ひとりぼっちの冒険の先
色々な場所をまず、見て回る話です。
青い海。
深く瑞々しい森。
澄みわたる空と風。
広い大地とそびえ立つ古城。
何じゃコリャー⁉
可笑しな内なる絶叫はともかく、サバイバル開幕。
わたくし、『司田 紫音』、改めシオンは先程、異世界『ルクレツア』の赴任地に到着したのです。
誰も聞いてない、内なる声だけど。
本当に『島』ですか?
面積はオーストラリアとか言ってましたよね?女神様。
しかも、いい笑顔で。
一応、旧世代の廃墟改め主要の街・・・古城にしか見えない城下町みたいな場所が建ち並ぶ海沿いにいる、私。
いや、スゴイ眺めだ。
城塞都市?山に寄り添いう形で建っている様に見える。
こういうやつは好きに使っていいらしいけど、中はどうなってんのかね?
「・・・。」
あ、ダメだ。これ、落ちたら確実に死ぬやつだ。
何これ、恐い!
城の寄りかかっている山もとい切り立った山脈の周りには、城のある場所を覆う様な、円柱型だけど、ドームと呼びたくなるほどデカイ場所がある。
そこをグルッと広い通路があり、そこを囲う様に堀の様な、奈落に行き着きそうな、とにかく巨大な溝があった。
堀の外側には広い街が堀に沿う形で配置され、一番外郭も、高い壁に囲まれている。堀とドームまでは大きな橋懸かり、眺めは、大迫力のひと言に尽きる。
「城のある山脈を中心に、円形に広がった街か。スゴイねー。」
わざわざ口に出した感想だったけど、スゴすぎて感情がこもらないわー。
「!?」
ドームに続く橋に差し掛かった時、思わず息が止まる勢いで押し黙った。
何これ、嘘だ。
幅の異常に広い堀だとは思った。
でも、これ堀じゃなかった。
「堀の壁、何で窓が?」
口に出した。
出さなくても分かってるけど、うん。
堀の向かい合った壁の中は多分、沢山の部屋がある。
店もあるし、堀じゃなくて街なのね、ここも。
堀の中の街に、なんとも言えない視線を向けるのであった。
見上げた先は、広くて大きな螺旋階段が天を目指している様が見える。
頭上からはスポットライトさながらに光が降り注いでいる。
「ここメインホールだよ、きっと。」
出す気はなかった言葉が口をついて出る。
やはり中にも何か店舗らしきものもあるし民家らしき部屋もある。
今、私が目指しているのはてっぺんの城だ。
あそこに女神様が用意してくれた物資が運び込まれているらしい。
居住区の荒れ具合いもかなり軽いから、と女神様が言っていた。
正直、新築を用意してくれるとか、現存する部屋を綺麗にしておいてくれるとか無いのかしらと少々厚かましい事を考えるが、ひとりでこのだだっ広い街やら何やらを整備していくのだ。
バチは当たらない気がする。
しっかし、「島をもらったし国でも創るか!」とか考えていたけどひとりだ。
出来ないよね?
そう言えば、島を″栄えさせる″って、ひとりでどうするんだい?これは。
インフラ整備したり、物造りしても″栄えた事にはならない″気がするんだけど。
とりあえず登る。
とにかく登る。
登ってもまだ着かない!
エッチラ、オッチラと階段を登る私。
一段の高さは大した事はないが一段が広くて緩やかな螺旋階段は中々にキツい!
早くてっぺんに!
息が上がり始めた。
体力ないなぁ、と、開けた視界に見えた瓦礫に手をつき顔だけ空を仰いで深呼吸。
あー、キツかった!
何度目かの深呼吸に大分楽になると改めて辺りを見回した。
アレ?何か可笑しくないか?この高さ。
絶海!大パノラマ!が目の前に広がっていた。
私、山脈を登頂したのか?何の準備も装備もなしで・・・。
怖!
何だ、ここ。
目の前には今まで見てきどの建物よりも立派な建物が並んでいた。
多分、この中に女神様の言っていた住める場所と荷物が置いてあるのだろうと歩き出した。
あ、本当だ、あった、あった。
他より大きくて立派で小綺麗な、多分屋敷。
その前には荷物の山、段ボール。
・・・どっから持って来た?女神様。
「周りの雰囲気は中世で、段ボール?何かシュールだわぁ。」
しかも、何が入っているのかまで書いてある。
引っ越しか!?
雨とか降りそうにないし、と私は先に他の建物を見て回る事にした。
まず周りの建物の状態はかなりいい。
聖堂、民家等がたて並ぶ。
そして、それらの建物の間に通る道。多分、大通り。
この一番奥に恐ろしく豪華で、大きな建物がそびえ立っていた‼
「魔王の玉座とか、あったりして。」
ふざけ半分、マジビビり半分で扉を押し開けた。
手に伝わる重さに軋む音。
溢れ出る光りに目を細めるのだった。
会話が全部独り言です(笑)。