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「独立の始まりと2人の友」

聞き覚えのある名前が出てます。

始まりはいつだったんだろうな?

そうだ、あれは故郷の村が消えた日から始まったんだ。

あれは、までも夢だったんじゃないかと思う。

それも、悪夢だ。


10年前のあの日。

俺は、村の幼馴染のイニアとアンクと一緒に遊びに行くつもりだったんだ。

でも、イニアは家の用事でこれなくなったから、アンクと2人で遊びに行ったんだ。

お土産をたくさん持って帰って、イニアを驚かせようってはしゃいだな。

でも、俺達はその友人とも村とも2度と会えなかった。

遊びに行った先で見ようと思っていた物が見れないから早々と果物や木の実を摂る事にしてさて帰ろうかと思った頃、空がおかしい事に気付いた。

何がというとまず色が。

そして空気がどんよりして気持ちが悪かった。

慌てて村に走った俺達は途中であまりにも異様だと思い、集めた果物や木の実を置いて走った。


息を切らして辿り着いた高台。そこで目にしたのは化け物が暴れる様だった。

あれは魔物なんかじゃないとなぜか思った。

もっと良くないものだと。

それでも村に向かった。



村は川や池の中に浮島の様に存在している。

天然の堀だ。

そしてその彫りの中を中心に渦巻く風。

巻きあがる水。

消えた村。

一体何がどうなっているのか分からない。

でも、もう誰もいない。

少しして国の兵士がなだれ込んできてようやく我にかえって動き出した。

それからは酷いものだった。

それでなくても国王が強欲でひどい有様なのに、孤児の子供が食べていくのはあまりにも難しかった。

そこら中に犯罪が蔓延しているのに、兵士は国王や貴族を守って俺達を見殺しにしていく。

絶望しかない。

俺達も悪事に手を染め、ようやく生きていた。


***


「何か、ガーラオン王国が景気がいいらしいな?」

スラムの酒場で男が話している。

くたびれた男が皮肉のように語るのを、周りで聞くものもあざけるような調子で聞いていた。


少し離れた席で安酒とわずかなつまみに手を伸ばしていた2人連れはその話を聞きながらちびちびと酒を飲む。

くすんだ金髪に青灰色の目の男と赤茶の髪に青い目の男で、年は20代くらいだろうか?

