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銃弾と攻撃魔法・無頼の少女  作者: 立川ありす
第21章 狂える土
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日常7

 週末に実施された下水道クリーン作戦は、度重なる予想外の障害があったにもかかわらず大筋では成功裏に終わった。

 日曜日は先方で後始末をしていたので、協力者チームはお休みだった。

 なので舞奈はアパートでゆっくり骨休め。


 そして週が明けた月曜日。

 普段と同じようにホームルーム前の教室に登校してきた舞奈と明日香は――


「――おっテックか。ちーっす。土曜はお疲れさん」

「おはよう。協力に感謝するわ」

「2人ともおはよう……っていうか、そっちこそ」

「まあな……」

「ええ……」

 挨拶に返されたテックの言葉に2人して苦笑する。


 臭くて汚い下水道での戦闘に、テックはドローンを駆使して協力してくれた。

 口からレーザーを吐くネズミの魔獣をガトリング砲(アヴェンジャー)、吐かない方のネズミの魔獣をセミで爆殺し、魔獣を操っていた道士を牽制してくれた。

 舞奈と明日香は生身で現地入りして、その全部に対応した。

 あれだけ大変な思いをして頑張ったのだから、流石に少しはクソの流れも良くなっただろうと朝から少し思い出し疲労。


「……臭わない?」

「大丈夫」

「良かったわ」

 明日香が服の袖をテックの鼻の前にもってきて安堵し、


「じゃあ魔力の残滓か何かが残ってるのかしら?」

「……ルージュちゃんがおまえを怖がるのは、別にいつもの事だろう?」

「うるさいわね」

 つい先ほど警備員室の子猫に手を出して警戒されてた件を訝しむ。

 自分の指先の匂いを嗅いでみるが、別に何ともないらしい。当然だ。

 そんな2人に苦笑しつつ、


「そういえば、先方の人たちが連れて行った人の正体はわかった?」

「いんや。わかるとしたら今日だ」

 尋ねてきたテックに答える。


 操獣槍とやらでネズミの魔獣を操っていたと自称する脂虫の道士は、先方の執行部がスマキにして持ち帰って諜報部に引き渡した。


「なら多分、この人」

「おっそっちで正体がわかったのか」

「ええ」

 言いつつテックはタブレットの画面を向ける。

 舞奈と明日香は並んで覗きこむ。


 タブレットの画面の中央に表示された情報窓には見覚えのある下品な顔。

 先日の魔獣を操っていたらしい道士の写真だ。


 不可視になって執行部の連中を翻弄していた彼は、正体をあらわした直後に怒り狂った彼らにボコボコのお岩さんみたいな顔にされてしまった。

 だが、そうなる直前の顔面の画像がテックのドローンに残っていたらしい。

 流石はディフェンダーズの支援ドローン。

 それを日曜の間に何かのデータベースと照会なりしてくれたのだろう。

 テックは端末を操作して、写真の横に別の情報窓を並べる。


「どれどれ、日系人スマキ隊のメンバー……って、どっかで聞いた事あるな」

 斜め読んだ舞奈は首をかしげ、


「ええ。たまにテレビに出る名前だから」

「表向きはカウンターヘイトを標榜するテロ組織よ。特定野党の……今では与党の中でも評判の良くない議員からもだけど、汚れ仕事を請け負ってるわ」

「つまり国内のテロリストが奴らを利用してるって訳か……」

「そういう事になるわね」

 テックと明日香と3人で、顔を見合わせて苦笑する。

 奴らというのは埼玉の一角を実効支配している狂える土の事だ。


 つまり違法移民の怪異どもの跳梁の裏に、国内のテロリストが関与している。

 あるいは、そいつらを使っている政治家が。

 それを是正しようとすると、議員なりに扮して政財界に巣食っている怪異を何匹か片づける必要が出てくるだろう。

 舞奈的には願ったりだ。

 そいつらを片づければ長期の仕事も完遂できて、街も少しは綺麗になる。

 だが周囲と調整する役割の人間は大変そうだ。

 具体的には諜報部や渉外部。

 奴の正体を知ったであろうトーマスあたりも今頃は頭を抱えていそうではある。

 そんな様子を思い浮かべて何となく苦笑しながら……


「……こりゃ仕事の締めは大がかりになりそうだぜ」

