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「2つの境」

ようやく一区切りです。

よろしくお願いいたします。

「おい、どうなっている!?」

空に現れた異常と、直後にバルコニーで飛び散る火花にバリシスが声を上げる。

同時に走り出すバーキッシュ。

「おい、どこに行く!」

「バリシス、まず、民を!」

後を追おうとしたバリシスをロンバルトが止めて、広間や首都にいる民の避難をと促す。

「ああ、分かっている。おい、全人員で作業にあたるぞ。」

言いながらバリシスは、戸惑っているイニア達の元へ大股で進んでいく。

「せっかく大団円になりかけたというのに。俺達の敵は本当に性悪だ。」

1人ごち、周りも頷きながら作業に向かう。

「・・・。」

最後にバーキッシュが消えた城内への入り口を一瞥して。




「オカアサマ?その格好も可愛いけど、遊べないじゃん?ね?」

こいつ、私の事を本当に知っているのか?

ヴェリシャの言うのは”もう1つの姿”の事であろうと思われる。

確かにかつて大々的に姿を現しはしたが、それが何かまでもこいつは知っている。

ならば・・・このままにしてはおけない、どちらにせよ。

「里長!」

「・・・!」

城内の出口から響くバーキッシュの声に視線をやる。

援軍としてはまずいかもしれない。

幾らなんでも彼も器は人間だ。

コイツ相手はまずい。

そう思うや否や開きかけた口だが、それよりも早く別の声が響く。

「えー、何で”コイツまでいるの”?」

「何?」

先程までの雰囲気から一変。

敵でも見るような眼でシオンの隣まで来たバーキッシュを見つめるヴェリシャに思わず押し黙る。

「何だ?私だけではなく彼も知り合いか?」

「何の事ですか?里長。」

何事かと聞きつつ刀を構えるバーキッシュを制して、さらに続ける。

「私がお前の言う『オカアサマ』なら実は『オトウサマ』か?」

若干からかうような口調で言いつつ口の端を上げるが、帰って来たのは剣撃だった。

「やめてよね?オカアサマ?俺にはオカアサマしかいないんだよ?ましてや”そんな奴”が?いっつも邪魔ばかりして!死んじゃえ!」

「!」

いきなりの激怒と剣撃が撃ち込まれて、次の瞬間にバーキッシュの腕が捕まれ、どこにそんな細身で力があるのかという勢いで”歪み”に向かって放り投げる。

「バーシュ!」

「あはははははは!吸い込まれちゃえ!帰ってくるな!」

「・・・っそ!」

”歪み”に吸い寄せられていくバーキッシュ。

幾らなんでも黒い靄が乞いすぎる場になどはいれば事だと一瞬のうちにシオンも黒装束となり飛び出す。

「あ、オカアサマ・・・。何だよ・・・、何でそいつばっかり。何で”いつも”俺じゃないんだよ!」

始めはポカンとしていたが、ハッと気づいて不機嫌な顔になったと思ったら叫び、追いかけ始める。




恐ろしい勢いで吸い込まれるバーキッシュと後を追うシオン。

それに迫るヴェリシャ。

そんな高速な世界の中で直前でバーキッシュをつかみ引きずり戻すが、今度はその反動でシオンが”歪み”に吸い寄せられ始める。

「・・・っそがぁ!」

迫る”歪み”。

ものすごい勢いで飲み込まれる!と衝撃に構えるシオンとバーキッシュだが、それは別の衝撃に見舞われた。

「・・・!何だ!」

「なんで!?」

まるでゴムの壁にでも弾かれたかのようにシオンも、反動で激突したバーキッシュも弾かれたのだった。

その様子にヴェリシャも悲鳴のような声を上げる。

弾かれた衝撃はかなりのものだが、その勢いのままに”歪み”から距離を取り、首都近くの山中に墜落と言っていい勢いでたたきつけられるシオン達。

「全く・・・普通なら死んでる。」

思わずつぶやくシオンの横でうめき声がしてハッと顔を上げる。

「おい、バーキッシュ!大丈夫か!」

実際は『反魂体』になりかけているのだ、ほとんど。

この程度では死なないだろうが、”歪み”にも接触しているのだから他のダメージも入った可能性があると振り向く。

そこには横たわるバーキッシュ。

慌てて仰向けにして状況を見ながら声をかけると、何度目かに返事があり、少し咳込んで起き上がる。

「だい・・・丈夫です。流石に、全身に衝撃が・・・。」

「しゃべるな。響くぞ?」

