「結ばれた縁」
大変遅くなり申し訳ございません!
また動きます!
2話連続投稿させていただきます。
2年という贖罪の日々は厳しい労働の日々ではあったが、今日俺もアンクも再び都の裁判所にて出所の手続きをしてその生活を終えた。
入国当初の死人の様な状態と比べると、肉好きもよく程よく筋肉も付き健康そのものといった風になった俺達。
今度こそこの国でまっとうに生きてやり直していこうと誓い手荷物を持ち、担当してくれた兵士に頭を下げる。
本当に世話になったよ。
あの面会の日、俺達に諭してくれたから俺達は人間になれたんだ。
感謝を伝え、手続き終了となった。
出所する者にはわずかだが支度金も出されたが、出来ればすぐ働きたいと思う。
裁判所のある通りには求人案内をしてくれる場所があるというしすぐ行ってみようと思う。
そう考えていると、兵士が思い出した様に城と裁判所の中間にある礼拝堂を指差して口を開いた。
「そうそう、礼拝堂へ行ってこの先の生活がうまくいくように『竜の女神様』に祈っていくといい。」
そういえば、この2年の間毎晩2枚の絵に向かって祈っていた気がする。
安全や健康を神々に祈っているだけだと思っていたが。
この先の生活の事で見守ってくれるよう神様に祈っていくのもいいと思い、アンクと俺は礼拝堂に向かったのだった。
「・・・。」
2人そろって黙ってしまった。
礼拝堂へ入ると大きな2枚の絵と白い像がその間に置かれていた。
絵の1枚は黒い鎧の凛々しい女性。
もう1枚は純白の服の優しげな女性。
この2枚の絵の人物は同一人物であるとされていて、大きな光の翼が特徴的だと思った。
これが『竜の女神』だという。
しかし、この2枚の絵は雰囲気随分違うと思う。
「一体どういう神様なんだ?」
思わず隣でアンクが呟く。
「この国を救った神様さ。」
すると近くで祈っていた派手ではないが上等な身なりの男性が話しかけてきた。
「この国を?」
「ああ。」
「一体何から、ですか?」
飢饉でもあったのだろうか?それとも災害か?
「この国を殺しつくした、この私。悪の国王からだよ。」
その男の名前は、アイザック・レイ・ガーラオン。
何とこのガーラオン王国の王様だという。
思わずひれ伏しそうになる俺達だったが、王様は手で制して女神の肖像といわれる2枚の絵を見上げた。
「私は数年前まで酷い悪政を強いてきた。そのせいで何の罪もない民を絶望に叩き落して回っていたのだよ。しかし、ある事がきっかけで1度はたてついた女神様に救われた。」
王は過去起きた出来事を静かに語り始めた。
それはあまりにもむごい事で、自分たちの国と同じくらいこの国は酷い有様だったのだと思った。
しかし、その罪を抱えて今度はまっとうに生き、やり直すことを女神の前で誓い国は変わったようだ。
「この絵は戒めと希望と慈悲だ。黒い怒りの戦女神と白の慈悲の女神。私はここに来るたびに思っている。」
王様は思い出すように締めくくった。
「ところで、君たちも祈りに?」
どうしてここにいるのか?
素直に、以前ならいう事はなかったかもしれないが、この時はどうしてだか我が身に起きた事を話していた。
だが王様は話が終わると笑顔になり頷く。
「そうか、罪を償いこれから新しい生活を生きるのか。頑張るがいい。」
穏やかに言うと、去っていった。
「俺達も行くか。」
しばらくそのままでいたがアンクが言う声に俺も頷き歩き出す。
ここでフッと気になったのは一国の王様が1人で歩いていることについて大丈夫かと思い、入り口の兵士い聞くと「国王様は異能持ちだ。賊にも負けはしない」との事だった。
「どの仕事ができるだろうか?」
礼拝堂を出た俺達は当初の目的である求人案内所へ来ていた。
多くの仕事が張り出される掲示板の前で、まず悩んだ。
何せ2人ともまともに働いたことなどないのだ。
読み書きは出来るが、何が出来るのか分からない。
刑期中に肉体労働をしていたからそちらの方面がいいだろうかとも考えていたが。
そんなこんなでうろうろしていると、元気な女性の声に振り向いた。
「貴女が今、俺たちに声をかけたんですか?」
「ああ、そうさ。」
いかにも肝っ玉母ちゃんという風の女性がこちらに「ニッ」と笑いながら歩み寄って来た。
「アンタ達仕事探してんだろ?うちは商会をやっててね。体格もいいしアンタ達が良ければ力仕事の求人なんだけど受けてくれないかね?住み込みだし、いい仕事だと思うんだけどね?」
いかにも人のよさそうなその女性の申し出はありがたいが、俺達は償いはしたが刑に伏していたのだ。
その旨を女性に説明する事にした。
