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「歩き出す人間の国」

夜の王城に行こうなんて普段なら誰も考えたりしない事だと、『レーグ商会』の経営者夫婦は思った。

ただ、どうしても気になってしまう事があったのだ。

事の始まりは新しい働き手を探していた時に出会った2人のまだ若い男たちだった。

彼らは罪を犯して、その償いを終えたばかりだというが女将も伊達に長生きはしていない。

人を見る目は確かなつもりで、彼らは言うほど悪い人間には見えなかったのだ。

だから雇い入れる事にした。

その結果は本当に予想以上で、ガタイのいいアンクに関しては力仕事ならうちの誰よりもこなしたし、体格は平均位だがゼフは気遣いも出来何よりも賢い。

2人とも文字の読み書きができる事も重要だが、ゼフは算術も異常にできる。

こんな逸材はそう相違ないのは間違いなく、必死に毎日を過ごす彼らは見る方も気持ちのいいくらいだった。

そんなある夜、女将は2人の住まう下宿として使っている離れの方から強い光があふれたのを窓から目撃した。

一体何があったのかと主人も目を白黒させ、もしかしたら得体のしれない魔物が紛れ込んだのではないかと慌てて踏み込む。

光はどうやらあの働き者の2人の部屋からあふれているのだと分かり扉に走り寄ると、ちょうど光が収まっていくところだった。

緊張に1度、喉を鳴らしたが、女将はためらわず声をかけながら扉を開けると何やら呆然とした2人が立っており、ちょうどこちらへ振り向いたところの様だった。

それから腰を抜かしてへたり込んだ2人を落ち着かせ、ようやくといった様子に内心ホッとしたところで再び2人が慌てたように口を開く。

それはあまりにも驚くべき事で、2人の前に今しがた白い女神様が現れ、生き別れた友人を助けるように言ってきたのだという。

しかも、この国の国王に会いに行けと言ったとか。

にわかには信じがたいが、そんな冗談をこの2人は言わない。

ではどうするべきか?

