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竜鱗(りゅうりん)の悟り

じめじめした石の地下要塞。

元の色など分からぬほどにコケに覆われた石造りの床に壁に・・・。

本当に気がめいるこの場所に二人目の少年がいるのだと思うと、この国の王は馬鹿だろう?と思う。

その少年は実の子だろうに!

だがその馬鹿な事をしているのはこの国の王なのだ、間違いなく。


暗い。

本当にそれが″救出″になるのか?

内心疑問が頭をもたげたまま、私はガタガタして降りにくい石の階段を階下へと急ぐ。


マジで何なんだろうか?

降りるところまで降りきった私の前には永遠に続くのではないかと思うほどの闇が広がっていた。

どう見ても人が住む場所とは思えない。

本当にこの国の国王はダメだな。

同時にやはり″あの救出内容″でいいのか?と、思った。



「彼の少年には″力の加護″を与え、そのまま地下牢へ残して去って下さい。」

先刻女神様から聞いた、今回のクエスト内容だ。

救出と聞いていたから、イニアの時の様に連れ出すのだとばかり思っていたのに地下牢ここに残していけと?

思わず聞き返し、女神様の顔を二度見してしまった。

しかし女神様は固い表情のまま目を閉じ首を振るのであった。


一体何がしたいんだ、アンタ。

胸中で呻きながらも歩を進める。

本当に嫌な汗をかいてるし、足の裏に伝わる床のでこぼこした岩の感じも気味が悪い。

これ、岩の感触だよね?

何か、人の体の一部とかが転がっているとかじゃなくて。


どれだけ進んだのだろうか?

暗闇が濃い過ぎて時間感覚や距離感が分からなくなってきた。

大丈夫か?私?

考えて、振り払う様に頭を振ったのと同時に音がした。

どこだ⁉

咄嗟に辺りを探る。

おかしい。今の、音?声?

何だかモヤモヤする。

思わず額にやった手で視界を遮り、瞼も閉じる。

目を馴らそう。馴れている筈なんだけどもう一度。

ただ落ち着きたかっただけかもしれないが、無理矢理そう理由付けた。

「ここの闇は、とても暗いですからね。」

「⁉」

いきなりした声に息が詰まり、喉の奥でくぐもった音がしたのを感じながらも、声のした方向に視線をやる。

どうして今まで気付かなかったのか?

そこには『白い少年』か佇んでいた。

いや、″白く見える″の間違いか?アレ、幻光げんこうだし。


しっかしこの状態で幻光が映り込むなんて、どれだけの力を内包ないほうしてるんだ?

異能者は力が強くなると、自身にまぼろしを纏わせているって聞いた事はあるけど。

何でそんな事が起こるかは女神様もよく分からないらしい。

「貴女が『闇色の竜』のお方ですか?」

ン?今、なんつった?

「何?」

あ、いけね。崩れた。

崩れたけど、今彼が言った事の方が気になるので先を促す気はないが見つめ返した。

「銀のたてがみを持つ、闇色の竜。貴女が来るのを母共々お待ちしておりました。」

少年が微笑んでいる気がする。

相変わらず視界はゼロなのに。

同時に確信した。

彼は『竜鱗りゅうりん』だ、と。


『竜鱗』。

別名『悟りの者』。

魔法とは違うが何処にも属さない力を生涯″ひとつだけ″宿して生まれてくる存在。

時に彼らは全くの無力とも思えるが、存在そのものがこの世の″ことわり″を現し、時に導き手となると言う。


何だか、分かった。

国の導き手だったのか。

しかも特質上、加護さえあれば″何故か″死なない。

これも『竜鱗』の特徴だったけ?

半物質はんこんたい″と呼ばれる存在。

確かに彼ならここに残して置いても大丈夫だろう。


ひとり納得して、ウンウン言っていると、先程の涼やかな声が再び話し掛けてきた。

「ああ、すまない。君がレクスだな?」

「はい、闇色の竜の方。」

・・・ただ、その呼び方は何?

