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第十三話 ロゼッタの驚き

 ロゼッタの依頼を受け、ゴーレムの討伐をしたリオンたち。

 討伐の証としてゴーレムの核となる宝石を持って帰った。

 その後、ロゼッタの家に戻ったリオンたちは依頼達成の報告を行った。

 すると、ロゼッタが驚きの声を上げた。


「もう倒してきたのかい!?」


「はい、これでいいでしょうか?」


 アリスはゴーレムの核である石を差し出した。

 それを手に取り、じっくり観察した後、ロゼッタは言った。

 どうやら本物であることを確認し終えたようだ。

 それを見て、リオンはほっとした。

 もし偽物だったら大変なことになるところだったからだ。

 だが、同時に疑問に思ったことがあった。

 それは、なぜロゼッタは自分たちにゴーレムの討伐を依頼したのかということ。

 もしかすると何か理由があったのではないかと考えたのだ。

 そのため、そのことを尋ねてみると…


「村の自警団に頼むわけにはいかないだろう」


「なるほど」


 リオンは納得したように呟いた。

 確かにあのゴーレムの強さを考えると、一般人には危険かもしれない。


「それで、どうして私たちに依頼しようと思われたんですか?」


 今度はアリスが尋ねた。

 すると、ロゼッタは困ったような表情を浮かべた。


「実を言うと、本格的にあなたたちに頼むつもりは無かったんだ」


「え?どういうことですか?」


 不思議そうに尋ねるアリス。

 それに対し、ロゼッタは説明を始めた。


「キミたちはゴーレムを倒すことはできないと思っていたんだ。撤退してきたところを、この私が改めて助っ人として加わり戦いながら指導をしたい。そう思ってね」


「そういうことだったのですか」


 アリスは理解を示した。

 そういえば、以来の時に『無理をしないように』と言っていた。

 だが、リオンは少し違和感を覚えた。

 ロゼッタの言葉にでは無い。

 先ほど、ロゼッタからもらった剣『リヴ・レーニア』、アレを使いゴーレムと戦ったときのことに。


「(あれは…)」


 剣を振るう際、リオンはゴーレムの動きをはっきりと見ることができていた。

 まるで相手の動きを予測できるかのような感覚だったのだ。


「(もしかすると、ゴーレムと戦うのはこれが初めてではない?)」


 そんな考えが脳裏をよぎるリオン。

 しかし、そんなわけが無い。

 以前、ガ―レットたちと冒険者として戦っていた時もゴーレムとは戦ったことなど無かった。

 その時の記憶を思い出しても、ゴーレムについて詳しい知識など無いはずだ。

 ならば、いったい何が原因なのか。


「やっぱりこの剣か…?」


「どうかしたのかい?」


 リオンが呟くと、ロゼッタは心配するように声を掛けてきた。

 リオンは正直にロゼッタに疑問をぶつけた。

 この剣の切れ味が抜群に良い。

 次に頑丈さも申し分ない。

 そして最後に魔力伝導率が良い。

 これを使えば魔法を使うことも容易になる。

 以前ロゼッタはそう言った。

 しかし、どうもそれだけでは無い気がする。


「この剣、以前ロゼッタさんが言ったこと以外の『力』もありますよね」


「え?ああ。あるといえばあるが…」


 なんでも、ロゼッタによればその力は使用者の強い意思で発動するらしい。

 自身の体内に眠っている力を一時的に引き出すというものだ。

 しかしそれはそう簡単に使えるものでは無い。

 つまり、自分の意志で自在に扱うことはできないということだ。


「じゃあ、俺が感じたのはそのせいかな」


 リオンは独り言のように呟いた。

 その瞬間、ロゼッタが目を見開いた。


「今…なんて言ったんだい?」


「だから、俺がゴーレムと戦っているときに妙な感覚があったんですよ」


「まさか…いや…でも…」


 ロゼッタはぶつぶつと何かを言っている。

 一方、アリスとシルヴィは困惑していた。


「あの…私にも分かるように話してくれませんか?」


「ボクも気になります!」


 リオンはロゼッタに視線を向けた。

