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閑山自撰詩篇

一万と一日その辺り

作者: 竹井閑山

『一千一秒物語』で知られる作家

稲垣足穂が住んでいたという辺りを

去年までタクシードライバーだった私は

車で何度も走っている

それは宇治上神社辺りであったり

乃木神社辺りであったり

タルホはその後娘夫妻の家に移ったのだけれど

そこは京阪桃山南口駅辺りだった


いまから四半世紀以上むかし

私はタルホの娘が結婚パーティーを開いたという

喫茶サントスを訪ね

ココアを一杯注文している

店は初老の女性が切り盛りし

ココアが出てくるのに二十分待たされた

小一時間ほどくつろいでいたが

客は一人も来なかった


十年後 私は郵便局員となり

あるとき喫茶サントスに封書を届ける

ぶ厚いサイズの郵便だったので

直接受け取ってもらわねばならず

インターホンを何度か押したが

家人はなかなか現れず

その場を離れようとした そのとき

女店主が顔を出した


ずいぶんむずかしい顔をして

封書をあらためるまでもなく

何でいつもいつも

こんなものを送ってくるのかと

私に当たり始めるので

慌ててその場を取り繕い

次の配達先へ向かった

店はもう閉めている様子だった


その建物はサントスビルといって

京阪三条駅辺りにあったが

まもなく取り壊しになったので

私はいまこれを書いている

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