彼らは酷く痩せこけていた。

酒とつまみにパンという質素な食事にありついたのは実に2日ぶりだ。

目は死に、ただ生きる事しかない生活。

次はいつまともな食べ物を口に出来るのだろうかと考えていた。

そんな粗末な酒場に突然国の兵士がなだれ込むのであった。


「薄汚いクズどもが!」

笑いながら兵士はくすんだ金髪頭を蹴りつけた。

横では腹を抑えて息も絶え絶えの赤茶頭が見える。

この国の兵士は何を考えてあんなスラムの酒場を蹂躙したのだろうかと金髪の男は考える。


多分、ただの憂さ晴らしか暇つぶしだ。


そんな事を考えていたら頬に痛みが走った。

民は結局彼らから見たら人間ではない。

2人の頭には常にそんな考えがあり、きっと自分たちは人間ではないのだと。

だから仕方がないのだと考えるようになってしまった。

そんなされるがままの様子に興味が失せてきた兵士は悪態をつくとイラついたように仲間の兵士の元へ戻っていった。

「全く、最近は北の革命軍が勢力を伸ばしてきたおかげで、景気が悪くてかなわんな。」

そんな兵士の声が聞こえたが、彼らには到底意味のない言葉の羅列でしかなかった。


「なあ、ゼフ。」

動けるようになった2人の男はスラムの寝床に帰っていた。

そこに座り不意に赤茶の髪の男がくすんだ金髪の男―――ゼフに話しかけた。

消え入りそうなその声に頭をあげたゼフは頬の地をぬぐいながら先を促すように視線を向ける。

「さっきの、ガーラオン王国って、飯食えるのか?」

絶え絶えといった感じで紡がれる言葉に、ゼフは眉間にしわを寄せているが、しばらくして口元をゆがめる。

「アンクは、言ってみたいのか?」

赤茶の髪の男―――アンクに言いながら背を向けるゼフ。

「ゼフだって愛国心なんてないだろ?」

「当たり前だ。国の何、愛せって言うんだよ?助けてくれないのに・・・。」

いい事などない。

あるとすれば、子供のころの暖かな思い出の時代だが、もう存在もしない。

10年も前の話なのだ。

「なら、国を出ないか?」

しっかりとした、いつ振りかに効く強い調子のアンクの声。

ゼフも驚いたように目を見開き振り向く。

そこにはすがるような眼がある。

機はあまり強くないアンク。

体が大きく力があるのにと昔は”3人”で笑いあった記憶がよみがえる。

「じゃあ、行くか?ガーラオン王国へ。」

その言葉を気に、わずかな荷物をまとめて翌日国境を目指した。

勿論国境には大きな川があり、唯一の端には関所がある。

だが、それ以外の警備は基本的には手薄なのだ。

何せ国は。

この『ガドレイク共和国』は民の事はせいぜい使える道具か使えない道具としか思っておらず、どこへ行こうがある程度いれば気にしないのだ。

だから、世闇に曲げ切れて川を渡ることは難しくはないのだ。

問題は体力が持つかどうかという事である。



一晩かけてどうにか川を渡り、歩く2人。

体力なども打つ来ていると言ってもいい。

ようやく歩いている。

それからまた一晩歩き、やっと農村にたどり着いたのである。

そこは思ったよりも大きな村だった。

周りには暖かな光がともされ、いいにおいがする。

2人はそんな光景が日常にあるこの国に驚くしかなかった。

川を越えただけでこんなにも違う世界があるのか、と。



その夜、寒い時期ではないが震える体は恐らく空腹がピークに達した事を知らせており、どうにかしなくてはと考えた2人はある農家の納屋にいた。

ゼフが様子を見て、それによって指示をメモに残しておいて行くという今までよく使った作戦で盗みを働こうと考えたのだ。

今までこれで生き残って来たのだ。

彼らの村は農村だが、別の意味でも存在していた。

その結果、子供は他の村とは違い読み書きができたのだ。

今のご時世ではそんな事は農村ではさせる事はないので、この方法は成功を収めていた。

何せ、メモは2人以外には読めず、何の意味もない紙きれか木片か布の切れ端なのだから。

このガーラオン王国も暮らしはガドレイク共和国より良いようだが、農村ではそこまでの教育はないだろう。

2人は思い偵察と待機する実働員に分かれて作戦を実行した。

だが・・・。



「お前達、何を考えてこんな間抜けな事をしたんだ?」

ガーラオン王国の兵士が2人を縛り椅子に座らせると、言いながら指示を示した木片を見ながら向かい側の椅子に腰かける。

結果としては作戦は失敗したのだ。

木片は目立つところではないが起き場所はあまり良くなく、農家の子供に見つかった。

だが、それを始め見たアンクは特に何も思わなかった。

恐らく見ても模様がある木片だとしか思われないだろうと。

農民の子供が難しい読み書きが出来ないのはこの世界の常識なのだからそう思ったのは仕方がないのだ。

ただし・・・。

その旨を話した2人に兵士は何か思い額に掌を当てながら口を開いた。

「数年前までならそうだったかもしれんな。」

「・・・どう、いう?」

声がかすれている。

その様を寂し蒼視線を送りながら兵士は続ける。

「この国は数年前、ある出来事があってな。それ以来、国王陛下は国全土にある法律を設けた。『義務教育』というもので、5歳になった子供は絶対に国から派遣された教師の下で、5年間は午前中読み書き算術などの基本的な学問を学ばなければいけないという法律だ。この木片を拾った子供は既に読み書きは出来る子供だったんだよ。」

バカな・・・。

声にならないのか口を動かす男。

そんな2人を見た兵士も男たちの様子から訳ありだと思い詳しい話を聞くと、酌量の余地があるという判断所を付けて都への輸送馬車に乗せたのであった。

続きます。

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