 舞奈は肩をすくめた。


 それでも日中は特にトラブルもなく、無事に放課後を迎える事ができた。


 普段と同じように友人たちに挨拶し、下校した舞奈たちは埼玉支部へ転移。

 一昨日ぶりに仲間たちと合流して禍我愚痴支部にやってきた。


 だが今日の仕事はない。

 先日の作戦中に遭遇/撃破した魔獣に関する調査、壊した通路の始末、拿捕した道士の尋問などなど諜報部や渉外部の仕事が増えて、それどころじゃないからだ。

 何故なら仮にも舞奈たちは組織人だ。

 舞奈たち現場の人間が大波乱を乗り越えた後は、筋肉痛のように周囲の部署も対応に追われて大わらわになる。


 なのでトーマス氏に挨拶だけして、合流したフランの案内を頼りに街を歩く。

 皆で近くのスーパーに赴いて贈答用のフルーツ盛りを購入。

 諜報部所属で多忙なはずのフランが舞奈たちと一緒に外出できたのは、先日の作戦のメンバーとして現地に赴いた彼女に優先的に休養を取らせるためだろう。

 というか、土曜にあれだけ大変な目にあって日曜にも働いていたみたいだし。


 それはともかく、歩くにつれ大きくなる喧騒に嫌な予感がしていると……


「……ここですよ」

「ああ、ここだな」

 市民病院に到着した。

 何故なら先方の執行部のメンバーのうち何人かが怪我の治療のため入院した。

 なので見舞いに来たのだが……


「某の地元の病院とはずいぶん様子が違うでゴザルな」

「賑やかでやんすね……」

 様子を見やって皆でやれやれと苦笑する。

 市民病院の玄関前には数十匹の狂える土どもが集まり、大騒ぎをしていた。


 暴徒の襲来によって表玄関は施錠されてしまったらしい。

 彫りの深い顔立ちをしたくわえ煙草の男たちが玄関の扉を乱暴に叩いている。

 他の狂える土どもは周囲の看板やベンチを引き倒して暴れている。

 あるいはプラカードを掲げ、壁にスプレーで落書きしながら病院関係者や通行人に悪臭の煙を吹きかけながら威嚇している。

 道をふさいで救急車の進行を妨げながら怒鳴り声を上げる者もいる。


 警備員が必死に制止しているが、ヒートアップした暴徒どもは止まらない。

 いつ暴動になっても不思議じゃない。

 幸運にも院内に逃げこんだ職員たちはカーテンを閉めて身を潜めているようだ。


「……ったく、一昨日あんだけ片づけたのに」

「下水道にいたのは別口だから……」

「そりゃそうなんだけどな」

 口をへの字に曲げる舞奈に冴子が苦笑する。

 何故なら彼女も内心は同じだからだ。

 まあ、幸か不幸か、ここに居る連中の中に中毒者はいないようだ。

 同じくらい迷惑なだけで。


「ここはわたしの【虚像(ロックフォーゲル)】で気をそらせた隙に……」

「却下だ、却下」

 騒ぎを大きくしようとするな。

 明日香の妄言をつっぱね、


「皆で透明化して、裏口から入るでやんす」

「それは名案でゴザル」

 やんすの意見で特に異論もなく皆で物陰に隠れ、施術を開始する。


 やんす自身は【偏光隠蔽(ニンジャステルス)】で。

 フランも自前の【隠匿の盾(ヒジャーブ・デルゥ)】によって。

 明日香は【迷彩(タルヌンク)】を行使して自分自身と共に舞奈とドルチェを。

 冴子も小さく祝詞を唱え、【陽炎・改(かげろう・かい)】で自身とザンを透明化させる。

 そして再び病院の玄関前で……


「……おー。本当だ。見えてないぜ」

「おおいザン、声や気配は消えてないんだ。遊んでるとバレるぞ」

「ええっ!? ホントっすか!?」

 叫んだザンに、騒いでいた狂える土のうち何人かが振り返る。


 全員の姿が術や異能力の光学迷彩によって見えなくなっているが、舞奈の優れた感覚ではザンが調子に乗って狂える土どもをからかおうとしていたのがわかる。

 だが舞奈の言葉と奴らの反応でザンも気づいたらしい。

 慌ててそそくさと足を速める。

 まったく。


 そのようにして一行は特に余計な悶着もないまま通用口に到着。

 隠形術を解き、やってきたナースらしき女性に開けてもらって来院に成功した。

 やれやれだ。


 そうするうちにパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 暴徒たちは一部が逃げ出し、一部がさらに激しく暴れ始めたようだ。

