結
ドン、ドン、ドン
「すみませーん」
ドン、ドン、ドン
「すみませーん、警察です。
どなたかおられませんか」
まだ夜も明け切らぬ、アパートの一角。ドアの前に二人の警官がいた。ドアを叩いている警官の横でもう一人が寝間着姿の中年の男と話をしていた。
「そう、夜中の三時頃かな、ドアを何度も叩く音に目を覚ましたのさ。いや、うちじゃない。お隣だよ。うるさいなぁ、と思っていたらドタンバタン音がして、それからものすごい悲鳴がしたんで慌ててお巡りさんに電話したのさ」
中年の男の説明を聞き終えると年配の警官がドアを叩いていた若い警官に様子を確認した。
若い警官は首を横にふった。
「駄目ですね。全く反応がないです。
どうしますか?」
「話を聞く限り事件性がありそうだから、管理者立ち会いのもと中を調べさせてもらった方がいいだろうな」
警官たちが管会社立ち会いで部屋に入ったのはそれから二時間ほどしてからだった。
「どなたかおられませんか?」
警官たちは慎重に部屋に入っていく。
しかし、部屋には誰もいなかった。
「なんでしょう。特に変わった様子ありませんね」
部屋はきれいなものだった。
「若い女の一人暮らしだって行ってたな」
「俺、ふろ場とかトイレ見ていいんですか?」
「しよーがないだろ。声かけていけよ。ぶっ倒れたら分かりゃしないさ」
「ういっす」
若い方の警官がふろ場を見にいこうとしたがすぐにリビングから年配の警官の悲鳴のような声に呼び戻された。
「何ですか?何か見つけました……、どうしたんです。顔が真っ青ですよ」
リビングに戻った若い警官は、年配の警官のただならぬ様子に気がついた。年配の警官は無言でただ指差すだけだった。指の先はテーブル、さらにそこに乗っている箱に向けられていた。
「その箱がなんなんですか?何か入ってるんですか」
警官は近づき箱の中を覗きこんで、言葉を失った。
「えっ、これは……こんなことどうやったらできるの……です?」
箱には女の顔がすっぽりと納まっていた。そして、女の顔の回りには折り畳まれた手足が箱一杯に隙間なくぎっちりと……
2019/10/22 初稿
煮こごり