ここにいるカタチ
あけましておめでとうございます!
年明けです!
よろしくお願いいたします!
暑い。
まだ、そんな季節ではないが。
「里長、こちら繊維状になりました。」
「ああ、リズのところに運んでおいてくれ。」
ゆで上がった葉を、専用の特大容器に移し終わったレシーアが次の作業工程をしているリズのいる隣の部屋へ容器の乗った荷車を押していく。
布の葉は山の様にあるが、それは加工しなければただの葉でしかない。
難民である住民の衣類だっている。
女神様からの物資に布はあるが、畑仕事や鍛冶作業。
警備班の巡回後。
どうやっても汚れてしまうし、痛む。
シオンの服は『アーティファクト』だが、物資の布はそれとは違い普通の布なのだ。
この島はあまり暑くない。
もとい、寒いくらいだからある程度の防寒装備だって必要だ。
急がなくちゃ。
周りを眺めてシオンは思ったのだった。
ついでに″特別な衣装″も作り、能力付与のなされた『簡易アーティファクト』の服も作りたいと考えていた。
「せっかく国を創るのだから、″民族衣装″とか振り袖とか紋付き袴の様な″正装″もほしい!」
リズ達に言っても全く理解されなかったが、シオンはドヤ顔でほざいた。
遊び心は大切さ。
やはり理解はされなかったが、リズ達も新しい発想の衣装が出来るなら楽しそうだと途中から乗っかって来たので勢いがついた。
そして今、糸の精製準備真っ最中。
葉っぱの釜茹でで部屋が熱気に包まれている。
ハシュドの事は言えはしない。
通りすがりのバーキッシュに苦笑いされた。
気にする者は居なかったが。
「あっついな・・・!」
「茹でられる葉っぱの気持ちですね・・・、きっと。」
返事をまずリズ。
「本当はもっと熱いですよ、葉っぱ。」
続けてレシーアの緩い返事。
「でも、まあ、終わったからな。なんとか。」
スキエンティアの住民達は本当にワーカーホリックだ、と考えながら次の工程まで寝かせてある材料に視線を向ける。
葉っぱは茹でられて真っ白に脱色されて干場に並べられている。
これを糸巻きにして、機織りして布になる。
それを裁断して縫って服を作るのだ。
長い道程たなぁ。
店で気に入った服を選んですぐ購入していた暮らしは本当に楽で恵まれていたのだなぁ、としみじみするがコレが普通の少女二人には何の事か分からないと不思議そうにされた。
「特別な布、ですか?」
二人の声が重なる。
作業は二日目に差し掛かり染色の工程に入っていた。
一晩葉っぱを専用アーティファクトに入れて今日の朝来てみたらいい感じに繊維がほつれており、一気に糸巻きにしていく。
ちなみにコレもアーティファクトでの作業で早い事。
本当にアーティファクトって便利だ、とホクホク顔でシオンが糸巻きを数える様をリズ達も隣で作業しながら頷いていた。
休憩室にて今までの作業を思い出しながらシオンは作っている布について語り始めた。
持参したお菓子をつまみながら・・・。
「染める色も特殊だけど、織り方も変わってる。」
この島の特有種だろう染料となった材料も勿論他には無いものではあるが、織り方で光沢に変化や色を加えてみようと思ったのだ。
正に『最上位正装』とでも言うべく礼服用の布を作る。
「名前を『繻子』とでも言おうか?」
下地を含めパッと見は艶やかな光沢のある黒だ。
深い漆黒。
だが、布が曲がったり光の角度によっては太さの違う別の細い艶糸が織り込まれている為黒の中に違う色が現れて見える。
シオンとしては、本来の『繻子』とは違う物だとも思うがイメージ的にこの名前で作りたいと考え二人にその詳細を語る。
「そんな布、聞いた事がないですね?」
レシーアは言いながらも大量の菓子を口に詰め込む。
緊張感はないけど、馴染んだな?本当にこの二人。
内心苦笑いと仲間だという感覚に目を細めるシオン。
「他に民族衣装の様な物はまだ作りたいと思う。例えば・・・。」
『最上位正装』はどっしりとした漆黒の『繻子』を使用して、入り込む細めの艶糸は個人で変えて作る。
一応、成人したらコレを!みたいにしたいからだ。
何事も形は大事だ。
ちなみに個性的アレンジはしていいが、管轄部署によって共通のデザインを必ず入れるつもりだ。
『準正装』だ。
コレが制服に該当する。
形は一律で揃える。
制服扱いなので。
色は部署によって変えるが、多分、警備班は黒になりそうだ。
この衣装は部署への所属で支給される。
一応、私は闘神で、鎧は黒だし。
『民族軽装』はこの国の住民全員が持つ『民族衣装』だ。
色もデザインもかなり好きに出来るが浴衣ニュアンスの上着に下には好きな物を着るスタイルにしようと思う。
夏祭り等でアレンジされた浴衣をイメージしてみると分かりやすいだろうか?