 だが、そこに舞奈たちの仕事はない。


 なので美人のナースの後ろにぞろぞろ並んで階段を登り、廊下を歩く。

 市民病院の廊下は清潔で静かだ。

 狂える土どもの院内への侵入は防げたようで何より。

 だがフランや明日香が無言で舞奈を見てくる。

 失礼な。こんな時に尻を触ったりしないつもりなんだがな。


 案内されるまま病室に入ると、


「おっザン! 皆さんも!」

「いらっしゃい!」

「よっ! 見舞いに来たぜ!」

 数人の少年たちが出迎えた。


 病院着や包帯が少しばかり痛々しくはあるが、思ったより元気そうで何より。

 流石は元気が取り柄の執行部の面々だ。

 というか窓から玄関前の一部始終を見ていたらしく、何かしたそうな表情をしている。少しばかり退屈していたようだ。


 とはいえ彼らは要入院、うちひとりは長期の治療が必要なのだそうな。

 不運にも破傷風にかかったらしい。

 汚い下水道で槍で突かれたからだろう。


「お見舞いの品を持ってきたでやんす」

「フルーツの詰め合わせでゴザルよ」

「お口に合うかわかりませんが」

「「あざーっす!」」

 やんすとドルチェが買ってきた贈答品をサイドテーブルに並べる。

 フランの言葉に少年たちがテンション高くはしゃぎ、


「量は足りるでゴザルか? 箱で買ったほうがと進言したでゴザルが」

「い、いえ、そこまでは大丈夫っす……」

「病院の飯もあるので……」

「そうでゴザルか」

 珍しいドルチェの妄言に、育ち盛りの少年たちもちょっと引く。


 入院見舞いのフルーツを箱買いとか舞奈も初めて聞いた。

 聞き間違えじゃなかったらしい。


 それにサイドテーブルには最初から菓子や漫画本が積んであった。

 昨日あたりにトーマス氏かリーダーあたりも見舞いに来たのだろう。

 もちろん差し入れは『一口で一週間分のカロリー』みたいなアレな奴じゃない普通の菓子だ。


「……花はトーマスさんか隊長さんが?」

「あ。それ、わたしが薦めたんですよ」

「ですよね」

 花瓶に生けられた、野郎が持ってくる絵面が想像できない可愛らしい花を見やりながらフランの答えに明日香が納得し、


「俺、リンゴ食いたいっす」

「はーい。今、剥きますね」

 フランは少年のリクエストに応え、慣れた調子でナイフを抜いてリンゴを剥く。

 仮にも執行人(エージェント)なので、必要最低限のツールはいつも持っているらしい。

 まったく働き者である。

 そのようにほのぼのしている側で……


「スマン、俺がもっとしっかりしてれば……」

「別にあんたのせいじゃないぜ」

「そうそう!」

「ええ。わたしも貴方に責任はないと思うわ」

「けど……」

 珍しくザンが凹んでみせる。

 対してベッドに腰かけてリンゴ食ってた少年たちは気にしていない様子だ。

 冴子もフォローの言葉をかける。

 だが、あまり効いてはいなさそうだ。


 まあ気持ちはわかる。

 舞奈たちと同様、ザンたちB班の前にもネズミの魔獣があらわれた。

 ドルチェの機転によってザンと執行部の面々は早々に撤退し、ドルチェと冴子が魔獣を食い止めながら隙を見て撤収しようと試みた。


 良い判断だと舞奈は思う。

 素早く英断を下してくれていなければ、少年たちのうち何人かは餌食になっていただろう。

 おそらく通路の奥から魔獣を操っていたスマキ隊とやらの思惑通りに。

 何せ相手は魔獣なのだ。

