プロローグ
男は円盤状にしたエネルギーを投げる。
ただ、投げ続ける。
それが生きる道だと信じて。
ぶつけ、ぶつけ、ぶつけ続ける。
舞い上がった砂煙によって敵の姿が見えなくなっても。
いるはずの敵に向け、ぶつけ続ける。
どれくらい時間が経っただろうか。
気が付けば敵は倒れ、男は戦いに勝利していた。
マイクを持った女性に、勝利のコメントを求められる。
「いつも通りやっただけです」とだけ答え、
賞金を受け取り、会場を後にする。
この世界は5つのエリアに分かれているが、
エリアEの闘技場は他と比べて「ショボい」ことで有名だ。
初心者向けであり、この地域のプレイヤーはいずれ他のエリアへと巣立っていくのが常識だが、
俺はこのエリアにずっと居座り続けている。
出場選手たちのレベルが低いおかげで、俺の戦績はまずまずといったところ。
周りからは「雑魚専」呼ばわりされるが、その声に耳をふさげばここは良い所だ。
闘技場に行って、日銭を稼ぎ、酒を飲んで、寝る。
その毎日を延々と繰り返している。
酒場で他のプレイヤーたちから他エリア遠征の誘いを受けたりもするが、
正直、他のエリアに行く気がない。
ここにいるだけで生活に必要なお金は十分に稼げるからだ。
これから先ずーっと、この生活を繰り返していきたいなぁ、
という願いは、一瞬で崩されてしまった。
「エリア対抗バトルロイヤル」の招集がかけられてしまったのである。