友の顔
お久しぶりです。
間がかなり開いてしまい大変申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
久しぶりに戻って来た故郷。
正確には俺もゼフも渡ったのが夜で景色もあまり覚えていないあの大きな国境沿いの川が目の前に広がっていた。
あの時の俺達は、本当にひどかったんだ。
腹も減ってたし、心もすり減ってた。
何より、自分を人間だと思ってなかった。
でも、必死で川を渡って、さっき久しぶりに寄ったあの村に入ったんだ。
そこで馬鹿な事をした。
それなのに彼らは心配までしてくれた。
人間にしてくれたんだ。
村には土産を持って寄った。
ただ、軍隊と一緒だったからかなり驚かれたけどな。
同時に何で危ない場所に行くんだとまた、心配されたから、俺達は友達を助けに行くのだと言った。
勿論、俺達を知るあの一家も兵士の人も驚いた顔をしたけど、王様と女神様がいるって言ったら何か言いたげだったが「しっかりな」と肩を叩いて見送ってくれた。
本当にこの国は優しい。
そして、そんな国にした女神様って本当にどんな人なんだとも思った。
数年前にこの国の王様を変えた神の国の王様だと騎士団長さんからは聞いた。
当時その国に同行したらしく、その国のすごさについても話してくれた。
にわかには信じがたい天国のような国の話に俺達は驚きながらも聞き入った。
同時にどうして女神様は直接来てくれないのかと聞くと、それは神々の世界のおきてがあるらしい。
それでも女神様はこの世界側よりの方法で助けてくれているともいった。
何だか大変そうだと思いながらも、もっていく荷物の準備に俺は走り出す。
横を黙って歩くゼフは何かを考えているようだった。
俺はあまり考える事が得意じゃないからわからないが、やはりイニアの事だろう。
イニア。
俺達の親友。
幸せだったあの頃の象徴といっていい存在。
大げさな言い方だが、俺達にとっては大事な事だ。
あの幸せだった幼年期が過ぎ、荒くれすさんだ絶望の時が始まって俺達は考える事をやめてしまっていた。
今の状況を打破するなんて無理だ、と。
しかし、あれから2年過ぎて今。
俺達は目を背けていたあの国と向き合おうとしている。
何とも言い難い気持ちでもある。
でも、イニアは今までたった1人で立ち向かってきたのだ。
俺達がただ自信を嘆いているだけの間も。
ならば、今度は俺達が彼の友を助けに行かなければと唇をかみしめる。
「ここは土地そのものもボロボロだが、異常気象にでも見舞われたのか?」
同行していたガーラオン王国の騎士団長が俺達に話しかけてきた。
アンクも俺も考えたこともなかったが、確かに国境の広い川を挟んでいるとしても自分たちの生まれ育った大地は痩せているし、土や緑の色も何かがおかしいように思えた。
正直、何がおかしいかといわれると答えようがないが。
ただただ、濁っている様に見えたのだ。
「昔からこんな感じだったような気がしますね。・・・あ、でも、子供の頃はこんなじゃ・・・?」
そういえば、とゼフが口を閉じ俺を見る。
確かに、過去の楽しい記憶だからそう感じていたのかと思ったが、それでも子供の頃の森や丘はもっと鮮やかだったように思える。
何故?
「昔は、綺麗だったんだよな・・・。」
誰に言うでもなくゼフの呟くような声が頼りなく響く。
「昔?いつの事だ?」
騎士団長が怪訝そうに言う。
「あ、ああ。子供の頃です。俺達が村にいて、イニアもいて。あの頃はもっと景色の色味が鮮やかだった気がして。」
そういえば、景色が濁って見え始めたのは・・・“あの日”からだ。
俺達の村が消えたあの夜。
朝が明けた時にはもう世界は色あせていた気がする。
どうしてこんな事にと意気消沈して座り込んで見上げた空も、見回した木々も足元の草花も。
そして、目を閉じた鮮やかな記憶の中以外では大事な友の顔も思い出せなくなっていた。
本当にあの夜は何だったのだろうか?