すると女性も少し考えるようにうなるが次の瞬間にはまたあの力強い笑みを向け「確かに悪い事はしたが、理由が理由だし、これからは真面目に生きようというなら問題ないさ。それでも気になるならその農家に謝りに行けばいいよ」と俺達を見た。
こんなふうに言ってくれる人の下で働いてみたい。
2人そろってそう思い、お世話になる事にした。
***
「おいオメーら!今日の積み込みは終わりだ!上がっていいぞ!」
荷台の上から旦那さんがいい笑顔で言ってくれる。
俺とゼフは『レーグ商会』の女将さんに求人案内所でであい、そのまま住み込みで働く事になった。
力仕事は刑期の間もしていたから大して苦にもならなかったし、俺は体格もいいからさらに活躍が出来た。
ゼフは頭もいいからそれ以外の仕事も兼任で活躍してる。
昔から気配りが出来たからな。
働き始めてすぐの頃、女将さんに付き添われてあの農村に謝りに行ったら、「これからも頑張るんだよ?」と農村の男の人に言われ、あの兵士さんにも「真面目に生きてけよ。」といわれたので返事をして帰って来た。
それからとにかく働いた。
そして、働いたらその対価がちゃんと手に入った。
それでみんなと飲みに行ったり、買い物をしたり。
この当たり前の生活に俺もゼフも幸せだと思った。
***
泥の飛び跳ねる森の中を明るい茶髪の青年が走っている。
突然彼の横からどこかの兵士が飛び出し切りかかる。
疲労の色の濃い青年は苦痛の表情を浮かべたまま回避し、切り付けさらに走る。
血と泥がこびりついた鎧の青年はなお、走り続ける。
「・・・!?」
驚いて起き上がるアンク。
「・・・今のは、夢?」
「おい、アンク?」
隣の寝台で眠っていたゼフも汗を流しながら起き上がってくる。
「どうしたんだ?ゼフ。」
「俺今、イニアの夢見たかもしれない。」
「・・・え?」
イニア。
故郷の村の幼馴染で10年前のあの日に死んだはずの大事な友人。
そういえば今見た夢の男もあの明るい茶髪だったような気がするし、顔立ちだって。
そんな事を考えていると、アンクの寝台のすぐそばまでゼフが歩み寄る。
「同じ夢だな。」
内容をお互いに話し合った結果、ゼフが呟いた。
2人そろって同じ夢。
しかも、故郷の村で10年前死んだと思っていた友の夢だ。
これは、彼が生きているという事なのではないかとどうしても思ってしまう。
ならば会えるのではないかとも期待してしまう。
ここに連れてきてまた3人でと。
だが、あの夢の人物がイニアだとして、なぜ血まみれなのか?
何かと戦っていたように見えると2人は思った。
「何だか分からないが、あいつは生きているのか?」
ゼフが呟き天井を見上げるのでアンクもそれに倣う。
次の瞬間、視線の先に白い光が現れ2人は驚いて後ずさり目を閉じた。
光は部屋に溢れ徐々に落ち着いていくのがまぶた越しにでもわかるほどの強い光。
「何なんだ!?」
アンクの上ずった声が響く。
混乱はしているが、それでも何が起きているのかを確かめる為に2人はほぼ同時に目を開くと光の方に目を向け黙った。
「・・・女神様?」
ゼフのかすれた声が響く。
アンクは口をパクパクして声が出ない。
その視線の先にはあの日、礼拝堂で見た絵の白い女神が立っていた。
そして・・・。
『かの青年、イニアは今あの国を救うために戦っている。だが窮地に立たされている。お前たちが友を救え。ガーラオン国王にこの加護を持ち話をしろ。』
突然頭に響く声。
2人は顔をしかめる。
『お前たちに加護を・・・。』
女神と思われる白い女性が手を2人の方に差し出すと、2人の目の前に白い石のペンダントが現れる。
『急ぐのだ。国を、世界を変えろ。』
「え、ちょ・・・!」
セブの声がしたが光と共に白い女性も消えてしまう。
そして手の中に残った白い石。
先程までは熱を持っていた石は今は冷たく、静かに手の中にある。
「どうしたんだい?アンタ達!」
しばらく放心したように石を眺めていると、廊下に続く扉から女将さんの声がして我にかえり、ビクリッ、と体がこわばる。
「お、かみさん・・・。」
扉の所に立つ女将と主人の姿を見た途端に腰が抜けて座り込む2人。
慌てて女将と主人は駆け寄り、幼い子供にするように頬や頭を撫でつけながら落ち着かせるように「大丈夫だから、落ち着きな、落ち着きな」とこえをかけてくれる。
そのまましばらくその声を聴いていた2人だったが、落ち着きを取り戻したせいか、不意にイニアの事が再び脳裏に浮かぶ。
友が死んでしまう!
思うや否や口を開き、先程までの事を力がまだ入らない舌を回してわめきたてたのだった。




