討伐1 ~討伐部隊vs魔獣
「いやーまったく、こんなところで奇遇だなー」
「……ここでその台詞を言う必要があるの?」
わざとらしく笑う舞奈を、側の明日香がジト目で見やる。
明日香の頭上には黒いつば付き三角帽子。
肩には髑髏の留め金がついた戦闘クローク。
「ふふふ、本当ですね。折角ですので助太刀いたしましょうか」
「いや、姉さんもノらなくていいから……」
微笑む楓に、呆れる紅葉。
舞奈たちの側を、仕事人【メメント・モリ】の桂木姉妹が歩いている。
凛々しい紅葉の頭で、以前と変わらぬポニーテールが揺れる。
姉の楓は件の黒ぶち眼鏡に、ゆるく編んだ長い髪。
彼女らは生命と風水地のエレメントを操るウアブ呪術師と魔術師だ。
その後ろには、うかうかと歩く【鹿】こと奈良坂。
これでも【心身の強化】を得手とする仏術士の彼女は、【孔雀経法】の妖術でマンティコアの魔力に引かれた雑多な怪異の奇襲を警戒している。
だが彼女の様子を見ていると、術も効いているか不安になってくる。
そんな様子を何か言いたげに見やっているのは技術担当官ニュット。
糸目の彼女は、通常は現場には出てこない。
彼女は兵站を始めとする複数の重要な業務を抱えているし、多芸な彼女を戦闘で損耗させるわけにはいかないからだ。
だが今回の作戦には、そんな彼女が参加している。
それだけ魔獣の討伐という任務が特殊であるということだ。
彼女の流派はルーン魔術。明日香の戦闘魔術と同様に破壊のエネルギーを操る。
その側には陰気な【デスメーカー】小夜子に、巫女装束の【思兼】サチ。
小夜子は脂虫を贄にして同胞を強化するナワリ呪術師だ。
対してサチは、清らかな力で防護する古神術士である。
そして諜報部に所属する異能力者の少年たち。
そうそうたる顔ぶれは、マンティコア討伐の為に集められた攻撃部隊だ。
少年たちが囲むのは、脂袋が積まれたリヤカー。
脂袋の中には、事前に彼らがかき集めた脂虫が詰めこまれている。
煙草の悪臭を放つ邪悪な怪異を生贄として効率的に運用すべく、凝固剤を処方して四肢をもぎ、袋に詰めて運送するのだ。
そんな袋詰めの汚物が、リヤカーの荷台でガタガタ揺られて不気味に蠢く。
リヤカーを引いているのは2柱のメジェド神。
楓が召喚するメジェド神は、通常の式神と違って術者の負担なしにかなりの長時間、現世に留まることができる。
なので荷物の運搬に用いることも可能だ。さらに、
「わっ! て、敵が、横……3時から……!!」
奈良坂が叫ぶ。
同時に銃声、奇音。
一行の右手に、大型の狼に似た3匹の怪異があらわれた。
毒犬である。
新開発区によくいる【偏光隠蔽】を使う怪異だ。
だが2匹は胴を焼かれ、1匹は眉間を穿たれていた。
「――らしいな」
ひとりごち、舞奈は拳銃の銃口から立ちのぼる煙を吹き消す。
奈良坂が警告する前に、毒犬の接近には気づいていた。いつものことだ。
そして2体のメジェドもまばたきしてレーザー照射の余韻をはらい、消えゆく怪異から目をそらして荷物の運搬に戻る。
メジェド神は式神の耐久性と反応速度を持つ。
さらに目からレーザー光線を放つことができる。露払いにも最適だ。
それに身長の7割ほどが脚だからか、走るとかなり速いらしい。
明日香は小型拳銃を、ニュットは短銃身の短機関銃を下ろす。
ルーン魔術師は衣服に刻んだルーンを媒体に、魔術師としては例外的に付与魔法である【強身】を使える。身体を機械化することで短時間だけ強くなる魔術だ。
