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銃弾と攻撃魔法・無頼の少女  作者: 立川ありす
第2章 おつぱいと粗品
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依頼 ~クラスメートの警護

 そして翌朝のホームルーム前。


「お腹すいた……」

 舞奈は学校机につっぷしていた。


 結局、昨日の晩飯は悟に貰った胃腸薬になってしまった。

 だから、腹が悲しげに「ぐぅ」と鳴った。


「マイちゃん、おはよう」

 声をかけられた。ちらりと見やる。

 かすかな甘いミルクの香りとともに長身のワンピースが目の前を通るところだ。

 舞奈はひょいと手をのばす。


「きゃっ!?」

 バレッタでハーフアップにしたふんわりボブカットの髪が揺れる。

 大人びたオレンジ色のワンピースが、両手でお尻を押さえて向き直る。

 大ぶりなメロンを思わせるふくよかな胸が、衣服の下でぷるるんっと揺れる。


「おはよう」

「もうっ、マイちゃんったら」

 大人しげな長身巨乳は、口を尖らせ頬を赤らめた。


 真神園香。あだ名はゾマ。

 早熟なナイスバディをちょっぴり気に病むクラスメートだ。


「あんまり可愛いお尻だったから、つい」

 口元に笑みを浮かべ、悪びれもせずに言う。常習犯である。

 そんな舞奈を、園香は何やら言いたげにもじもじと見つめている。


 舞奈はあせった。

 嫌がる様子もないので、スキンシップを重ねていた。

 だが、彼女なりに思うところがあったのだろうか。

 引っこみ思案な彼女が直接に文句を言うなど相当なことだ。


「その……なんだ。本気で嫌だったんなら、スマン……」

「そ、そんなんじゃないの! それはぜんぜん良いの。そうじゃなくて……」

 園香はとっさに否定した。

 舞奈は安心した。だが、


「あのね。最近、だれかに見られてるみたいなの」

 園香は深刻な面持ちで言った。


「見られてる?」

「うん。学校の行き帰りとか、お家にいるときにも窓の外から視線を感じて。最初は気のせいかなって思ったんだけど……」

 だがやがて、気のせいなのではなかったと悟ったらしい。


 知らない何者かが、ずっと自分を見ている。

 舞奈なら気にもならないが、一般的な女子小学生にとっては恐怖だ。


 だが、それも無理もないなと舞奈は思う。

 彼女の容姿は否が応でも人目を引く。

 友人のすらりとした長身に、年不相応にふくよかな胸、キュッとくびれたウェストからすべやかで張りのあるヒップへと続くなだらかな曲線を、思わず見やる。


「まったく、けしからんな」

 自分のことは棚に上げてそう言う。

 そんな舞奈に、園香はさらに差し迫った問題を告げた。


 留守がちな両親が揃って家を空けた昨晩、家の周囲を何者かが徘徊していた。

 恐くなった園香は厳重に戸締りをして両親の部屋で一夜を過ごし、今朝は遠回りして大通りを通って登校したらしい。


「それでね、お父さんとお母さん、明後日まで家にいないから……」

 園香はすがりつくような目で舞奈を見つめる。


 彼女を見つめる不審者とやらが、今晩もあらわれることを恐れているのだろう。


 そして、そういった状況で舞奈に頼るのは不自然なことではない。

 別に【掃除屋】だ怪異退治だと吹聴しているわけではない。

 だが、彼女とは2年生の頃からの付き合いだ。

 飄々(ひょうひょう)としたツインテールの友人がもめ事に強そうなことくらい気づくだろう。


「じゃ、お泊り会は今晩ってことでいいか?」

 舞奈はニヤリと笑う。

「……いいの? 良かった! マイちゃん、ありがとう」

「いいってことよ。可愛い友達の頼みだからな」

 言いつつ、メロンのように大きな胸を盗み見て舌なめずりする。

 両親が留守がちなせいか、園香は料理が上手い。


「だんごー、らんこー、だいらんとー、みんな仲よくおとまりかーい!」

 唐突に聞こえた素っ頓狂な歌におどろき、足元を見やる。

 いつの間にか、エプロンドレスの少女がゴロゴロと転がっていた。


「何やってんだよ、みゃー子。……おまえも来るか?」

「来なーい!」

 一挙動で立ち上がり、そのまま走り去った。

 舞奈は園香と呆然と顔を見合わせた。

 みゃー子の言動は、いつだって意味不明だ。


 そして放課後。


「明日香。今晩、ゾマん家に泊るぞ」

「……お盛んなことで。どうぞご勝手に」

 人数が多いほうが園香も安心だろうと、明日香を誘ってみた。

 その答えがこれだ。


「おまえも来るんだよ」

「わたしにそういう趣味はないわよ」

「いや、だからな……」

 何か勘違いしている様子の明日香に懇切丁寧に事情を説明し、クラスメートのために一肌脱ぐ気になるまで説得して、


「そういう事なら」

 同意を得た。その時、

「マイ! マイも今日、ゾマの家に来てくれるの?」

 舞奈が幼女に声をかけられる事例が発生した。


 ――否。

 ツインドリルをひょこひょこ揺らす彼女の名は、日比野千佳。

 あだ名はチャビー。

 こんななりでも立派に舞奈の同級生だ。そして園香の友人でもある。

 園香と家も近いし、今晩は彼女も泊るのだろう。


「おう。あと明日香もな」

 舞奈の言葉に、元気なチャビーは黒髪眼鏡に向き直る。

「安倍さんも来てくれるんだ! やった! 楽しくなるね!」

「ええ、まあ、どうも」

 やや戸惑い気味にうなずく明日香を前に、本当にただのお泊り会と勘違いしてるのではなかろうかというくらいにはしゃぐチャビー。

 その背後に長身の少女が立った。園香だ。


「チャビーちゃん、マイちゃん、おまたせ。明日香ちゃんもありがとう」

 丁寧にそう言って、ちょこんと頭を下げる。

 園香とチャビーがそうやって並ぶと、まるで親子だ。

 そんな2人と明日香に向かって、


「あたしは着替え持ってくるから、おまえらは先に行っててくれ」

 そう言って笑いかけた。


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