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銃弾と攻撃魔法・無頼の少女  作者: 立川ありす
第14章 FOREVER FRIENDS
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再会

 そんなこんなで、連休初日の金曜日。


「……で、なんでまた、この面子なんだ?」

 異郷へと向かう電車に揺られながら、舞奈は集まった面子を見やる。


 朝も早めなせいか、無人の座席の合間には電車がガタゴト走る音だけが響く。

 そんな車内の一角の、舞奈の側には明日香。


「ふふ。そういえば舞奈さんたちと、こうして何処かに行くのは初めてですね」

 向かいでニコニコ微笑むのは、言い出しっぺのソォナム。

 何故か学校指定のセーラー服を着ている。

 業務外の外出はそれで通すつもりなのだろうか?

 そんな彼女の側には、


「よろしくお願いしマス」

 黒づくめのハットリ。

 東トルキスタン出身だという回術士(スーフィー)だ。

 そこまで親しくはないが、ヤニ狩り中の彼女と何度か話したことはある。

 今回は占術士(ディビナー)であるソォナムが遠出するための護衛だと聞いている。


 ウィアードテールが撮影をするというスタジオは、いつか小夜子たちと旅行に行った異郷にあるという。場所はソォナムが知っているらしい。


 なので異郷の駅に着いた4人は、ソォナムの先導で地下鉄とバスを乗り継いだ。

 電車の中の閑散さが嘘のように、異郷の街を行き交う人は量も種類もとにかく多い。


 だが幸いにも(そして珍しく)トラブルもなく、一行は件のスタジオにやってきた。

 巣黒(すぐろ)のオフィス街に似た小ざっぱりしたビルの立ち並ぶ一角の、案内がなければ見落としていたであろう普通のビルだ。


「あいつは撮影のたびに、こんなとこまでひとりで来てやがるのか?」

 だから見直すとかそういう意図はないが。

 苦笑する舞奈を明日香が引っ張って、人の流れを邪魔せぬよう入館する。

 玄関に設えた両開きの自動ドアは【機関】の支部と少し似ていた。


 両脇に控えた守衛に形ばかりの挨拶をしつつ、入館バッチを受け取って、


「……素通りってのはどうなんだ?」

 舞奈は歩きながら、やれやれと肩をすくめる。


 見るに高級そうな背広を着た立場のありそうな人の出入りも多い。

 なのに警備らしい警備もされていない。

 これでは不審者も、要人を狙う危険人物も入り放題だ。

 ……まあ堅気の人が普通に使うスタジオは【機関】支部とは勝手が違うのだろうが。


 だが側の明日香も少し納得いかない様子だ。

 こちらは民間警備会社(PMSC)【安倍総合警備保障】の社長令嬢だからか。

 いや、それが普通の感覚なのか?