慌てて、癒しの術式を最大出力でと肩をつかんだ。

だが・・・その手はバーキッシュの肩を掴むことはなかった。

「里・・・長、これは?」

「いや、何だこれは。」

正直に言ってこの時、シオンも混乱していた。

何せ、シオンの手はバーキッシュの方にのめり込んでいたからだ。

性格には立体映像に手を突っ込んだような調子で、しかし、感覚はあるのだ。

何度か出したり入れたりしてみる。

本当に何のことか分からないと、手を突っ込んで少し中で動かしてみたりする。

「何度もないのか、これは。」

「はい、里長の手がのめり込んで動いている感覚はありますし、体温でしょうか?それは分かりますが、痛みはありませんし・・・。」

この状態は一体と、先程の切迫した状態から一変である。

「・・・?」

ただ、何度か繰り返しているうちに、ある事に気付いたシオンはしばらくバーキッシュの方に腕を突っ込んだままにしてみる事にした。

すると・・・。

「里長・・・、傷が。」

みるみるうちにバーキッシュの傷が回復していくのだ。

勿論、回復術式など使っていないのに。

そうしているうちに全回復して、同時に腕が押し出されるような圧を受けたのでシオンも手を引き抜いた。

「・・・状態は?」

「・・・異常は見受けられません。」

何だこれはと再びバーキッシュの方に触れるシオンだが、今度はもうのめり込むこともなかった。

「傷が治ったから、なのか?」

「という事は、里長もこの事は分からないと?」

「少なくとも、聞いたことがない。」

これは、他の民でも可能なのか?

シオンが次に考えた事だった。

だが、今迄訓練や討伐で傷ついたものに触れてもこんな事にはならなかったし、ならば傷の度合いによるものなのかと考えたが、流石に確認のために民を重症にはしたくない。

どうしたものかと考えていると頭上から忘れてはいけない声がした。

「やっぱり・・・”そいつ”なの?」

「ヴェリシャ・・・。」

墜落したシオン達を追ってきたヴェリシャが浮いていた。

その表情からはまさに憎悪や怒りの感情があふれ出ていた。

「・・・ついでに、物理的にも。」

周りの木々が枯れ始めている。

ヴェリシャの纏う靄によって。

これはいけないと立ち上がる2人だが、そんな様子が見えていないのか、彼の視線は動かない。

どころか何かをつぶやき出した。

「なんで”あっち”に弾かれるの?連れて帰れないじゃない。何で?お前だって・・・。」

と、最後の”お前”はバーキッシュのようで、本来2人ともあの”歪み”弾かれる事なく吸い込まれるかのようないいようである。

だが実際は弾かれた。

何故?

「何で?なんで?何で?ナンデ?なんで!?何でだよ!?」

今度はいきなり叫び出し、髪を振り乱してこちらをにらみつける。

「もういいよ、ならここで始めちゃおうか?オカアサマ?殺してあげるよ?」

謳う様にいい、光の刃を出し構えるヴェリシャ。

シオン達も武器を構える。

「んふふ・・・。そいつはぐちゃぐちゃにして、オカアサマと遊ぶんだぁ。」

無邪気な子供の笑みを浮かべていざと構えた途端。

上空の”歪み”が振動でもしているかのようにうごめき出したのだ。

「今度は何だ・・・?!」

2人そろって思わずそちらに向き直ると視界にヴェリシャが入り込んで叫び出す。

「なんでぇ!?」

一体今度はどうしたんだと再び武器を構えながら様子をうかがう。

その間も叫び続け津ヴェリシャ。

その様子は何者かと会話でもしているかのようにも思える。

「なんで!やっと会えたのに!オカアサマに会えたのに!」

通れないから時じゃないって何!?俺が連れていく!いやだ、オカアサマといる!

声のあらんばかりに、狂ったように叫び続けるヴェリシャ。

やがて”歪み”が動いた。

黒い靄が高速で伸びてきたのだ。

構えていた武器を握る手に力が入る。

だが、黒い靄は瞬く間にヴェリシャを覆い”歪み”に引きずり込んでしまったのだ。

その声すらさらう様に。

そして最後に、うごめき消えた。

まるで、シオン達をあざ笑うかのように。

結局戦闘はなしか・・・。

突っ込んでくれた人、

ありがとうと思いながら投稿してしまいました。


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