 CランクやBランクでは瞬殺だった。

 Aランクのドルチェと術者の冴子だから持ちこたえられた。


 だがザンはそれが気に入らないらしい。

 自分がドルチェと、そして冴子を残して無様に逃げたと思っているのだ。

 だから――


「――おまえ、何か勘違いしてないか?」

「えっ?」

 舞奈は意識して硬い声色で語りかける。

 明日香は無言で舞奈を見やる。そういうのは一任するつもりらしい。


「あれが魔獣だって、冴子さんが気づいたんだろう? なら、自分たちがどういう状況から逃げのびたのか理解してくれ」

「けど、あれはドルチェさんが言ってくれたから……」

「それでも逃げられるかどうかは賭けだったはずだぞ。指示に従ったのはおまえら自身だ」

「そうっすけど……」

 そんなやりとりの意味に気づき、


「「そうっすよね……」」

 むしろリンゴ食ってる少年たちが恐れおののく。


 何せ大型車両くらいのサイズの獣が襲いかかってきたのだ。

 異能力を使うだけの人型怪異とは訳が違う。

 筋肉でできたトラックと喧嘩をするようなものだ。

 人間が生身で相手するなんて考えられない。

 即座に逃げを決めこまなければ大事故だった。

 遭遇から撤退までの間の僅かな邂逅で、そんな魔獣の恐ろしさが骨身に染みたのだろう。障壁で守られていたとはいえ実際に殴られた奴もいたらしいし。


 実際、魔獣というのは、そういったレベルの存在だ。

 出会ったら最後、死ぬのだ。普通は。


 まあ実際のところ、あのネズミの魔獣は舞奈が知っている他の魔獣に比べて小さかったし、脅威もそれなりだったから逃げられたという理由もあるだろう。

 それでも――


「――そんな奴に出会って、全員揃って生きてるんだ。それって普通じゃ考えられないくらいラッキーな事なんだぞ。もっと誇れ」

 能天気なおまえらしくねぇ。

 言いつつ意識して不敵に笑ってみせる。


 もちろん彼に、仲間が死ぬのが当然だなんて価値観を持ってほしい訳じゃない。

 だが、この結果で凹まれていられても困るのも事実だ。

 少なくとも、あの状況から犠牲者なしで生きのびた時点で満点以上の成果だ。

 こんなに嬉しい事はない。

 それ以上を望んだらバチが当たると思うほどだ。

 だから……


「そ……そうっすよね!」

「ああ。だが撤退した先に居た○んこ野郎は自力でなんとかできたはずだぞ」

「ええっ? でも……」

「でもじゃねぇ。そもそも敵が見えないくらいで手間取るようだから表であんなアホな事できるんだ。帰ったら少し鍛えなおしてやる」

「そりゃないっすよ~」

 少しはいつものペースに戻った彼をからかって軽口を交わす。


 まあ彼が舞奈やドルチェに比べて実力不足なのは事実だ。

 少なくとも今は。

 それを自覚する気があるなら、そうしてもらった方が今後のためになる。


 忙しく身体を鍛えるのは良い事だ。

 余分な事を考えなくて済むし、強くなる。

 舞奈は本当に大事なものを失ってからそうした。

 だが杞憂を誤魔化すために訓練しても、もちろん良い。


「それより、こっちこそ申し訳ないっす。舞奈さんたちの事、ただの子供だと思ってて……」

「別にいつもの事だからいいよ。生きてるうちに気がついてくれて重畳だ」

「ひえっ!?」

「そりゃないっす!」

 そのように少年たちと馬鹿話を続け、


「こう見えて、舞奈さんはお尻を触ってくるでやんすよ」