この国の王は数年前から変わった。

夜中でも何かあれば目通しが叶う様になっている。

どうも2人の親友が命の危機にさらされていて、それが重要な事だと女神からも言われたというなら、信じてみたいと思った。

そして・・・。

今4人は目の前の光景に唖然としていた。

城門近くの往来は、流石に真夜中の目通りが叶うと言っても普段は暗い。

だが今は昼間のように明るく照らされている。

今日は何かの祭りだっただろうかと錯覚してしまった女将だが、どうやら違うらしい。

城門の方から近衛騎士団長が走ってくるのが見える。

この国の国王軍の長だ。

そして、女将たちの前までくると、神妙な面持ちで口を開いた。

「アンク殿とゼフ殿ですね?女神の加護を。」

何で知っているんだとばかりにアンクとゼフは顔を見合わせるも慌てて女将が促した事からあの不思議な石のついたペンダントを騎士団長に見せる。

それを一目見た騎士団長は目を見張り、深く頷くと再び2人に視線を向け敬礼する。

慌ててどうすればいいのかと4人もお辞儀すると団長はさらに口を開いた。

「女神様より国王に神託が下っております。隣国の戦を止める為にあなたのご友人、イニア殿の助けよとの事です。さあ、国王がお待ちですので謁見の間へ。」

言いながら促す騎士団長。

いきなりの事に驚きを通り越して驚愕しつつ、4人は城に入っていくのだった。



***



まさか私が生きているうちに、再び女神様に相まみえ、世界の変化に立ち会う事となるとは思わなかった。

ガーラオン王国は数年前まで酷い悪政を強いてきた。

そう、この私国王の手により。

あれた国はそれはもう酷いものだった。

しかし、女神の慈悲により救われた私はすべての民の父となり護り、そして導くと誓ったのだ。

その役目がこうも早く果たせる日が来るとは思っていなかったので、戸惑いもあるがようやく来たのだと安堵している。

近年、体も老いてきたせいなのか、働きづめの為か弱っている気がする。

勿論、体調はいいがこれは前者の老いが大半なのだと思われた。

生きているうちに役目を少しでもと考えてしまうのもその為かもしれない。

私には子供がいるのだから、その意思は次いではくれるがそれでも償いも兼ねてもっと自分も何かしたかったのだろう。

神との約束にこの様な私情はとも思う。

だが、どうしても私も自分のあかしを立てたいのかもしれなかった。

そんなある日、いつもの調子で職務の合間に礼拝堂に向かえば顔立ちから見て異国の民と思われる青年が女神の像の前に佇んでいた。

神の国から戻って妙に感がよくなった気がしている私は直観的に、彼らは重要な存在のように思えてならなかった。

だから、声をかけた。

そして彼らはやはり、隣国の民だったが罪びととして償いを終えたばかりだったという。

だが、正直彼らからは悪人のそれは感じられなかった。

それもそのはずで、気になって調べたところ飢餓から盗みを企てた貧しい民だったのだ。

勿論した事は罪だが、既に償っており改めている。

第一彼らが重罪人なら、私は切り刻まれても文句など口にすることも出来ないほどの大罪人でしかない。

なら、早くにそれに気づき償った彼らの未来が明るい事を祈り、女神について語りわかれたのだ。


それから少しした夜。

女神はいらっしゃった。

かつて礼拝堂で見た2人が、なんと隣国を平和に導く青年の近しい友人であり、戦争を終わりに導く為の担い手であるというのだ。

あの時の妙な感覚は暗にそれだったのかと思いながらもその話を聞く。

私の役割は彼らの護衛を出す事。

そうして彼らを革命家とされている青年、イニアのもとへ届け支援の手助けをする事がまず1つだという。

幾ら味方だと言ってもいきなり隣国から支援するのは警戒されてしまうので、この2人の協力が必要なのだという。

そしてその後、すなわち戦争終結後の同盟。

これによって支援を公に行うとともに、まつりごとに疎い新たなる王を導くようにとの事だ。

全ては時代の平和を託す子を育てる為に・・・。



***



ここまでをガーラオン国王の口から語られた俺達は未だ信じられない気持ちでいた。

俺達の前で消えた村。

あの時、女神は既にイニアを救い出し、その道へ導いていたというのだ。

その後、加護と生きるすべと何をするべきかというその運命を告げて。

そこでフッと、不思議な記憶を思い出した。

俺達の前に現れた白い女神。

あの女神と似た雰囲気の金色の妖精の夢を、村が消える少し前の夢で俺もセブもみていたのだ。

そして、あの夜3人で遊びに行こうという話になったのを思い出す。

あの金色の妖精はもしかしたら、女神に関係する存在だったのかもしれない。

そんな事を考えていたら案の定、その事を告げられた。

ああ、やはりそうか。

あの夢を見なかったら遊びに村を出る事はなく、恐らくあの夜に俺もゼフも死んでいたのだから。

この為に俺達3人はあの運命の夜に村を離れたのだと、この時思い知ることになったのだった。



***



あー、どうしますかね?先輩女神様?

アナタ、私の知らんところで何をしてらっしゃるの?

今さっき聞いたばかりで国王に伝えろとか・・・。

思い出せばあのイニア救出クエストの最中に村が水しぶきに飲み込まれるようにして消えて行った。

あの時に、私聞いてたんだよ!

かすかに聞こえた悲鳴だろう思われる声を!

一瞬で、しかも何言ってるか分からなかったけどさ!

アレだよね?

今回のキーパーソンになる2人って?

今朝、顔洗ってる時に「あ、何か始まる?」とか思ってたらいきなり目の前に先輩女神様降臨!

そして、落とされた爆弾情報!

大概にしろよ!?

あのクエストの続きが始まるの何となく分かったけど、裏で何しくさってんですか!

先言ってけってんですよ!

まったく、おかげで話のすり合わせが面倒な事この上ないし、すぐに準備とかで朝からスキエンティア中がバタバタだったよ?

ええもう、“真打登場!”とか馬鹿じゃないの!?

もういいじゃん、ガーラオン王国と『レーグ商会』の共同戦線で。・・・。

何が何でも、女神様アピールしたいのは分かるんだけど、私っていつから役者になったんだろうか・・・。


そして、何か、ごめんな?

うちの国の国民のみんな。


ようやくイニアさんとこに踏み込みます。

そして、新米女神の愚痴でした。

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