「久しぶりの新しい住民」
かなり遅くなってすみません!
始まります。
あれから3年か・・・。
1人しみじみと島で一番高い場所から朝日を眺める黒髪の少女。
ここは『城壁都市国家・スキエンティア』。
女神の治める国であり、少女がその女神である。
「まだまだ、あの国王は動かないか・・・。」
1度この国にはとある人間の国が攻めて来た事があった。
勿論、女神―――シオンには全く歯が立たず、逆に恐怖におののき返り討ちにあい今だに震えているらしいが。
それを知っているシオンにしてみてもまだ”時ではない”から気にも留めていない訳だが、どうやら久々に導かれしものがこの国にたどり着いたようだ。
正確にはたどり着く事は昨晩のうちに分かっており、受け入れ準備を指示したのだが。
「全く、あの国王は何してるんだ?恐怖で一時期静かになったかと思ったら、また好き放題始めてるし。」
そう、1年ほどはあの国王はおとなしくしていたのだ。
しかし、その1年が過ぎた頃から”女神に触れさえしなければいい”などと言い出し、再び国内で無茶苦茶な悪政を始めたのだった。
本当に迷惑だと思ったが、それがまた女神に対する恐怖を意識したくないからという理由だからシオンとしてはたまったものではないと先輩女神に愚痴ったのだった。
勿論、先輩女神はにこにこしながら「今は絶え時です」と言い残して毎度去っていくのだが、毎度呼び出しに応じてくれる辺りは感謝しているとシオン。
ならいちいち呼ぶなよと言われそうな話だが、そんなこんなで穏やかに3年の月日が流れて行ったのであった。
その間にも技術は向上し続けており、シオン曰「東京のちょっとした街くらいかな?」とか言ってみたりしている。
とは言っても実際はシオンも田舎育ちで良く分からない事だらけらしく、正直例えようがないのだが・・・。
とにかく発展と言っていいのか分からないが、空にはあまり大きなものや多人数は無理だがスピードが出るのという事で通した透明なレールに吊るされて走る貨物や乗り物が走っていたり、夜空にライトアップと称した映像投影をしたり、まだ地上だけだがエリアトレインを走らせたりしてみている。
そんな事を考えていると背後に3人の人物が各々でシオンを呼びながら近寄ってきた。
「里長、物資の用意はできたぞ?」
「受け入れ態勢、準備完了。いつでも行けます。」
「医療部、収容体制整いました。」
難民受け入れるならこのメンツ!とシオンが内心ガッツポーズと指差しして示す3人だ。
勿論、ハシュド・バーキッシュ・エレイズの事だ。
物資は生産系のハシュド担当。
受け入れ態勢は窓口としてバーキッシュ。
これは担架を担ぐ役目もあるからだ。
そして医療部だが、この世界の回復系呪文は傷をサクッと治せる訳ではないのだと聞いてシオンも仰天した。
教えてくれたのは先輩女神様で、それが可能なのは神族くらいなのだという。
魔法で出来るのはせいぜい擦り傷の治療くらいで、あとは回復速度を上げる為の術くらいしかないらしい。
物をぶっ飛ばせる呪文はあるのだが、壊すより直す呪文の方が難しいらしい。
そういった理由から、医療部は生命線という考えは変わらない。
腕のいい医者と高度な医療技術に設備は重要だしそんなにないのだから。
だからこの世界のけが人の死亡率が異常に高いのだというのにも合点がいくのであった。
「しかし、今回の住民は大ごとだな?大丈夫か?」
ハシュドが少し困ったような顔をしながらひげをさする。
彼の言う大ごととは勿論、難民の事だが今回は少し毛色が違った。
「難民の人数が最多で、しかも大半が子供ばかりとは・・・。何ともいい気のしない話です。」
そうなのだ。
今回の難民は最多で30人前後いるものと思われるが、その大半が成人前。
この世界で言うと15歳未満の子供ばかりだという。
最初にその船を見つけた時に何かおかしな感じがした。
船は中型船であるにも関わらず、生命反応が多い事にまず驚く。
正直この船だと普通ギリギリでも20人がやっとだという感じなのだから。
そこに来て30人である。