楓と紅葉、小夜子とサチも構えを解く。
彼女らの反応速度は普通に人間並みなので、奈良坂の警告に反応して構えていた。
「おや鹿殿、敵はどこですかな?」
「いえ、その……」
「そこにいたんだけど、閣下のメジェドと舞奈ちゃんが倒したんだよ」
「おお! さすがは舞奈殿。目にも止まらぬ早業ですな」
警告にかなり遅れて反応した異能力者たちが、得物を構えたまま呑気に雑談する。
木刀や折り畳み式の槍の穂先を、異能の炎や稲妻が覆う。
諜報部に属する異能力者の少年たちは、全員がどんくさい。
しかも野暮ったい。
痩せていたり太っていたり筋肉質だったりと背格好も様々で、顔立ちもわりと特徴的なのに、とりたてて注視したいとは思わない。
反面、いちおうは礼儀正しいし、野性味もないので隣にいても危機感とかはない。
ありていに言うと、どうでもいい感じの人たちだ。
そんな地味な人生を歩んでそうな彼らだが、諜報部員としては得難い人材なのかもと舞奈は思う。楓の【消失のヴェール】を常に使っているようなものだからだ。
なんにせよ、彼らに戦闘の資質は求められていない。
彼らの仕事は数を頼りに異能を叩きつけ、魔獣の魔力を削り取ることだ。
好都合なのは、彼らが自分の役割を理解していることだ。
魔術と銃弾が飛び交う現代の戦場で、剣や槍を得物とする剣士や異能力者は雑魚以下の戦力外だ。敵と真正面から相対すれば死ぬしかない。
その事実を、彼らは正しく認識している。
流石は諜報部と言ったところか。
だから顕示欲に駆られて先走ることも、ありもしない力を過信する反動で魔法を過小評価することもない。
なので、腕にはサチの呪術に使う注連縄がしっかり巻かれている。
そして頭には小夜子の術に使う猫耳カチューシャ。悲惨なほど似合っていない。
歩くうちに、ビル壁に毒々しい色のペンキがぶちまけられているのを見つけた。
ペイント弾によるものだろう。
ニュットの指示で一行は止まる。
「これよりマンティコア出現ポイントに差し掛かるのだ。準備するのだよ」
ニュットの指示に、異能力者たちはノリよく返事する。
彼らに必要な準備はない。
大柄な少年が、荷台から脂袋をひとつ放り落とす。
小夜子は神への祈りを捧げつつ、袋の中の脂虫を拳銃で射貫く。
脂虫は断末魔とともに解体され、心臓だけは黒いもやとなって袋の外に漏れだす。
中身を失った袋はしぼむ。
もやは魔力と化し、小夜子自身と執行人たちの身体に飲みこまれる。
「おおっ! 身体に力がみなぎってきたぞ」
「デスメーカー殿、流石でござる!」
身体強化の呪術【ジャガーの戦士】は脂虫を贄にすることで、猫耳カチューシャをつけたグループ全員を強化することができる。
「……なぜ鹿ちんまで強化されているのだ?」
「え、でも、みんなに防御魔法と付与魔法をかけて殴るって……」
「皆にかけるのは防御魔法だけなのだ。鹿ちんは自力で強化できるのではないか」
ニュットは糸目を歪めて呆れる。
異能力者たちに施される付与魔法はマンティコアを削る作業を効率よく行うためで、無力化する魔道士たちは関係ない。
事前のミーティングで話があったはずだが、聞いていなかったらしい。
「ううっ、すいません……」
奈良坂はしょんぼりうなだれる。
そんな彼女を見やって苦笑する舞奈の前で、サチが唱えていた祝詞も完成した。
空気の流れが変わる。
執行人たちの周囲に次元断層を利用した透明な障壁が形成されたのだ。
