実技試験一日目
運◯免許取得したのが嬉しくて嬉しくて・・・ふとこんな設定の世界観あったら面白いんじゃないかと思って書きました。
小説は素人です、語彙脱字、不可解な文などありましたら何なりと教えてください。
本当に思いつきなので投稿に時間がかかるかもしれません、また設定なども後から変更する場合があるかもしれません。
お待たせしました。
最後までどうぞお楽しみください。
冒険者
それは俺に取って小さい頃から憧れの存在だった。
大きな鎧や武器や見たこともない魔法を使って俺の村を襲った巨大な怪物と戦うあの勇しくかっこいい姿は今でも鮮明に覚えている。彼らは何日か村にいてくれて、その時にいろんな世界の話をしてくれた。彼らが村を去っていく時、一番強かったお兄さんから大きな剣をもらった。「君と一緒に冒険できる日を楽しみにしているよ。」その言葉を最後に彼らは帰っていく。その後ろ姿を見ながら思う。
ああこれだ。
俺がなりたいのはこれなんだ!!
冒険者になっていろんな場所へ旅をしたい!
いろんな仲間を作って、怪物たちと戦いたい!
そして・・・誰かを守れる存在になりたい。
そう思ってから毎日冒険者になるために特訓した。
教えてくれる人はいなかった。
だから独学で苦しい特訓を何度も何度も、心が折れそうになるくらいやった。
15歳になって重くて持てなかったあの剣を簡単に扱えるようになり、ついに独り立ちできるようになった。
そして今日この村を出て冒険に行くのだ!!
出発の時、家族や友達が見送ってくれた。
冒険者になると話したときはそれは猛反対された。友達には笑われた。
でも家族は今では応援してくれている。
「それじゃあ、行ってきます!!」
村を出て歩き出す。
自分の暮らした村とはしばらくお別れだ。もちろんとても寂しい。でも自分が決めてことだ!今更もう後戻りはできない。
気づけば村外れの大きな川に到着。近くに橋も見える。
その橋には大きな鉄門が。
この門をくぐれば、冒険の始まりだ。
心が踊る。何が待っているのだろう。どんな危険があるのだろう。どんな仲間に出会えるのだろう。
門をくぐろうと歩き出すと、門番に止められた。
門番「すいません冒険者の方ですか?」
青年「はい!!今日から冒険者です!!!」
門番「へぇ、今日デビューなんですね。頑張ってください。」
青年「はい!!ありがとうございます!!」
門番「それでは冒険者の免許証を確認しますので提示をお願いします。」
青年「・・・・・へ?めんきょしょう?」
門番「え?」
門番・青年「・・・・・・・・。」
突然だが冒険者になるには免許がいる。
正式には冒険免許証。
ではどこでもらえるのか?
それは〈冒険免許試験場〉である。
現在、橋で立ち往生している少年の村からだと、〈ディステニー王国〉の王都にある〈ディステニー冒険免許試験場〉が一番近いだろう。村の村長さんに頼めば移動魔法陣で王都までひとっ飛び。
だが、
「すいませ〜ん。免許が欲しいんですけど〜。」
「おう、いいよ。」
とはならない。
免許を取得するには、試験場で二つの試験を乗り越えなくてはならない。
一つ目が冒険免許試験場内で行われる筆記試験。
筆記は冒険者の基礎知識問題が○×形式で100問。九割正解で合格。
『これで貴方も冒険者!!』(計2023頁)を丸暗記していれば簡単に取れる。
二つ目が実技試験。
これは筆記試験をクリアした後に挑戦できる。
実技試験は試験場を離れ、ギルドが管理しているダンジョンなどが試験会場となって行われる。
受験者は実際にダンジョンへと入り、自身の今までの集大成を披露することとなる。
試験会場・内容も毎回変化し、ある時は雪の山の奥地、ある時は嵐の海の上、時と場合によって採点方法も違う。
この二つの試験をどちらも合格してようやく新米の冒険者としての一歩を歩みだせるのだ。
