入学試験
1985年 1月
俺は、ついにある決心をした。魔法戦闘部隊(通称MFA)の入学試験を受けることにしたのだ。MFAは、日本政府が休戦協定締結後、まもなく設立した魔法師のみので構成される戦闘部隊だ。
元々は魔法部隊と呼ばれていたが、魔法師も戦闘に向いている者もいれば、そうでない者もいることが分かってきたため、戦闘に特化した部隊を魔法戦闘部隊と命名したのだ。
戦争が始まった当初、日本では魔法師がまだあまり多く確認できておらず、彼らがどれだけの働きが出来るかは未知数だった。政府の重鎮はそれまで日本を守ってきた自衛隊に数人の魔法師を組み込んで魔法部隊を編成した。魔法部隊主導の作戦が何度か行われ、それらの作戦は自衛隊のみで編成された部隊と比較して、多くの戦果をもたらした。
これらの結果から魔法師には戦況を変えられる絶大的な力があると、判断した指揮官は多少なりとも魔法を扱える人をなりふり構わず戦場へと送った。
しかし、魔法師がいくら強力な存在ではあっても無敵ではない。魔力切れや大勢による物理攻撃を受ければ必ずと言って命を落とす。
今回の戦争ではろくに訓練も受けていない魔法師の多くが命を失われた。その上に魔法師たちに頼りきった戦術を立てて、多くの魔法師が無理を強いられた。休戦状態に入ってすぐ世間では、戦時中の政府と自衛隊の対応について非難の意見が相次いで出てきた。そこで、政府が設立したのがMFAだったというわけだ。
ここで疑問に思うかもしれない。なぜ俺がMFAの入学試験を受けるのかと。では説明しておこう。
長年連れ添った父さんを失った母さんは、5年前のあの日から体調を崩して重い病気にかかってしまった、最近は良くなってきたが、まだ働ける状態ではない。
そこで、カイは家族のこれからの生活を養っていくために高校進学を諦め、中卒で働くという選択肢を選んだ。
そして、よく考えた末に高所得で自分が得意とする魔法を活かせるMFAが就職先として最良だった。