「サチさんもやるねぇ、本当に全員に障壁をつけられるのか」
サチの【護身神法】は攻撃部隊の全員に施されることになっている。
なので舞奈は自身の腕にも結ばれた注連縄を見やる。
対象者の危機を察知して防護するという個人用サイズの障壁の使い勝手を確かめながら、荷台の片隅に積まれたスナイパーライフルを手に取る。
明日香も自分のスナイパーライフルを手に取る。
小夜子は身体強化を利用して対物ライフルを持ち上げる。
準備を終えた一行は進軍を開始する。
そして数分も歩かぬうちに――
「みなさん! 敵です! 上空の、じゅう……えっと、前から!」
奈良坂が叫ぶ。
「あそこだ!」
舞奈が指さす先の空に、鳥のような小さなシルエットが浮かんでいた。
目の良い舞奈だから見える距離だ。
影はどんどん大きくなる。
すぐに有効射程に到達するだろう。
「こちら【思兼】。目標を発見。交戦状態に突入するわ!」
「諸君、マンティコアとの接触に備えるのだ!」
サチの通信、ニュットの号令とともに、各々が手近な廃ビルの陰に身を隠す。
マンティコアが得意とする斥力場の弾丸の掃射を防ぐためだ。
奈良坂は自身の術による強化を重ね、リヤカーを担いで退避させる。
舞奈と明日香、小夜子はそれぞれの得物を、楓はウアス杖を構える。
僅かの間に、魔獣は視認できる距離まで接近していた。
高度を下げ、翼でビル壁をえぐりつつ廃ビルの合間を縫うよう飛ぶ。
テリトリーへの侵入者を探しているのだろう。
「来やがったな」
スナイパーライフルの射程ほどの距離から、小さくだが肉眼で視認できる。
魔獣のサイズは大型トラック以上。
下手をすれば小屋ほどか。
あまりの巨躯に、流石の舞奈も圧倒される。
「……けど、そのくらいのほうが撃ち甲斐があるってもんだ」
舞奈はニヤリと笑みを浮かべる。
廃ビルの陰から跳び出し、斜めに崩れたビル壁を駆け上がる。
スナイパーライフルを素早く構えて撃つ。
明日香は【氷盾】で召喚した4つの氷塊を連れ、狙撃地点を目指して走る。
「我が瞳に宿れ! 左のハチドリ!」
小夜子は視力を強化する【鷲の目】を用いつつ、対物ライフルを撃つ。
どちらの弾頭にも仏術の咒が刻まれている。
舞奈たちの誰かが当てれば奈良坂の補助魔法でマンティコアの五感を奪える。
だが照準の中で、2発の弾丸は魔獣に届く寸前で弾かれて落ちる。
魔獣の周囲に張り巡らされた斥力場障壁に阻まれたのだ。
舞奈が舌打ちするうちに、マンティコアは普通に視認できる距離まで接近する。
その容姿は猫科の大型猛獣に似ている。
しなやかで野性的なフォルムと縞模様の茶色い毛並みは、美しいとすら思える。
鳥のそれのように見えた黒い羽は、斥力場で形成された飛行器官だ。
そして同じ色をした尾の先端は、先ほどのお返しとばかりに3人に向けられていた。
明日香と小夜子は廃ビルの陰に身を隠す。
舞奈も足元にあった窓に身を滑らせる。
同時に、以前の奇襲と同じように斥力の弾丸が掃射された。
無数の力場がビル壁を穿つ。
ビルの隙間から露出していた明日香の氷塊のひとつが砕かれ、破片と化して消える。
舞奈も目前の壁が崩れてぎょっとする。
だが瓦礫も流れ弾も、見えざる障壁にはじかれて落ちる。
「さんきゅ、サチさん」
左手に結んだ注連縄に笑いかける。
「これから障壁を無力化するのだよ!」
ニュットは廃ビルの陰から身を乗り出し、数枚の金属片を投げる。
そして「巨人」と唱える。