「それは聞いた事があるっす」

「Sランクだから許されるんすね……」

「じゃあ俺も強くなれば……」

「……許しませんよ」

 何故かフランに睨まれる。舞奈が。


 別にひけらかすつもりもなかった最強Sランクの実力も、ああいう事態なので余さず知られてしまったようだ。

 だが、まあ問題がある訳じゃない。

 だいたい舞奈の扱いはいつもこんな感じだ。

 出会い頭には小学生の扱い。

 実力を認められてからは最強の扱い。

 何処で気づかれるかの差だけだ。

 だがやんす。あんたは後で〆る。


 そんな風にしばし楽しく歓談した後、


「じゃあ、そろそろおいとましますね」

「「いろいろあざーした!」」

「なんか隊長さんに伝言とかあるか?」

「じゃーお花ありがとうって伝えておいてくださいw」

「喜んでましたってw」

「……いいのか? 本当に言うぞ?」

 そんな軽口を交わして本当においとまする。

 フランは首をかしげていたが、あのリーダーが野郎の見舞いに花を持ってきた事実について、昨日はいろいろあったのだろう。

 想像しかけて少し笑う。


 玄関口の狂える土どももいなくなっていた。

 サイレンの音ももうしないし、警察が綺麗に連れて行ったのだろう。

 おまわりさんも大変だ。


 帰り道、ふと見かけた『下水道工事につき通行禁止』の看板から目をそらす。


 狭い下水道で魔獣を2匹も倒したので、余波で壁や天井はボロボロだ。

 その修復のための工事なのは、事情を知っている人間から見ると一目瞭然だ。

 まあ、工事が安全にできるのは下水道内の怪異を一掃したからではあるが。


 そのようにして禍我愚痴支部に帰投すると、


「おおザン。舞奈ちゃんも戻ってきてくれたか。早速、稽古をつけてもらいたい」

「「お願いします!」」

 リーダーを始めとする少年たちが待ち受けていた。


 と、まあ、他の執行部の連中からもこの扱いだ。

 流石に魔獣2体を中心になって撃破し、その後に出くわした道士を相手に互角以上の対応をしたからだ。

 つまり舞奈がSランクなのが名実ともにバレてしまった。

 やれやれだ。


「で、どうやって舞奈さんの技術を伝授するでやんすか?」

「そうだなー。サシで組み手でもやるか?」

「「む、無理っすよ!」」

「無理とか言うなよ覇気のない奴らだな……」

「やんすねー」

 コーチなんかした事もない舞奈は少し困り……


「……そうだ。皆でやんすを捕まえてみろよ。こいつは【偏光隠蔽(ニンジャステルス)】だ」

「「わかりました!」」

「ひー!」

 言った途端にやんすが『消える』。

 タイムラグはほぼない。

 治に居て乱を忘れない惚れ惚れするような反応の良さだ。

 普段はあんなに消極的なのに。


 荒療治に冴子や他の皆はちょっとビックリ。

 フランもあははと苦笑いして、


「オラ! 何処だ!?」

「姿をあらわしやがれ!」

「いや、そういうのじゃなくて自分の目と耳で見つけようとしてくれ……」

 生き生きしたように周囲を威嚇しながら狩りを始めた少年たちに苦笑して、


「舞奈さん、酷いでやんすよ~~」

「いや、あんたはあんたで少しは鍛えてくれ」

 虚空から聞こえてきた情けない声に、舞奈も思わず苦笑した。


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