「何だか凄いですね?でも、どうして『民族衣装』を?」
リズが隣でお菓子を頬張るレシーアの溢したクッキーの欠片を片付けながら聞いてきた。
「う、ん?」
何となく、モジモジして視線を反らすシオン。
どうしたのだろう?とレシーアも菓子を食べる手を止めて向き直る。
「里長様?」
「あ、うん、何だろな?」
何か言いづらい事だろうか?二人は目をパチパチさせながらシオンの様子を見ている。
しばらく視線を巡らせていたシオンだったが、流石にこの状態で黙ったままでは決まりが悪くなってきたのか一度下を向き顔を上げると何処か照れた様に喋りだした。
***
故郷を追われたスキエンティアの住民達は、今はこの国の住民だと言われている。
でも、私は夜中に見回りの時にハシュドとレノンが話しているのを聞いてしまったのだ。
別に不満があるとか何らかの愚痴くらいある筈だ。
今、この国にはまだ何もないのだから。
むしろ、その意見は国を栄えさせるだろうからと聞耳をたてた。
しかし私が耳にしたのは、何処へも誰にも向かわない″不安″だった。
「ハシュドのお頭。すみません、話を聞いてもらって。」
少し弱々しいレノンの声はハシュドに謝っていると思った。
どうしたんだろ?
「気にするな。故郷を追われて地獄を彷徨うしかなかったオレらが今は神様の国の住民なんだ。現実味がなくて不安なのも分かる。」
オレもだ、と笑うハシュドの声が小さく響いている。
「そうですか・・・?正直、何だか夢みたいな感じがして、現実味がなくて。目が覚めたらまたあの戦渦や船の中にいるんじゃないかって。何か、″目に見える、触れられる証し″みたいな物でもあればって。」
声は遠くなる。
「不安、か・・・。」
そう言えば少し前にハシュドが言っていたな?
今、自分達は幸せだ。
夢みたいで″怖い″くらいに、と。
その時はおおげさだな。まだまだ幸せになるんだ、と笑ったけどもしかしたらそう言う意味もあったのかな?
さっきのハシュドの笑い声とレノンの声が脳裏に響く。
私は何を見てきたのだろうか?
国を作ると言って、住民が増えただけで安心してた。
彼らのメンタルケアに関して何も考えていなかった。
「夢みたいで、か。」
夢じゃない、ここは現実の世界で国だ。
″目に見える、触れられる証し″。
「作ってみようか?」
それが、どれ程の不安を拭い去れるかは分からないけど。
今の私が出来る事は、こう言う事だろうか?と、作業部屋に足を向けた。
説明ばかりでした。
″幸せすぎると怖くなる″。
そんな住民に考えを巡らせた結果の服作りでした。
新年早々、何故かしんみりしました。
勿論、色んな服も作りますよ!
アクセサリーはハシュドで(笑)!
よろしくお願いいたします!