すると金属片は塵と化し、白く輝く力場の刃となる。
逆位置の【巨人】のルーンを斥力場の斬刃と化す【斥力刃】。
力場の刃はマンティコアめがけて飛ぶ。
魔獣を覆う不可視の障壁と干渉し、相打ちになって消える。
マンティコアは唸り声をあげて怯む。
防御魔法を無理やりに消されて衝撃を受けるのは人間の魔道士と同じだ。
「今なのだ!」
ニュットの号令を背に、舞奈はビル壁の窓から跳び出す。
斜めになった廃ビルのてっぺんでスナイパーライフルを素早く構え、撃つ。
大口径ライフル弾は阻まれることなく魔獣の腹に吸いこまれる。
だが効いた様子がない。
明日香と小夜子も廃ビルの陰から半身を乗り出して撃つ。
だが2発の弾丸は宙を穿つ。
障壁を破られたマンティコアが高度を上げ、回避行動をとり始めたのだ。
舞奈は舌打ちする。
いかに大きいとはいえ相手は空を飛んでいる。
そこで飛び回れたら攻撃機や戦闘ヘリと戦っているようなものだ。
普通の射手が当てようとしても、機関銃でもなきゃ無理だ。
小夜子の超大口径ライフル弾は当たらないと考えるべきだ。
そして魔獣の表皮は予想より強固だ。舞奈の大口径ライフル弾は効かない。
だから舞奈は驚異的な動体視力に物を言わせて顔面に1発くらわせ、マンティコアが怯んだ隙に廃ビルから身を翻す。
「小夜子さん、借りるよ!」
「あっ……」
小夜子の手から対物ライフルを奪い、片膝をついて力任せに上空を狙う。
舞奈はこの銃を、3年前にも撃ったことがある。
だが魔法のドレスを着こんで持った記憶の中のそれより、15キロを超える対物ライフルは重かった。
「舞奈ちゃん、持ってるね」
「……すまない」
自前の呪術で強化されている小夜子が二脚の根元を持って支える。
一方、明日香は機関砲を設置し、上空へと掃射させていた。
戦闘魔術師は【物品と機械装置の操作と魔力付与】で、兵器を模した式神を創れる。
飛んでいるから当たらぬとは言え無数にばら撒かれる超大口径ライフル弾に、魔獣の注意がそらされる。
「明日香の奴、戦争おっ始めるつもりか?」
そう言って舞奈は笑う。
明日香も舞奈が気づいたのと同じ事実を悟り、舞奈の意図を察した。
だから牽制に専念するつもりなのだ。
さらに明日香自身もスナイパーライフルを構える。
咒とともに側面に刻まれたルーンが輝き、衝撃波を伴う強力な一撃が放たれる。
弾頭に斥力場をまとわせた一撃を、魔獣は身をよじって避ける。
その隙を、舞奈は見逃さない。
3年前から失ったピクシオンのドレスの力と引き換えに、より研ぎ澄まされた射撃の勘と経験、集中力を動員して狙いを定める。
引き金を引く。
銃声。
反動の半分は小夜子が肩代わりしてくれる。
そして超大口径ライフル弾は、あやまたずマンティコアの土手っ腹を穿った。
魔獣は痛みに叫び、身をよじる。
式神と同じ身体を持つ魔獣の傷はたちどころに癒える。
だが体内に弾丸が残っていればこっちのものだ。
「奈良坂さん、今だ!」
「は、はひっ!」
相変わらず聞いているほうが不安になる返事を返し、奈良坂は廃ビルの陰で印を組んで咒を唱える。
即ち【摩利支天神鞭法】。
対象を透明化のフィールドで裏向に覆い、五感を奪う妖術だ。
マンティコアの身体がふらつく。
方向感覚を失って高度を維持できず、斜めに落下する。
奈良坂の人となりはあんなだが、妖術の腕前は並以上だ。
魔獣はデタラメに飛び回り、巨体を廃ビルにぶつけて破片を散らす。
