神様の国
少し長くなりました!
よろしくお願いいたします!
これは何だ⁉
最初に見た光の翼を持つ女性は今いる海域に浮かぶ島国『スキエンティア』にある神の御座を任された『竜の女神』だと言う。
神様、なのか?
何故私達の前に⁉
本当にお迎えなのか?
だがそれ以上は語らず杖を振る。
すると舟が大きく揺れはじめて、私と妻は娘を支えながら柱にしがみつく。
一体、何が?
辺りを見回すと・・・舟が浮いているではないか?
光の糸の様なものが至る所に巻き付き、船を覆っているように見える。
そのまま滑かに動き出す。
「・・・お父さん、お母さん・・・。」
腕の中の娘が呼ぶので目を向ける。
体に障ったのかもしれない。
「・・・たす、かるの?わたし、達。」
「分からない。ただ神様が何故・・・。」
「貴方・・・!」
妻が再び声を上げる。
あれは何だ⁉
まだ日も登らぬ暗い海に、空に。
「てん、ごく・・・?」
娘が呟くのを聞きながら目の前に広がる眩い光景に釘付けになる。
淡い様々な光が天高くそびえ立つ建築物を彩り、海に映り更に輝いている。
建物の中からも光が溢れている。
あれが『スキエンティア』か?
女神様のいる国。
神の国?
そんな場所があったのか?
そんな事を考えているうちに港の様な場所に舟が下ろされる。
洞窟の様な場所に石や木と、様々な桟橋か行き交う今まで見た事のない立派な港だ。
材料も知らないものばかりで同じ世界にあるとは思えない。
しかもかがり火も焚いていないのに昼間の様に明るい。
思わず目が釘付けになってしまう。
「大丈夫か!」
「・・・!?」
いきなり立派な体格の男が目の前に現れた。
精悍そうな顔つきをした短い黒髪の男だ。
「部隊長!担架の用意、出来たぞ!」
新に別の、最初の男よりやや若い灰色の髪の男が声を上げて現れた。
彼は今、最初の男を『部隊長』と呼んだが彼らは兵士なのか?見てみれば『部隊長』と呼ばれた男は勿論、周りには複数の帯刀した男女かいるではないか?
「兵士、なのか・・・?」
助かったと思ったが捕らえられてしまうのだろうか?
「我々は女神を元首と頂くこの国『城壁都市国家・スキエンティア』の国防担当部署、『警備部』だ。里長・・・女神より海からの魔物の襲来の可能性があると護衛と病人の搬送に来た。」
どうやら助けに来てくれたらしいと肩を落とす。
しかし女神様の国の兵士だったか?
そう言えば皆揃いの随分上等な黒色の服を着ている。
やはり人間の国と神様の国は違うのかもしれないな。
そんな事を考えているうちに妻が聞かれる前に娘を助けてと訴え始める。
そうだ、私は何をしているんだ⁉
「彼女が患者だな?」
男は訊ねてくる。
「ああ、はい。・・・?」
何故だ?今の会話は?そう言えば先程も″病人の搬送に来た″と。
これでは彼らは最初から病人を連れているのを知っていた様だ。
「・・・何故だ?娘の事を・・・?」
思わず声が出た。
すると『部隊長』は目を細めて何かを思い出す様に宙を見つめ口を開いた。
「貴殿方はこの国の民になる為に女神の″運命″に引き寄せられて今、ここにいる。女神はそれを知った際病人の事も知ったそうだ。」
何だ?私達は導かれた?いや、そんな事より私達が女神様の国の民になる?
「詳しくは後だ。病人をーーー。」
ズッドォォォォォン!
