第二十二話 あっ…
酒場でリオンと再会したガ―レット。
結局あの後、別の宿で飲みなおしたらしい。
その後、手配した闘技場近くの宿へと泊まる。
「あまりいい宿じゃないけど我慢してくれ」
いま彼らが宿泊しているのは王都でもかなり豪華な宿。
とはいえ、普段暮らしている屋敷よりは数段劣る。
多少の不満はあるらしい。
バッシュとミドリはすぐに寝てしまった。
特に飲み食いしていた二人だ、当然と言える。
起きているのはメリーラン、キョウナ、ルイサの三人。
そしてガ―レットの四人のみ。ガ―レットはベッドの上で胡坐をかいている。
メリーランたちは椅子に座っていた。
「それで、どうするつもりなんだ?」
ガ―レットが問う。
すると、ルイサは答えた。
「決まってるわ。私たちが勝つのよ」
「そう簡単にいくかねぇ?あいつら、結構強そうだったぜ?」
「あんなの全然大したことないわ」
自信満々に答えるルイサ。
ガ―レットは当然勝つ、そう考えている。
だがルイサとキョウナ、そして一応出るというバッシュはどうか?
それはわからない、未知数だ。
しかし、次の瞬間には表情が変わった。
「…でも、出場しない奴よりましでしょ」
「それは…」
ルイサが嫌味を込めてメリーランに言う。
彼女は魔術師だ、出場しても勝ち残ることは無理だろう。
言い返すこともできず、うつむくメリーラン。
「メリーなんか最初からアテにしてねぇよ。その代わりに、スリューのヤツも参加するみたいだしな」
「えっ!?」
「何驚いてんだよ」
「だって…」
そう言えば以前、ガ―レットとスリューが話しているのを目撃した。
あれはそう言うことだったのか。
そう思うメリーラン。
「…もう寝ます」
「ああ、そうか。好きにしろメリー」
「では…」
そう言ってメリーランは別室へ行った。
この大部屋とは別に個人用の部屋も一応借りているのだ。
バッシュや緑もその別室で寝ている。
それを見たルイサが言う。
「いいの?ガ―レット」
「別にいいだろ。それに、俺は強い女の方が好みだ」
そう言って、ガ―レットはキョウナの顎をクイっと持ち上げる。
突然のことに驚き、赤くなる彼女。
ガ―レットの予想では、キョウナはいいところまで行くのではないか。
そう考えていた。
「ま、せいぜい頑張れや」
「…うん!」
キョウナは笑顔でうなずき、元気よく返事をした。
それからしばらく、ガ―レットたちの雑談が続いた。
まさか殺したと思っていたリオンが生きているとは思わなかった。
だからこそ、彼は思ったのだ。
今度こそ決着をつけてやると。
「それにリオンのヤツ、結構いい女を連れてたじゃないか…」
不敵な笑みを浮かべるガ―レット。
彼は魅了の魔法を使える。
それは当然、女性に対して効果を発揮するものだ。
だからこそ、彼は確信していたのだ。
あの女は、いつか必ず自分の元へ来ると。
そして、自分の手駒にするのだと。
「あ、何か悪いこと考えてるでしょー」
ルイサがガ―レットの頬をつつく。
笑みをこぼしつつ、彼がふと呟いた。
「それにしても、いいベッドじゃないか」
この宿の大きなベッド。
人が数人は寝れるほどだ。
まだ大会まで数日はある。
すこし遊ぶとしよう、ガ―レットはそう考えた。
キョウナの肩に手を伸ばす。
「…何してんの?」
「何って、当然…」
ガ―レットの言葉を聞き、キョウナはにやりと笑った。
ルイサもそれに混ざるために近づく。二人はキョウナを挟むように立った。
そして、ゆっくりと手を伸ばした。
その時、キョウナが動いた。
ガ―レットの手を掴み、そのまま押し倒すようにして転ばせた。
「おっ!?」
「ふふっ」
驚く彼を見下ろしながら笑う彼女。
彼女はそのまま馬乗りになった。
いつになく積極的なキョウナ。その瞳の奥にあるのは、情欲の色。
こんなに積極的になるなんて、何かあったのか?
リオンと会ったことで逆に燃え上がったのか。
そんなことを思いつつ、彼女を受け入れるガ―レット。
抵抗することなく、むしろ積極的に受け入れるつもりだ。
なぜなら、彼にとってもこの展開は望んでいたことなのだから。
「…始めるか」
「うふふ」
「私も忘れないでよね」
「ああもちろんだ。三人で、な…」
そう言いながら、二人に視線を向けるガ―レット。
二人を同時に抱きしめるガ―レット。
こうして夜は更けていく。
熱く、激しく…
―――
数時間後…
一通りの行為を終えた三人。
さすがに疲れたのか、ぐったりとしているキョウナ。
ガ―レットとルイサはもう眠りについてしまったようだ。
起きているのはキョウナだけのようだ。
「はぁ…はぁ…最高だったわ」
荒い息を吐く彼女の頬は上気しており、その顔は艶めかしさに満ちている。
満足げに呟いたあと、静かに目を閉じて身体をのばした。
しばらくして、彼女は水を飲みにこうと考えた。
思ったよりも喉が渇いてしまったのだ。
そんな中、彼女は自身の持ち物が散乱していることに気が付いた。
「そっか、さっき…」
先ほど服を脱ぎ捨てたことを思い出した。
行為の最中に落としたのだろう。
「あれ?」
そこで彼女が見たものは、小さな袋に入った石のようなものだ。
キョウナは記憶を探るように頭をひねる。
一体これが何だったのか。
「これって確か…」
思い出せない、頭に霞がかかったような感覚。
なぜ自分が持っているのか。
そもそも、これは何のための物なのか。
自分で手に入れた者では無いのなら、誰が渡したものなのか…
「うぅ…ッ!」
何故かリオンの顔が思い浮かぶ。途端に胸が締め付けられるような痛みに襲われた。
キョウナはそれを誤魔化すために、急いで水を飲んだ。
「ぷはっ…」
冷たい水が全身を巡る。
それにより、少しだけ気分が落ち着いた。
だが、頭の中にかかった霧が晴れることはなかった。
そして再び目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、彼の姿。
「なんなのよ…」
いらいらしながら、その小さな皮袋を床に叩きつける。
そして無言のまま、彼女はまぶたの裏に移るリオンに手を伸ばした。
それは無意識の行動だった。
しかし、それを止めることはできなかった。
と、その時だった。
「痛ッ…」
床に叩きつけた小さな袋。
それを踏みつけてしまったのだ。
中に入っていたのは尖った小石の数々。
それが足裏を突き刺してしまった。
彼女は顔を歪める。
しかし…
「あっ…」
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