一体どんな乗り方をしているのかと探ってみるとその乗員のほとんどが子供であることが判明したのだ。
「子供ばかりの難民など、親を失ってしまった上に更に悲惨な状況とみていた方がいいかもしれません。」
バーキッシュが苦い顔でうめくよ応に言う。
戦争なんてろくなものじゃない。
立場の弱い者から食われていくんだから。
シオンも胸中でうめくがならばなおさら体制をしっかりしておく必要があると3人を見る。
「出来るだけ女性をフロントに置く事。子供以外にも一応乗員いる様だから、現状把握は怠らない様にしてくれ。私もすぐ出る。」
内心「本当は出たくないんだけどね?多分ビビられるから」と肩を落としながら持ち場に向かう3人を見送り、港の騒ぎにため息をついたのだった。
子供しかいない船。
正確には乗員の大半が子供の船を眼下に、シオンはどうしたものかと考えていた。
船内に人の気配はあるのだが、甲板に誰もいないのだ。
誰も気づかない。
ここに導かれてきたのは分かる。
多分、隠れ里に寄ってきたはずだと『導きの光』の反応を右目に映す。
やはり反応もあるのだが・・・。
生存しているのは反応があるのだから分かるが、誰も出てこない。
もうそんな体力すら残っていないのかもしれない。
何せ相手は子供ばかりなのだから。
体力が尽きて声も出ないのかもしれない。
だが、それでも大人も同行していた筈だと気配を探る。
「・・・?」
いる。
いるにはいる、確かに。
それは分かるが、動かない。
生命力を感じるのだから生きている筈なのに全く動かない。
眠っているのか動けないのか?
声をかけてみるにしても、女神としてどうしろというのだろうかと眉間にしわを寄せるシオン。
いっその事名乗りでもあげるか?
冗談でもそんな間抜けな事はしない方がいいに決まっているが、ここまで無反応だとどうすればいいのだろうか?
「・・・さ・・・?・・・さま?」
「・・・?」
そんな事を考えているそばから声がしたのではじかれたようにそちらを向く。
声は船内への入口からの様だ。
男の声、だろうか?
やけにか細く、高めの声だが。
「め、がみ・・・さま?」
「・・・。」
入口に這い出てきた人物が見えた。
その様に内心「うわー、ファンタジー来たー!」とか思ってしまうシオン。
それはそうだ。
薄汚れても滑らかな金糸の御髪に白い肌に金の瞳ととがった耳の種族。
竜族とは違う存在。
エルフである。
この世界のエルフの目は皆金色だ。
それを知っていたが、すごい色彩だと内心興奮するシオン。
もちろん顔には出さないが。
同時に姿勢を正し近付いていくと口を開く。
「私はこの領域を守護する竜の女神だ。お前たちは選ばれたものとしてここに導かれた。我が国へ連れて行く。」
言いながらエルフの、おそらく男に視線を送ると相手も頷きかすれた声で返事をする。
その様子を見たシオンは今まで通り港まで船を引いていくのだった。
「今回の導かれてきた住民は子供ばかりってだけでも驚いてるのに、エルフがいるなんて。」
レーシアは軽品部の材料庫から必要な荷物を引っ張り出しながら、同じく工程表を確認しながら作業中のリズに話しかけた。
「私は何見ても、オドロカナイワヨ・・・。」
変なカタコトの喋りと無表情が返ってきた。
「エルフ族って本当に美人揃いよね?あ、竜族もか?」
構わず喋り続けるレーシア。
「眼福?そう言うのよね?」
「キラキラがいっぱい・・・。」
「・・・。」
異常な速度で動かしていたてを止めて、隣の少女に視線を向けるレーシア。
あー、これは当てられてるわ。
苦笑いしながら、隣で静にテンション暴走中のミーハー娘を見やる。
まあ仕方がない事ではあるが。
エルフ族がああも破壊的に色気駄々もれとか、国中大騒ぎだったし。
ファンタジーな生き物が、ホストやホステスさながらに艶めいていた事と、そんな彼らが子供を率いていた事でシオンも更に混乱したのだった。
ミーハー娘でなくとも仰天な事態!(色気駄々もれエルフ)
さて、次回はそんな彼らのお話しです。