「・・・!?」
いきなり海の方で爆音が轟いた。
かたわらの妻や既に娘を運ぶ為に用意された″タンカ″と言う物の上の娘も目を見開きそちらに視線をビクリッと向ける。
そこには巨大な水柱が崩れ、海中から巨大な何かが飛び出し倒れていく光景が広がっていた。
「あ、里長が言ってた魔物かしら?自分で言って、自分で倒したんだ。」
女の兵士があっけらかんと言う。
「里長・・・?」
「女神の別名だ。」
若い茶色い髪の男の兵士が嬉々とした様子で光の翼を見ながら言う。
「女神は元々『闘神』だからな。」
なんと、あの女神様は戦いの神様だったらしい。
「一応、だ。」
「・・・!?」
直後、頭上から船上で聞いた″あの声″が降ってきた。
「里長、お疲れ様です。」
『部隊長』が礼をとる。
他もならう。
見た事のない礼で、右手のひらを真っ直ぐにして頭に当てると言うものだ(警察官の敬礼)。
しかし私が見たのは天から地上に降りてきた女神に光の環が絡み付き、瞬く間に美しい黒髪の少女に転じる様だった。
私達家族は固まったまま凝視する。
それに気付いた女神様が転じた少女はこちらを見て口を開く。
「説明は後だ。その病人の治療を急ごう。」
時間がないと謂うやいなや担架が持ち上がる。
そのまま巨大な傾斜の端の、やはり広い階段を上り始める。
「・・・!」
階段を上りきると大きな広場があり建物の入口であろう、これも大きな扉があった。
「ドームを通過してそのまま手術控えの病室へ行く。」
女神様が兵士達に指示を出しながら進む。
そしてこの光景が目の前に現れた。
「あ、貴方・・・。」
妻が上着の裾を掴む。
私も掴み返す。
様々な淡い色。
眩い光の洪水が視界を満たした。
やはりここは天国だったか?
本気で思った。
広い室内の高い天井に向い登って行く広い螺旋階段。
それについて行く様に光が灯っている。
いや、上からもか?柔らかで鮮やかな優しい光が溢れている。
「悪いが、今は急ぐぞ?」
横から少しすまなさそうな女神様の声がして慌てて歩き出す。
あの大きな建物を通過して反対側のやはり大きな扉を出た先も圧巻で大きな堀の様な溝の中にも街があり光が吊るされて灯る。
目の前の溝と外部を渡る橋の上のアーチからも外壁から内側に延び曲げられた場所からも光が吊るされている。
近くに遠くに夜闇すら届かせる事がないくらいに。
「エレイズ!患者が着いた。術前の検査を!エレイン、薬品準備!あと『警備部』の衛生担当は患者の両親の怪我の治療を!」
言いながら担架から動くベッドに何人かで移すと奥から知的な黒髪に白色の長い上着の男が現れた。
「今回は補佐で頼むぞ?『医局長』。」
女神様に言われて『医局長』と呼ばれた男は頷き娘を寝かせた動くベッドを新に現れた赤黒い髪の女性と共に押して別の部屋へ行く。
「私も・・・。」
娘を一人にはしておきたくはない!
今生の別れになるかも知れないのだ。
しかしその私の前に女神様が立ち首を振る。
「すまないがここからは医者以外は立ち入る事は出来ない。」
そう言うと女神様も同じ部屋へ姿を消した。
「安心して。大丈夫だから。」
娘の消えた方向に視線を向けたままの私と妻は視線を声のした方へ移すと赤毛の女性兵士が歩み寄ってきた。
「私はクレナス・フィイ。『警備部』で衛生担当をしているから貴方達の手当ても担当するわ。こっちの処置室に来て。」
言われて私も妻もこれ以上は本当に何も出来る事はないと、一度娘のいるであろう部屋の方を見てクレナスと言う兵の後についていった。
「傷は浅いから、すぐによくなるわ。あと少し待って。食事が来るから。」
見た事のない道具を使い私と妻の傷はすぐさま手当てされ、代わりの服などが渡された。
「いいのですか?」
「何が?ああ、服?ええ。明日には貴方達の家や生活用品も用意出来るから、今夜は病院に泊まって?昼にはにはお嬢さんも治療も終わるし。休ませなくてはいけないだろうから、夜までは面会は出来ないけど。」
「昼には娘は・・・?」
「治るわ。まあ、衰弱が激しいけど今のこの国なら大丈夫よ。」
クレナスは何でもない事の様に言いながら道具を片付けている。
だが私は信じられない気持ちでいた。
娘の病が治る、だと?