冒険者になりたいと、試験場へ来る人は年々増えている。しかし冒険者として歩み出せる人は多くはない。
今日もいくつかの会場で、実技試験が行われようとしていた。
【ローマン地区第三試験会場】
「それではただいまより、冒険者免許の実技試験を行います。試験内容は、向こうの黒い山のダンジョンの最深部にある宝石をここまで持って帰る。それだけです。何か質問は?」
「あ、あの。」
「はい、何か?」
「失格とかあるんですか?」
「ダンジョン攻略が不可能と判断されるほどの重傷を負ってしまったり、不正を働いたりというようなよほどのことがない限り、宝石を持って戻ってくれば失格にはなりませんのでご安心を。」
「そうですか、ありがとうございます。」ホッ
まぁよくある質問だが失格云々を気にしたところで合格できるかはまた別問題だ。がんばれ自信なさげな少年よ、また次回の挑戦を待ってるよ。
「なぁ、ねぇちゃんよ!時間制限とかあるのか?」
「・・とくにはありません。皆さんが挑戦される洞窟ダンジョンは一般のⅭランク冒険者が約一時間で往復できるように設定されています。ですがあくまでも参考程度です。それ以上かかっても宝石を持って帰れば失格にはしないのでご安心を。」
「そうか、ありがとな。」ニカッ
そういって爽やかな笑顔を私に向ける。
試験官に向かって舐めた口使いやがって、3点減点したろ。
「他に質問がなければ試験を開始します。まず一番目の方準備を。」
「はい!」
「それでは、試験開始です。ご武運を祈ります。」
「・・・よし!がんばるぞ!」
最初の受験者である赤髪の青年が出発した。
私は試験官専用の魔法陣の中に入り、いくつもの水晶を取り出し中に浮かせる。水晶からは洞窟に仕掛けてある監視魔法から洞窟内の様子が浮かび上がり、これで受験者の行動を監視する。
ちなみにこの魔法陣の中から外の様子は見れるが、外から中の様子は見れない。外からだと確か黒い球体にしか見えないようになっている。
水晶越しから見える青年はまだ洞窟まで到達していない。
採点開始は洞窟に入ってからなので順番待ちの四人の様子を見てみる。
うんうん、わかるわかる、緊張するよな。
隠しているつもりでも不安や緊張は私からすれば分かりやすい。
順番を待っている四人は・・あー・・・いや・・三人は、この待ち時間を使って思い思いの行動を取っている。
剣を上下に無闇に振っている既に3点減点した青年。
意味があるのか座禅を組んで瞑想している魔術師少女。
木陰で『これで貴方も冒険者!!』(2023頁)をブツブツと声に出して読んでいる少年。
順番を待つこの時間は思ったよりも長い。
とりあえず何かしていないと落ち着かない気持ちはよくわかる。
これは受験者としては模範的行動である。
この待ち時間で少しでも準備をして万全な態勢で挑もうということが見て取れるのでこの時点で一定の評価ができる。それは冒険者を目指す上で非常に欠かせない行動であり、この待ち時間で何もしない受験者が冒険者になれることはまず無いだろう。というかさせない。
そう、さっきから目を輝かせながら小さいウサギ系のモンスター追いかけてる緊張のカケラもないあの少女受験者はこの時点で退場案件である。
おや、いつの間にか赤髪の青年が洞窟に入ったようだ・・。
気を取り直して水晶に目線を移し、採点を始める。
「それじゃぁ、始めますかね。」
まぁ・・がんばれや。
今日も試験官の一日が始まる。
・・・・・・・・・・・・
洞窟に入って約五分、最初のトラップをクリアし次のトラップへ。
水晶越しに一人目の赤髪青年の様子を見る。
はじめてにしてはここまで難なく進んでいるがさてここからどうだろう。
慎重に進んでいる少年へ目掛けて矢が飛んでくる、これに気付いた青年は盾を構え防ぐ。
四方八方から飛んでくる矢に対して、盾を構え、防ぎながら進んでいく。
初心者あるあるだね~盾だけで防御するのは、さてこのままだと・・。
ピコん!