 そもそも舞奈たちからして、小学生にセーラー服に黒づくめという怪しい集団だ。

 知人のウィアードテールに会いに来たとはいうものの、アポを取ったわけじゃない。

 もう少し、こう、怪しまれたりとかするものだと思っていたが……。


「まあ、彼らの仲間だと思われたのかもしれないですね」

 ソォナムの言葉に、舞奈は周囲を見渡す。


 玄関ホールには、舞奈たち以上に珍妙な格好をした人々が普通に行き交っていた。

 海兵隊にすね毛の生えた妖精に、妙にマッチョな猫やウサギの着ぐるみ等々。


 なるほど撮影用のスタジオだからか。

 この調子だと不審者をいちいち取り締まっていたらキリがなさそうだ。

 舞奈たちも撮影のためのエキストラか何かだと思われたのだろう。


「キョロキョロしないの。田舎者に見えるわよ」

「で、我らが陽子ちゃんはどこにいるんだ?」

 明日香の小言を聞き流しつつ舞奈が問うと、


「撮影中でなければ、3階の休憩室にいると思います」

 ソォナムが答える。

 彼女も舞奈に劣らぬくらい、キョロキョロ周囲を見回している。

 明日香はこちらはスルーらしい。


 だが舞奈は思わず首をかしげる。


 ソォナムは物珍しさと言うより、何かを探しているような挙動だ。

 あるいは誰かを。

 階段かエレベーターを探しているかと思いきや、奥に巨大な螺旋階段が見える。

 しかも平静を装ってはいるものの、ソォナムの表情はかなり切羽詰まっている。


 だから彼女の視線を意識つつ、視線だけで素早く周囲を見回し、


「3階建てのビルの3階か。あいつらしいや」

 煙となんとかは高いところが好きってな。

 何食わぬ調子で軽口を叩きつつ、


「あっ、勝手にどこ行くのよ」

 ふらりと人の輪を外れる。


 そして別の入り口から入ってきたらしい来訪者に近づいていく。

 ……ソォナムの視線が微かだが注がれた何者かに。


 それは醜く肥え太った団塊男だった。

 脱色に失敗したような汚い色の金髪で、双眸はヤニ色に濁って血走っている。

 背には不格好に膨らんだリュック。

 何故か毒々しい色の液体の入ったバケツを手にしている。


 それでも撮影のエキストラだと言われれば、反論できない。


 そんな金髪の豚の横を、スタジオの職員とおぼしき女性が会釈しながら通り過ぎる。

 豚は振り返って女を見やり、嫌らしい笑いを浮かべる。

 そして女の背中めがけてバケツを掲げ――


「――おっと失礼」

「きゃっ!?」

 舞奈が女を突き飛ばした。

 いっしょに跳んだ舞奈の残像めがけ、見るからヤバそうな液体がぶちまけられる。

 タイルの床を、男の足元を飛沫が汚す。


(灯油かなんかかか?)

 独特の臭いに首をかしげる。


 どうやら彼は、道行く人にバケツの中身をぶっかけようとしていたらしい。

 誰かを狙って? 無差別に?


 訝しむ舞奈を見やり、


「てめぇ!? なにしやがる!!」

 金髪男は激高する。


「そりゃこっちの台詞だ」

 舞奈は一挙動で立ち上がりつつ、腰を落として身構える。

 男の怒声と雰囲気が、舞奈の慣れ親しんだそれだったから。

 そんな舞奈を見やった男は……


「……おいおい、そりゃどんなパフォーマンスだ?」

 背から刃物を抜きはなつ。

 リュックを加工して抜きやすくしていたか。

 ギラリと光る刃の正体は、刃渡りの長い出刃包丁だ。


「な、なんだ?」

「きゃー! 刃物よ!!」

 周囲も流石に異変に気づいて、ざわめきだす。

 驚き戸惑う人々が2人を遠巻きにして後退る中、男は包丁を振りかざし、


「なら、お前から死ね!」

 怒声とともに振り下ろす。


「おっと」

 舞奈は何食わぬ笑みのまま、慣れた調子で跳び退って避ける。

 感覚が鋭く空気の流れを読める舞奈は刀剣による攻撃を完全に無力化できる。


 それ以前に、男の太刀筋は驚くほど稚拙だ。

 新開発区の泥人間の方が数倍マシだ。


 そんな雑魚の中の雑魚が至近距離で吐く息は、間違えようもなくヤニ臭い。

 脂虫だ。

 まあ言動を鑑みれば納得だが。


 だが舞奈は訝しむ。

 くわえ煙草をしていない脂虫と遭遇するのは珍しい。

 何か理由があるのだろうか?