「不治の病が、治るんですか・・・?」
私は苦々しい声を出す。
だがクレナスは特に何でもない事の様に返して来た。
「この国と貴方達の国の″不治の病″は基準が違うわ。貴方の娘さんの病気は、この国では治る病気。お嬢さんは体力が落ちてたから急いだけど、治療は始まってるから大丈夫。間に合ったわ。」
あれほど娘を苦しめた病が治る。
横の妻も涙目になっている。
「・・・この事をアーレストの住民にも伝えてあげたいわ。」
最後まで娘の身を案じてくれた住民達。
私もそう思った。
だがここは村から遥かに離れた場所だ。
叶わないだろうと足下に視線を向ける。
「・・・あの。」
フッとクレナスが話しかけてきたので顔を上げる。
「なんですか?」
「貴方は、アーレストの住民?東の沼地の近くの。」
私も妻も驚いた。
確かにそうだ。
「貴女は私達の村を知っているのですか?」
神様の国の民なら世界中の事を知っているのだろうか?まだ、若い女性の様だが。
私は思いながらもクレナスの言を待った。
それからしばらく考え込んでクレナスは口を開いた。
「私の祖母は、アーレストの出なのよ。」
「はい?」
私はこの国の住民はもとからこの国の民なのだと思っていた
しかし、彼らも私達と同じ難民であり、女神様に選ばれここまで来て救われたのだと言うではないか?
女神様からは後で詳しい説明があるだろうと前置きして彼女は今まであった事や国の事。
導かれた私達の使命についてを語ってくれた。
私達夫婦は驚きに見つめあったり頷きあったりして話を聞いた。
そして、私達はアーレストの村の事や私達の見に起きた事を語った。
「アーレストは、もうないの。」
感情を圧し殺した様子でクレナスは呟く。
「すみません。私の力なさの為に、貴方のお婆様の故郷を守れませんでした。」
これは本当に寂しいと思った。
守る側の私が生き延びて、村が失われてしまった。
「別に私は、いいわ。祖母に聞いて気になっていたけど。貴方達家族は故郷をなくしたの。おかしいのは国王軍だから。」
あの後、クレナスは部屋を出て行った。
「食事です。」
入れ代わるように娘と同じくらいだろうか?
茶色い髪の少女がワゴンを押して部屋に現れた。
このワゴンも何で出来ているのか?
それを言うなら食器も何もかもだ。
布に関しては恐ろしく良い手触りに色。
この服も貴族の着るものではないかと思い訊ねると、この国では一般的な布の服だと言われた。
「私が布などの生産部署の責任者なんです。」
はにかみぎみに微笑んでそう言いながら食事を並べていく。
「これを、貴女が?」
妻が目を見開く。
私も同じ様な顔をしているのだろうと思ったが。
そして用意されたのは、ミルク粥だろうか?
暖かい湯気がゆれ、食欲をそそる。
隣には様々な果物やサラダも置かれ、今よりまだ豊かだった何十年も前に口にした食事を思い出す。
「さあ、どうぞ暖かいうちに。サラダと果物。リゾットはおかわりありますから。」
「リゾット?この粥の事ですか?」
頷く少女。
スプーンでひとすくい取り口に運ぶ。
「・・・!」
それは今まで食べたどの食事より美味しかった!
中にはチーズや肉が惜しみなく使われているのか、様々な味がした。
サラダも果物も瑞々しく歯応えも良い。
こんな食事は初めてだと、私も妻も貪った。
「・・・ごちそうさまでした。」
本当に満たされた気がした。
「このリゾット?は、どこの地方の料理ですか?」
妻がたずねた。
すると少女は「ああ、それですか?」と片付けのてを止めて振り返ると歩み寄りながら口を開いた。
「女神様の国のお料理です。」
それから少し休むと娘は心配だが、気分も体も大分楽になった。
そう思っていると昼食が運ばれてきた。
そして運んで来たのは・・・。
「女神、様・・・!」
まさに驚愕、である。
神様が人間に食事を運んでくるなど何がどうなっているのか?
先程のクレナスの説明で女神は普段人として在るとは聞いてはいたが。
だが、私達の胸中をよそに慣れた手つきで準備を始めていく。
「女神様・・・!」
「娘の治療が終わったぞ。」
被るように女神様は言った。
「まだ麻酔が・・・まだ、疲れて寝ている。目が覚めたら伝えに行く。」
そこまで言うと、いつの間にか準備の終わった食事を示して口を開く。
「昼は『ウーメン』だ。付け合わせはあまり代わり映えがしないが今日は勘弁してくれ。」
「・・・。」
その背中を見送り食事に視線を落とす。
やはり見た事のない、だが美味しそうな食事が並んでいる。
そうか、あの子は助かったのか?
良かった。
私は安堵しながら食事にてを伸ばしたのだった。
人生、色々。
また運命に導かれた住民が増えました。
ちなみに、ウーメンは味噌派です(笑)。
ブクマ、評価ありがとうございます!
よろしくお願いいたします!




