表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

悪魔と翁と妖精族

適当の呪歌の巻 次回で最終回です。

村を襲うはずだった凶悪なオークは今、悪魔に襲われていた。

「跪け!跪け!」

 悪魔が走る。

「跪け!跪け!」

 悪魔が歌う。

 地獄の底まで響く声で。

 悪魔が鈍器を振るうたび、オークの命は消えていった。

「俺はお前の恐怖の形!お前の犯してきた罪!」

「お前のかすかな良心が!お前を縛るだろう!」

 オークたちは動けない。

 悪魔の手にした鈍器から引き裂くような音が来る。

 同じ組み合わせの旋律が少しずつ早くなる。狂ったように首を振りながら悪魔はオークに近づいた。

「おお、汝。罪深き闇の子よ、汝の名を述べよ」

 恐怖に屈したオーク1は自分の名を答えてしまった。

 だが悪魔は止まらない。

 頭を上下に振りながら隣のオークに近づいた。

「おお、汝。罪深き闇の子よ、汝の名も述べよ」

 恐怖に屈したオーク2も自分の名を答えてしまった。

 それでも悪魔は止まらない。

 なんということだろう、オークの名前を聞くごとに鈍器の音が加速する。

 首の動きも加速する。生き残ったオークたちはすべて名前を知られてしまった。

 かろうじて聞き取れていた音はすでに名状しがたい何かに変容していた。

 そして恐怖が最高潮に達した瞬間、悪魔は手から鈍器を手放した。

 一瞬の静寂の後、悪魔は一字一句間違うことなく、生きているオークの名前を呼び始めた。

 最後のオークの名を言うと、鈍器を再び手に構えて悪魔は厳かにこう述べた。

「汝らの罪は許されるだろう。汝らの罪に裁かれて!」

 そして再び歌いだす。

「俺はお前の恐怖の形!お前の犯してきた罪!」

「お前の影でできた顎が!お前を裁くだろう!」

その後、強烈なシャウトとともにオークたちは許された。だが救いはなかった。

救われたのは村だけだった。残ったものは歌う悪魔と多くの死体。


 場違いな電子音が鳴り響く

「システム通知、登録されたフレンドがログインされました」

 悪魔の種族はヒューマン、職業はバード。

 バードはさびれたパワハラでもあまり人気のない職業だった。


 悪魔はギルドハウスにやってきた。解放されたギルドハウスの周辺は空き家が多かった。

そこにはギルドのメンバーの翁の仙人と、妖精の姉と弟、妙齢の女エルフが集まっていた。

 悪魔はこのギルド以外にバードとダンサーの職業を選んだプレイヤーを見たことがない。そしてバードの呪歌の研究もこのギルドぐらいしか情報がなかった。

 呪歌の発動条件は、

①歌を歌うこと

②歌を対象に聞かせて心に影響を与えること。

③ほしい効果を歌詞にに載せること。

 の3点に絞りこめそうだった。

 

 ①については自由度が高かった。翁は俳句や短歌を嗜んでおり、それでも呪歌は発動していた。

 ②については謎だった。これは現在調査中。ちなみに翁は戦闘中や冒険中の空気や場を読むことが非常にうまく選ぶ俳句や短歌に思わず納得してしまうことが多かった。大抵の場合戦略規模の破壊を起こすのであった。

 ③についてはほぼ効果が確定だった。おかげで雰囲気のある歌詞や単語の意味が広すぎる歌詞は効果が薄かったのだ。そのせいで妖精の弟は昔のアニソンばかり歌うようになっていった。ちなみに姉はダンサーで、歌の効果を広げたり強化したりできるのだが、バードがいないとスキルが使えないことが多く、このギルドに所属していた。弟は支援役、姉は遊撃手や哨戒役として動くことが多かった。

 エルフの呪歌は主に聖属性と回復系だった。ただし網羅している音楽がマイナーなジャンルで、しつこくからかわれたことがあるらしい。トラウマになったのかあまり歌うことはなかった。普通に回復呪文も使えるのでほかのギルドと連携する時は歌うことは皆無であった。

 このギルドでは音楽性の違いは問題にならなかった。世代の格差があったためお互いのジャンルが新鮮に感じられたのだ。こうして緩やかな空気のもとギルドは今日も活動を続けていた。


 ギルドハウスでは呪歌の研究以外では、まったりしながら計画を立てることが多かった。

 翁が持ってきたおやつなどををつまみつつ、近々行われるパワハラ初のレイド戦についてああでもないという姉弟がエルフに話す横からに悪魔が突っ込みを入れる。翁はひたすらお茶を啜っていた。

 最近の運営やパワハラの行く末を心配しつつ、集合時間や場所を決めイベントに向けて備えるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