河原決戦
「強くなったな猫氏」
「猫も強くなってるんだにゃ!必殺猫きっくでおしまいだにゃ!」
もう既に僕がついた頃には決着がつきそうだった。猫ちゃんも熱血漢もボロボロである。というか、熱血漢の方は左腕が無い。地面に破片らしい物も見える。猫ぱんちか猫きっくで砕かれたのだろう。つえー猫ちゃん。
「ふっふっふっ。苦戦しているようだな熱血漢」
「むっ高山氏どうしたのだ?」
「僕っち珍しいにゃ。何しに来たにゃ?」
「厨二電波女が教えてくれてな。いたいけな幼女が熱血漢に襲われていると!」
「また狐氏に冷たくあしらわれたのだな」
「う、うるさいっ!別に狐ちゃんに嫌われたのが、悲しくて猫ちゃんに慰めて貰いたいとか、鬱憤ばらしに機械男を川に不法投棄しようとか、そんな事微塵も考えてないんだからな!」
「本音がだだ漏れだにゃ僕っち」
「まぁそっちが2人ならこちらも1人増援を呼んでタッグを組むとしよう」
熱血漢はポケットから笛を取り出し、ピーっと吹く。なるほどなそう来たか。
砂煙を上げて全力ダッシュしてくるではないか。
「おいこのショタコン熱血漢。まさか犬男を使うのか。お前は正気か。お前ら超常現象どもの別次元バトルに俺みたいな常人が混ざるんだぞ。さすがに犬男はないだろう」
「高山氏怖気付いたのか?猫氏にかっこいいところを見せたいのだろう?」
「くっむごいなこいつ熱血漢のくせに……」
「へっ機械の兄貴、まさか俺の相手は猫とロリコンの兄貴ってか?ハンデが過ぎるぜ」
こいつ舐めた口を聞きやがる。河原に埋めてやろうかこの野郎。
ふっだがな俺もバカじゃない。無策でこんな超常現象どもに勝てるとは微塵も思っていないさ。
秘策を使ってやる。
「おいショタ犬今貴様は僕を侮辱した。どうなるかわかっているのだろうな?」
「うっわ今日一番のゲスマイル見ちまった!てかありゃなんか良からぬ事を考えてる顔ですよ機械の兄貴」
「あぁ何か今日の高山氏の顔はいつもに増して邪悪だからな。一応警戒しておけ」
「了解。まぁメインは猫だし、いくら猫とはいえ、機械の兄貴と2人で挑めば勝てない事もないはず!」
まったく舐められたものだ。
僕は手提げカバンのチャックを少し開け開く。そしてカバンを前に構えて、猫ちゃんに耳打ちをする。
「よし猫ちゃん僕が前衛で囮になる。隙をみて攻撃してくれ」
「僕っち大丈夫かにゃ?ロボっちの攻撃の重さは兎も角、犬っちの速撃はたぶん僕っちには避けれないにゃ」
「心配するな。猫ちゃんはただ一撃で敵をお見舞いしてくれればいい」
「何か企んでる顔だにゃ。気持ち悪いけど、それに従うにゃ」
気持ち悪いと言われて少し心に傷を負ったが今はそれは置いておこう。
いくら秘策があるとはいえ、油断したら犬の速撃で一撃KOである。
「じゃあ始めようか」
僕の一言で河原に一瞬の沈黙が訪れ、風の音がより緊迫した状況を演出する。
彼らも決闘とあり、血相を変え、戦闘モードだ。猫ちゃんも以前楽しそうにしているが、僕でもわかる鋭い闘気を放っている。
犬がスタンディングポジションをとり、全身に力を溜め込む。
そして視界から消える。やはり早い。
「へっそんな棒立ちで俺の攻撃を防げるかな!まぁ少しは手加減してやるよ!」
まぁやはり僕の目では犬の動きは捉え来れなかった。
犬は僕の目の前にいる。だが犬は僕を殴れない。
僕は鞄から秘策を取り出す。
それは。
袋の中にパンパンに詰まったドッグフード。
犬の部屋からこっそり拝借したものである。
犬はドッグフードを盾にされては攻撃出来ない。
ドッグフードを避けて攻撃すればいい?それもできない。
犬は反射で後退りした。
僕は左手にドッグフード。右手にナイフを持っていた。
「まさかてめぇみてえなゲスの考えることだ。俺が攻撃したらドッグフードを引き裂くつもりだったんだろう?人質みたいなもんだな」
「流石の下衆ぶりだな」
「ご明察だ。そしてお前はもう負けている?」
「何だと?」
犬が怪訝がる。時既に遅し。
熱血漢がハッとしたように叫ぶ。
「しまった、犬氏!後ろだ!」
「はっ?後ろがどうし……」
犬男の後ろにいた猫ちゃんに犬男が気付いた時にはもう、ノーガードで猫きっくをくらい、吹っ飛ばされていた。土手まで吹っ飛ばされて、壁にぶつかった衝撃音と大量に巻き上がる砂煙。やっぱり猫ちゃんつえー。
「隙ありだにゃ!」
「成る程な、高山氏のゲスっぷりを陽動にして……姑息な」
「何とでも言いたまえ!熱血漢。お前は後は川に落ちるだけだ!」
どうせ犬を呼ぶと思い、ドッグフードを持って来て良かったぜ。
そして僕にはもう一つの秘策がある。
「ふっははははははは!僕には見える!見えるぞ熱血漢!貴様が川に無様に溺れる姿が!」
僕は高笑いを上げた。