「2人とも大丈夫かい?」
国境を越えてからの何度目かの休憩時に女将さんが荷台から降りて声をかけてくれた。
こんな危険なところまで一緒に来てくれた女将さんと旦那さん。
2人には本当に感謝しかない。
きっと、2人だけなら心細いばかりだったと思う。
「大丈夫ですよ。一応、俺達の故郷ですし。まあ、ボロボロですけど。」
自虐気味に見えてしまったかもしれないが、こうでもしないと膝が震えてしまいそうだった。
俺はゼフよりもガタイも良くてききっぷしも強いし、頑丈でそれが取りえなのに横で何かを考えこんでいるコイツの方が落ち着いて見える。
本当に何をしているんだか。
そんな俺の横に女将さんが近づいてきて肩を軽くはたく。
「何て顔をしてるんだい?友達を助けに来たんだ。そんな顔出会うんじゃないよ?もっとその友達の方が大変なんだろ?」
そうだ、イニアは今も命懸けで戦っている。
かつてのアイツの顔しか俺は思い浮かばないが、あの夢のイニアは・・・。
イニアは俺達の知らない顔だった。
確かに年は食ったけど、違う顔をしていた。
でも、力強い。
何で死にそうな毎日の中で折れないでいられるのか分からない。
でも、あいつはいつも俺達と笑っていた。
それがあんなに必死に、強く。
でも・・・。
「アイツ、顔色も悪かった。」
おもむろに口が動いた。
そして、言葉がこぼれた。
「アイツ?それはあんた達の友達の事かい?」
女将さんが俺達の顔を覗き込む。
「大人になったからとか、そんなじゃなかったよな?」
ゼフも思い出すように視線を巡らせながらつぶやく。
頬もこけて顔色も、血で汚れていなくてもあまり良くない。
本当にアイツ、どうなっちまったんだ?
思わず俺は頭を振る。
その顔を記憶から追い払う様に。
しかし、そんな俺の胸を女将さんがトントンっと軽くたたく。
「忘れんじゃないよ?」
驚いてそちらを向くと、笑顔ではないのに優しいおかみさんの顔があった。
「辛そうでもアンタ達の友達の大切な顔だ。忘れんじゃないよ?もう、そんな顔をさせない為にもね?」
そこまで言って、女将さんは荷台に上っていった。
忘れたい。
出来れば覚えているのは幸せだった子供の頃のアイツの顔だけにしたい。
でも、あれも俺達の友の顔。
そして、俺達はそんな顔のイニアの顔をあの頃の様な顔にする為に、出来ると思って今ここにいる。
何でこんな事になったかは分からないけれど、そうしなければいけない。
「やばいよな・・・。」
白い衣のすそを軽く払いシオンは瞼を開く。
今見ていたのはガドレイク共和国に入った一行と“ある動き”である。
ゼフ、アンクの両名一行の歩みは加護の効果もあり良好だ。
しかし、問題はもう1つの動きだ。
「一体、“アレ”は何だ?」
シオンは眉間にしわを寄せる。
ガドレイク共和国近辺領域は歪んでいる。
それが、彼らの感じた子供の頃との違いとなっている。
その歪みが発生したのがアーキッド村が破意に襲われた“アノ夜”だ。
あの日からあの国の属する領域に歪みが広がり続けている。
恐らく時空に亀裂がいくつか入ったままになっているのだ。
いや、しかしとシオンは頭を振る。
時空の歪みと亀裂は同時に展開されるが、消えるのも同じはず。
ではこの事態は?
「誰か、何かが干渉している?」
どうして?これは世界を破壊する敵陣営だろう。
ただ、何かが引っかかる。
ただ攻撃してきているにしては可笑しい。
「国内。やはり、ガドレイク共和国中枢の何者かがそそのかされでもした?」
結果、今の事態を招き続けているのだとしたら?
冗談じゃないと杖を握る手に力を入れる。
そんな所にこの国。
『スキエンティア』の民を向かわせるのか?
世界を守らなくてはいけない。
等しくすべてを。
でも、シオンはまだ人の心を強く宿している。
その中にはもちろん近しい者への情もある。
護るべき世界の民が得体のしれない状況の対応に向かっている。
でも、そこに自分の国の者を向かわせなくてはいけない。
バーキッシュ達はこの命令を下せば死ぬとしても赴くだろう。
自分にはそれだけの権限もあり、それが使命でもある。
しかし、それでも・・・。
「これが神様?冗談じゃない。」
自嘲気味な響きが神域に響く。
「冗談じゃない。そんな事の為に、・・・“ボク”は繰り返してるんじゃない。」
呟く言葉。
その違和感を告げるものはいない。
こちらの事情で誠に申し訳ありませんが、
かなりゆっくりな投稿になりますが、
これからもよろしくお願いいたします。