地上の執行人たちがあわてて伏せる。
「明日香ちん! あちしらも続くのだよ!」
「オーケー!」
魔力の弾丸を放った後の疲労を意志力で抑え、明日香は不動明王の咒を紡ぐ。
ニュットは擲弾拳銃に持ち替えて構える。
そして体勢を立て直そうともがく魔獣めがけて撃つ。
放たれた弾頭に刻まれたルーンが光る。
「妨害!」
魔術語とともに、明日香の掌から黒い球体が放たれる。
「巨人!」
ニュットの魔術語とともに、マンティコアの直下の地面が黒く染まる。
明日香の黒球も同じ場所で爆ぜ、ニュットの魔術とともに地面を染める。
光が飲みこまれてできた2つの闇の手が、空飛ぶ魔獣を引きずり降ろそうと天に向かって伸びる。
正位置の【巨人】により重力場を生みだし対象を拘束する【重力掌】。
同じ効果を真言と魔術語で再現した【力獄】。
2人がかりの魔術による拘束で、マンティコアは地上に引き寄せられる。
重力場が魔獣の翼を構成する斥力場と干渉し、火花を散らして消える。
斥力の弾丸を放つための尻尾も消える。
浮力を失った魔獣が落下し、地面に叩きつけられる。
轟音。
衝撃。
小屋ほどもある巨体が瓦礫まみれの地面を揺るがす。
魔獣は怒りの咆哮をあげ、巨体でビル壁を削りながらもがく。
その破壊の権化のような巨獣の姿、それを拘束せしめた魔法の力に異能力者たちは圧倒される。
だがニュットは怯むことなく叫ぶ。
「このまま完全に拘束するのだ! 楓ちん! 紅葉ちん!」
「わかってる!」
「承知しました」
桂木姉妹もビル壁の陰から跳び出し、呪文を唱える。
奈良坂は矢継ぎ早に印を結び、咒を唱え、無力化の妖術を維持している。
明日香も次なる真言を唱え、ニュットは数枚の金属片を投げる。
そして再び魔術語。
金属片がはじけて氷の棘と化し、マンティコアの四肢を地面に縫い止める。
明日香の掌から放たれた氷塊が魔獣の胴に当たり、氷の顎と化して拘束する。
即ち【氷棺】、そして【氷獄】。
明日香の魔術は以前に使った【氷棺・弐式】の上位にあたる範囲拘束の術だ。
次いで桂木姉妹の術も完成する。
魔獣の四肢を縛める氷の棘と並ぶように、岩石の枷が魔獣の身体を固定する。
さらにアスファルトの地面を割いて岩でできた巨大な手が出現し、岩石の枷と溶け合って不動の檻と化す。
大地を統べるゲブ神のイメージから岩石の枷を創り出す【石の障礙】。
以前に舞奈との戦闘で用いられた、地面を手にして拘束する【地の拘束】。
魔術師と呪術師の姉妹は協力し、強力な岩石の拘束具を生みだした。
マンティコアは咆哮をあげる。
だが4人がかりの魔法で拘束された身体は動かない。
背と尻尾に重力操作の兆候である空間のひずみが生まれ、景色が歪む。
だが、それだけ。
ニュットと明日香の【重力掌】【力獄】が、重力を操るマンティコアの大能力を相殺しているのだ。
「こちら【思兼】。目標の無力化に成功!」
「総攻撃なのだ!」
ニュットの合図と同時に、異能力者たちが廃ビルの陰から跳び出す。
そして異能力を発動させる。
何人かは【雷霊武器】【火霊武器】で得物に炎をまとわせる。
凍てつく冷気で包む【氷霊武器】もいる。
何人かは筋肉を膨張させ、うち何割かの服が破裂する。
身体を強化する【虎爪気功】【狼牙気功】だ。
魔力の武器を持たぬ彼らの指先から小夜子の魔力があふれ、【霊の鉤爪】の輝くカギ爪を形成する。
そして彼らは動けぬ魔獣めがけて走りながら、ときの声をあげた。