 次いで放たれた力任せの斬撃を右に、左に避けてから、


「……考えとくよ」

「ぐふっ!?」

 狙いすましたハイキックで男の得物を蹴り飛ばす。造作もない。


「このガキ!? 俺の邪魔をしやがって! どいつもこいつも俺の邪魔しやがって!!」

 男は叫ぶ。

 そして今度はリュックからハンマーを取り出す。

 不格好に膨らんだリュックの中身すべてが予備の凶器らしい。


「……ったく、キリがねぇな」

 舌打ちしつつ、周囲に目をやる。

 ここは人目が多すぎる。しかも、


「殺陣か?」

「そんな話、聞いてないぞ?」

 騒ぎを聞きつけてギャラリーが増えつつある。


 対して目前の金髪豚の、凶行の理由は不明。

 バックに何者かがいる可能性は否定できない。

 それが術者である可能性も。


 このまま屍虫にでも進行されたら、いろいろな意味で厄介だ。

 だが衆人環視のこの状況で、首をへし折るわけにもいかない。

 床に叩きつけるなりして気絶させるのが最良か。


「け、警備に連絡を!」

 視界の端で、ギャラリーの何人かが走り出す。


「貴女は下がっていてください」

「あ、ありがとう……」

 明日香は先ほどの女性を退避させつつ、術の射程範囲内に男を収める。

 人目につきにくい斥力場の魔術を行使するタイミングを見計らっているのだ。


 ハットリもさりげなく男の背後に回りこむ。

 回術士(スーフィー)の彼女は、仏術士同様に【心身の強化】を得手とする。

 帳簿上ではBランクの彼女だが、目だった功績をあげてないだけで実力は本物だ。

 今も何時の間に行使したか、身体強化の妖術【強い体(ジスム・カウィー)】の影響下にある。

 こちらもギャラリーの前で暴徒を叩きのめすのに適した術だ。


 しかも黒ずくめの衣服で上手に隠し、両手に黒塗りの偃月刀を構えている。


 ランクの都合で銃を使えない彼女だが、使える得物を最大限に活用する技術はある。

 敵を逃す要素のない構えを見ればわかる。

 得物にレーザー光をまとわせる【熱の刃(サイフ・ハラーラ)】を併用して両腕を落とすつもりだろう。

 あるいは、その後に斬首までする算段か。


 公衆の面前で行われるには余に酷い暴虐。

 だが銃弾や攻撃魔法(エヴォケーション)を叩きつけるよりは穏便だとの判断か。


 一方、仏術士のソォナムは蒼白な顔で攻防を見守っている。

 実戦の経験があまりないのだろうか?


 まあ彼女にはそのまま観客に徹してもらえばいい。

 明日香とハットリのサポートまであれば、余裕で金髪男を無力化できる。


 舞奈はソォナムをかばうように、さり気なく移動する。

 男は舞奈の静かな動きに注視する。途端、


「!?」

 舞奈は一瞬で男との距離を詰める。

 そのまま投げ飛ばす。

 勢いで先ほどの液体溜まりに片足をつっこみ、だが体勢を整える。


「ぐおっ!」

 男は頭から床に激突する。

 だが気絶させるには至らなかったようだ。

 男はうめきながらも立ち上がり、今度は懐から何かを取り出し――


「――!?」

 ソォナムが男に向かって何かを投げた。

 数珠だ。


 次いで懐から大頭を取り出し、施術する。


「おい正気か!?」

 こんな人前で大魔法(インヴォケーション)を!?


 驚く舞奈の前で、男は手にしたライターに火をつけ――


「――!?」

 爆発。

 男の半径数メートルが、球形の炎の色に塗りこめられる。

 一瞬だった。


 障壁の内側が爆発した――否、ソォナムが爆発を封じこめたのだ。

 男に向かって投げた数珠を中心に、障壁の術【不動行者加護法アチャラナーテナ・ラクシャ】を行使して。


 奴はあんなに燃えたのに、間近にいる舞奈がまったく熱を感じない。

 使い切りの魔道具(アーティファクト)で障壁を大魔法(インヴォケーション)レベルに強化したからだ。

 普通の施術ではない。


「……なるほどな」

 ふと舞奈は思いだす。


 以前にチャビーを奪還すべく、滓田妖一たちが潜む賃貸ビルを合同部隊が強襲した。

 着流しは事前に奈良坂が蜂の巣にした(らしい)。

 巨漢は鷹乃が首をはねて倒した。

 甲冑はプロートニクの協力を得てハニエルが倒した。

 滓田妖一本人もグルゴーガンの援護の元、鷹乃が倒した。

 だが誰から何度、話を聞いても敵がひとり『いつの間にか』消えている。


 居並ぶ魔道士(メイジ)たちに気づかれずに、そんなことが可能な者はだれか?