 彼女から話を聞こうと思ったのだ。

 すると、ロゼッタはゆっくりと口を開いた。


「もしかすると、リオンくんには『魔眼』の素質があるのかもしれない」


「まがん?」


 初めて聞く単語だ。


「分かりやすく言えば、魔法の源である『マナ』を直接見ることができる瞳のことだよ」


「へぇ」


 リオンは感心したように声を上げた。

 どうやらロゼッタの話によると、この世界の人間の多くは『マナ』を直接見ることができないらしい。

 そのため、普通なら見えないはずのものを見える人間は希少なのだとか。

 また、そういった能力を持っている人は、普通の人よりも多くの情報を得ることができる。


「それで、リオンくんはゴーレムとの戦いの中で『マナ』を見たということなんだね」


「はい」


 ゴーレムが自爆する瞬間、リオンはマナが光り輝くのを見た。

 それはとても幻想的な光景だった。

 だが、それと同時にリオンは嫌な予感を感じていた。

 なぜか、それが良くないものだと本能的に理解できたからだ。


「そうか…だとすればやはり…」


 ロゼッタは再び思考の世界へと入っていった。

 リオンはその様子を眺めていたが、しばらくしてロゼッタに声をかけた。


「すみません。少しいいですか?」


「ん?ああ、すまない。少し考え事をしていてね」


「いえ、気にしないでください」


「それより、キミたちは依頼を見事に果たしてくれた。ありがとう。礼を言うよ」


 そう言ってロゼッタは報酬金を三人に渡した。

 リオンたちはそれを受け取り、懐に入れた。

 これで依頼達成である。

 一息ついた後、リオンとシルヴィは二人で修業をすることにした。

 ロゼッタの屋敷の裏にある広場で木刀を使い、模擬戦をすることになった。


「それでは始めようか」


「よろしくお願いします」


 リオンとシルヴィは互いに挨拶をした。

 それから、すぐに特訓が始まった。


「いきます!はぁっ!!」


 掛け声と共に繰り出された一撃。

 リオンはそれをしっかりと受け止めた。

 だが、あまりの衝撃にリオンは吹き飛ばされた。


「ぐっ…!?」


 地面に転がったリオンは素早く立ち上がり、再び構えた。

 一方のシルヴィはリオンの攻撃を受けたにも関わらず平然としている。


「ふむ、まだ耐えるか。なかなかやるじゃないか」


「そりゃどうも」


 リオンは素直に称賛の言葉を受け取った。

 今のは間違いなく本気の一撃だったはずだ。

 まさか軽々と受け止められるとは思わなかった。

 そんな二人を屋敷の窓から眺めるアリス。


「二人とも、帰って来たばかりなのに頑張りますね」


 アリスは微笑みながら言った。

 すると、隣にいたロゼッタも同じように笑っていた。


「フッ、まだまだ身体を動かし足りないんだろうな」


「ですね」


 二人はリオンたちの様子を見守りつつ、錬金術師としての仕事を進めていく。

 アリスは錬金釜の中に材料を入れながら、ロゼッタに話しかけた。

 なぜわざわざ自分たちを雇い、世話まで見てくれるのか、と。

 それに対してロゼッタは答えた。


「別に深い意味は無いさ。ただ単に私がそうしたかっただけだ」


「そうなんですか?」


「ああ。それに、私はキミたちのような若者が成長していく姿を間近で見られるのが嬉しいんだよ」


 ロゼッタは嬉しそうに語った。

 彼女はリオンたちよりも少しだけ年上だが、少し妙な言い回しをした。

 そこまで深い意味は無いのだろうが。

 そして、彼女はリオンとシルヴィに向かって叫ぶように言葉を放った。


「もっと自分の力を試してみるといい!!きっと、世界が広がっていくぞ!!」


「「はい!!!」」


「そうだ、シルヴィくん。相手の攻撃をよく見て、自分の攻撃を当てるタイミングを見極めたほうがいいぞ!」


「アドバイス、ありがとうございます!」


 その叫びに呼応するように、リオンとシルヴィも声を上げた。

 こうして、二人の修行は続いた。

 そして日が暮れるまで戦い続けた…



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