若干たじたじになりつつ頭を掻き、彼に話し掛ける。

「ああ、悪いがその呼び方はやめてくれないか?私の事は・・・巫女と呼んでくれ。」

女神様の巫女だし。

名前はダメっぽいしさ。

どうかね?と、少年に視線をやると分かったと頷いている。

なので、本題に移る事にした。


「僕に″加護″を頂けるんですか?」

神秘的な少年も驚きの声を上げる。

何故、とは問うてこなかった。

「何故、とは思わないのか?」

思わず聞いてしまったが、少年は微笑んで返事をした。

その答えに私はああ、成る程と少年を見据えた。

彼の『竜鱗』の力だったか、と。


彼や彼の母親の持った能力は″遠見とおみ″の一種らしい。

一種と言うのは、通常の″遠見″はその言葉の通り、″遠くを見るだけ″なのだ。

しかし彼の力はそこに、抽象的ではあるが″先の事″が見えるのだ。

未来というには安定しないから、過信は出来ないらしいが。

彼らは″意味のある暗示″と呼んでいるという。


「ですから、貴女様が現れるのは母の代から知っておりました。そして、ある言葉をお伝えするようにとも仰せつかっております。」

何だ⁉私が何かしに来た筈なんだけど、言伝を私に?

これ、女神様知ってましたか?いや、知ってたんだよね?

そうだよ、何か含んだ様な言い方だったよね?こら!

内心、仰天しながらも目の前の少年に先を促す様に視線を送る。

少年も心得たとばかりに頷き、口を開く。


『先ずは″導きの運命により辿り着いた民″の″えにし″を見据えよ。それが″北の国″を導く手となる。その後″一人目の少年″が持つ″縁″が現れる。その後はあるがままに舞い続けよ。』


何?分からん。レクスいわく″道しるべ″らしいけど、なんの?

思わず彼を凝視してしまったよ、マジで。

しかし彼は一度軽く瞬いて、涼やかに言い放つ。

「以上が貴女様が歩まれる最善の道となる文句です。」

つまり、私の使命に関するヒントか?

誰がそんな事を?

思わず首をかしげる私に少年は続けた。

「抽象的な詩で、僕にもよく分からないのです。『竜の詩人』様も詳しい事は何も仰らなかったですし。」

と、ゆるゆると頭を振っている。

うん、君の方が巫女っぽいよ、ホント。

しかし『竜の詩人』?

「母は″世界意志″だと言っていました。定かな事は分からないのですが。」

″世界意志″?何それ、分からないな。

とりあえず、後で女神様に聞けばいいか。




彼は地下牢ここを出られないと言った。


うん、一応聞いた。

女神様はああは言ったけど、本人がどう思っているのかが聞きたかったんだ。

そしたら彼は穏やかに微笑みながらこう告げた。

「僕の瞳は何も映しません。だから、ここを出ても行き場がないのです。」

ああ、そうか。

私は幾つかの事に納得した。

どうして彼はこの暗闇で私が″見える″のか。

どうして暗闇の中でこうも穏やかにしていられるのか。

恐怖は?

ない事はない筈なんだけど、でも落ち着き過ぎている。

でもそれはうつつを見る事がないから・・・。

そういう事だろう。


後に私は彼の目は、第一王子の拷問によるものだと知り憤慨しそうになるが、その時もレクスは穏やかに″今包まれている幸福に感謝する″と微笑むのであった。


***


暖かな見えない光が僕の前に集まるのを感じた。

闇色の竜の方が″力の加護″を授けて下さるというのだ。

母上が遠い昔に話して下さった通りだ。

手の中に小さな丸い感覚が伝わるのを感じなから、目の前にいるであろうお方の声を聞く。

「君はいずれこの国を救い、世界を平和に導く一端を担う事になる。今はここに残して行くが必ずだ。」

そうか、僕の役割はそれなのか。

平和になるといいと母上語っていた過去の記憶が脳裏にかすめ、フッと口元に笑みが浮かんだのが分かる。

そうか、僕は母上との夢も叶えられるのか。

闇色の竜の方が去るまで、久しぶりに相手のある会話をした後この世界の幸せを夢見てもう一度微笑むのであった。


***


終わった。

クエスト、二つ目。

何だか分からない事、あったけど。

私はあらかじめ用意されていた転位陣に足を踏み入れた。

光が視界を包み、島への帰路についたのであった。

一応、これで二つ目のクエストが終わりました!

何か″道しるべ″とか出てきましたが、この後の展開の簡単バージョンです!

次回、どんでん返しです!

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