 そういうことが可能な者がいたとするなら、それは敵味方すべての動きを把握し、その合間を縫うように最大の脅威だけを排除できる人間だ。


 そんなことを考えながら、ちらりと側のソォナムを見やる。そのとき、


「みなさん! ここは危険です!」

「早く避難を!」

「こちらです。さあ、どうぞ」

 警備の人間がやってきたらしい

 3人の女性が、手際よくギャラリーの退避を促す。

 聞き覚えのある声に思わず見やり――


「――!?」

 驚いた。


 ひとりはサングラスをかけたコートの女。

 ひとりは深編笠(ふかあみがさ)をかぶった行者。

 ひとりは地味な身なりの婦警。


 それは猫島朱音、フランシーヌ草薙、最後のひとりはKAGEと言ったか。

 公安の術者たちだった。


 そして朱音は唐突に舞い踊り、施術を始める。


「うぉ、なんだなんだ?」

 舞奈が困惑しつつも、その咒が地天(プリティヴィー)を奉ずるものだと気づいた途端、


「……?」

 周囲のあちこちから何かが出現した。

 それは滑らかな液体でできた糸のようだった。

 その毒々しい色は、男が先ほどまき散らしていた液体に似ていた。


 大地を操る呪術によって、空気から毒々しい色の水(?)が生まれていく。

 それは空中を流れ、朱音の足元に置かれたジェリ缶に入っていく。


「……あれ、ガソリンよ」

 明日香がボソリと言った。

 その表情は、何かを察して強張っている。


「気化したガソリンを、大地を象徴する地天(プリティヴィー)の咒で回収してるんだと思う」

 なるほどガソリンは石油を精製したものだから、大地の呪術で操るらしい。

 そんなことができるのも、彼女が熟練の術者だからだろう。


 そして舞奈も気づいた。


「……てことは、この野郎、ガソリンをまいて火をつけるつもりだったのか」

 見えざる円形の障壁の中で黒焦げになった男を見やる。

 そんな舞奈の表情もまた少しばかり強張ったのは、Sランクでも仕方がない。


 ガソリンは灯油と違い、容易に気化して周囲に充満すると聞いたことがある。

 そして着火すると急速に燃焼する。

 ガソリンが染みた空気そのものが爆発するのだ。

 つまり気化爆発――小夜子の【捕食する火(トレトルクゥア)】に似た状況だ。


 そんなものが周囲一面の空気に紛れていた。

 そう思うと背筋が冷える。


 そして思わず自分の足元を見やる。

 先ほど踏んだガソリン溜りも朱音に回収されて無くなっていたので、ほっとする。


 一歩間違えば……否、ソォナムがとっさに反応しなければ周囲一面が火の海だった。

 ギャラリーたちも、仲間たちも、舞奈自身も炎に飲まれていた――


 ――それすら否。そんな生易しいものじゃない。


 舞奈は鋭敏な感覚によって、空気の流れに気づいた。

 そして口元を歪める。


 玄関から奥の螺旋階段に向かって心地よく風が流れている。

 ここで大規模な気化爆発など起きたら、爆炎と熱は風に乗って全階層を駆け抜ける。

 言うなれば大魔法(インヴォケーション)虐殺する火(トレトルミクティア)】と同じ状況だ。


 その結果、建物全体が、その中にいたほぼ全員が焼き尽くされていただろう。

 目前の、髪の色どころか前後すらわからない男のように。


 なるほど、ソォナムはそれを阻止するために、ここに来たのだ。

 そう考えれば納得がゆく。

 何故なら彼女が選んだ同行者は、支部最強のSランクとその相棒。