水晶から文字と数字が表示される。
『盾のみで回避を行う 2点減点』
よしよし、減点が始まった。上出来だ新人君。
採点しているのは私だけではない。
私は今回の試験では全体の責任者である〈ヘッド〉という役職を担当している。試験中ヘッドは試験会場の洞窟の中には入れない。そこで試験会場内にはあらかじめ数人の試験官が潜入し、会場の管理や罠の準備、そして受験者の行動を直接監視し、水晶越しでは見られない細かい部分を採点し、減点報告を行う。今回は四人が潜入している。そのうち一人が先ほど減点をしたのだ。
ピコん!
『道中、回復アイテムのみ回収を行う 3点減点』
ピコん!
『モンスターとの戦闘中背後の確保をしていない 2点減点』
ピコん!
『モンスター「パパトラ」の攻撃を受ける 3点減点』
ぴこん!
『炎トラップに引っかかりかける 2点減点』
アイテム回収関連は2点減点統一だって先週決まったばかりだろうがよ。あとて修正と・・。
こうしているうちに続々と減点報告が出ている、今日のチームは比較的優秀でヘッドとしてはすんごい楽だ。
もうこのままこいつ落第させたいz・・・おっと、本心が出てしまった、アブナイアブナイ。
・・・・・・・・・・・
結果的に青年は一時間半かけてダンジョンをクリアした。
四人からの報告と採点を計算し、点数を出して最終的な合否はヘッドの役割。
結果は55点。
実技試験の採点は基本的に減点方式。
スタート段階では全員100点満点。この点数を受験者は維持しなくてはならない。
後ほど五人で会議するからまた前後するだろうけど思ったよりもいい点数。
よかったね!でも不合格だ!
さてダンジョンの準備も整ったみたいだし、二番目いくか。
それからしばらく・・・・
四人目の試験の採点をしながら今日の受験者を改めて見直して思うことは「微妙」この一言のみ。
確かに冒険者としての基盤は整ってはいる、5点以上の大きな減点とかも殆どなかった。が、細かなミスが目立ち結果的に点数は大きく引かれている。もしこれで合格させて実際に冒険したら一か月持たないような立ち振る舞いや致命的な動きも目立つ。現実は甘くない。
唯一見込みがあるのがあの三点減点ボーイ。
思いのほか悪くない攻略の仕方だった。
個人的に不本意ながらこのまま合格させてもいいだろう、個人的に不本意ながら。
他の受験者は少し話し合う必要はあるが合格は無理だろうな。
試験を終えた人はこちらで用意した帰還の魔方陣でディステニー試験場まで帰ってもらい控室で待機してもらう。
さてようやく最後の受験者となった・・・いやなってしまったと言うべきか。
「では次の方どうぞ。」
「はい!!よろしくお願いします!!!!」キラキラ
「あーはい、よろしく。」
こいつの番だ。目がキラキラ輝きすぎ、あぁまぶしい。
「・・・それでは、五人目の方、準備はいいですか?」
「はい!気合十分です!!いつでもどうぞ!」キラキラ
「・・・・・・っ。」
抑えろ私。
いろいろ突っ込みたい気持ちを抑え、冷静に彼女の装備を見てみる。
スタンダートな旅行用の衣装にお子様推奨の剣。
しかもマントをつけているからびっくり、おとぎ話じゃあるまいし、マントは冒険に適さない装備だということを彼女は知っているのか?
その頭のカチューシャは何だ?髪も伸ばしすぎ、どこぞの姫かおぬしは。
それに何?その小さいピンクのポーチ。ピンク色で可愛らしいこと、まさかモンスターに襲ってもらいたいのか?なめすぎじゃね?回復薬入る?それ?
こいつ絶対冒険専門店じゃなくて王都の観光地でお買い物してきたわ。観光名所に冒険用の道具売ってるわけないやん。
あと剣・・。腰に装着することがNGなのこの人絶対知らない。子供用だし。
「・・・・・・っ。」
あー突っ込んだらいけない、突っ込んだらいけない。
この時点で20点くらい減点してもいいのだが、しようがしまいが結果は同じだと思ったのでやめておいた。
「・・はい、ではスタート。」
「フフフ、私の実力見ててくださいね!ビックリさせちゃいますよ?」ドヤ
・・・あぁ?
っと危ない・・声に出すとこだった。
最後まで読んでいただき有難うございます。
また会いましょう!