってバッシュの持っていた料理から揚げ豆を一つとるその少女。

 旅流れの少女、『ミドリ』だ。

 メリーランと気が合い、そのままこの屋敷に住みついたらしい。


「どうでもいい」


「それより、ガ―レットのヤツはどこだ?」


「寝室だ。行くのか?」


「いや、酒だけもらいに行く」


「あたしはもう寝る。たまには相手してやれよ」


「面倒くさいからいやだ」


「ふん」


「『妙なこと』はするなよ、バッシュ」


「へへ」


 ミドリの言葉を受け流しつつ、バッシュは自室へと戻っていった。

 料理と酒を持って。

 ミドリはそのままガ―レット達のいる寝室へと酒を貰いに入っていった。

 旅人とのことだが、いまいちつかみどころの無い人物だ。

 この王都には、はっきりと身元を証明できる者でなければ住むことは出来ない。

 しかし、ガ―レットはそんなことをお構いなしに身元の不確かな女を連れ込んでいる。

 そんな不思議な少女に妙な感覚を覚えつつ、バッシュは自室へと戻っていった。


「ふん、物好きなヤツだな。ガ―レットも、ミドリも」


 そう呟いて、そのままベッドに横になったバッシュ。

 満月に照らされる街。

 そこには王都のように高い建物はない。

 街の外れにある屋敷から見える満天の星空。

 それを見ながら、ガ―レット達は夜を過ごすのであった。


「さて…続き始めるとするか」


「うん…早く…来て…」


「ふふ…待ってたわ…」


「はは…お前らホント好きだなぁ」


 こうしてガ―レット達の夜は更けていく。

 この日もいつも通り、朝まで乱れは続いたのだった…

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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今後もこの作品をよろしくお願いします。

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