 そして造物魔王(デミウルゴス)の魔力を身体に蓄えた回術士(スーフィー)ハットリは熱光の化身だ。

 最悪の事態になったとしても彼女だけは灼熱の中で生き残り、活動できる。


「協力に感謝する。おかげで大惨事を回避できた」

「こっちこそ、後始末ありがとう」

 どうやら呪術によるガソリンの回収作業は無事に終わったらしい。

 舞奈と朱音――かつて別の場所で死闘を繰り広げた少女と女刑事は、今度は笑みを向け合って握手した。

 なぜなら今の舞奈たちに、公安と揉める理由はない。


「それにしても、どうやってこのことを?」

「こっちの支部には、頼もしいブレーンがいるのさ」

 朱音の問いに笑みを返しつつ、側のソォナムを見やる。

 先ほどまでは顔面蒼白だった彼女も、今は少し落ち着いた様子だ。


「あんたが何を預言で何を『視た』のか知らないが」

 舞奈は飄々とした口調と表情を意識しながらチベットの少女に笑みを向け。


「……もう終わったんだ。あんたが終わらせた。ひとりの犠牲も出さずにな」

 彼女を励ますように、力強く語りかける。

 彼女も「はい」と笑みを返す。


「で、そっちもやっぱり、こいつをマークしてたのか?」

 次いで公安たちに顔を戻し、黒焦げ男をあごで指しつつ問いかける。だが、


「それもあるが……」

 朱音は何かを答えかけ、


「……まあ、そんなところだ。こちらにも情報収集の手段はいくつもある」

「そっか」

 言葉を濁す。


 訝しむ舞奈だが、まあ彼女らと一度は戦ったものの、今や敵対関係ではない。

 それが有力な諜報手段を持っているのは悪いことではないだろう。

 そう思ったその時、


「あー! あんたたち!!」

 螺旋階段の上から、長髪の女子中学生が駆け下りてきた。

 肩に乗ったハリネズミが礼儀正しく一礼する。

 ウィアードテールの正体、陽子ちゃんだ。

 彼女の無事を喜びつつも、


「また面倒なときに、面倒な奴が来たなあ」

 やれやれ。

 どうやってこの察しの悪そうなバカに、状況を説明しようか考える。だが、


「この犯人っぽい黒い人が何かしようとして、あんたがやっつけたってことね! なかなかやるじゃない!」

「なんでこんなときだけ! 察しが良いんだよ!」

 それに犯人だから黒いわけじゃないだろ、こいつ。

 舞奈は思わずツッコんだ。


 そして今日ここに来た(舞奈にとっての)理由を思い出す。


「じゃあ犯人逮捕の御褒美に、ひとつ頼みを聞いちゃあくれないか?」

「あんたの頼み? んふー! 良いわよ!」

 申し出たところ、陽子は鼻の穴を膨らませて喜んだ。


 どうやら頼みごとをされたことで上位に立てたつもりらしい。

 よかったよかった。


「あんたのサインが欲しいんだ」

「んふー! んふー! あんた、あたしのファンなの? もー素直に言いなさいよー」

 とても人には見せられないような下品な顔で大喜びする。

 あの時けちょんけちょんにのされた相手に、サインをねだられたのが嬉しいらしい。


「友達がな」

 さすがに口元を歪める舞奈に、


「良いセンスしてるじゃない! さすがね、その友達!」

 ウィアードテールの中の人はニコニコ笑って階段へと向かう。

 そんな彼女の背を追いながら、舞奈も笑う。


 旅先での騒動と、腹の探り合いの後で、こういう能天気な再会も悪くない。

 今は素直にそう思った。


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