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おちる

作者: 森 go太
掲載日:2026/01/20

 音が遮断され、ゆっくりとした落下に身を任せていく。

 光がだんだん遠ざかっていって、底のない暗闇へと、身体が吸い込まれていくにつれ、少しの恐怖と、たっぷりの安らぎを感じる。ああ、これが終わるということか、と実感すると同時に、覚悟がすっと決まって、眠るように目を閉じる。

 身体に力を入れようとする気も起こらず、今はただこの落下に身を任せて、どこまでも沈んでいきたい。浮上するよりも、沈む方が遥かに楽だ。あの光は、自分にとっては眩しすぎて、追いかけると自分の暗闇がよく照らされて、近づけば近づくほど、焼け焦げるような衝動に駆られる。だけどどうしても追い求めずには要られなくて、光に群がる虫のようにみっともなくもがいていると、壊れていく身体と引き換えに、考えられないくらい大きな幸せを得ることができて、それだけでもう満足だった筈なのに、もっと求めてしまって、だから今自分はこうして報いを受けて、海の底に沈んでいる。


 自分にとって、貴方の光は途方もなく眩しかった。


 貴方と同じ輝きを持つ者でないと、貴方の隣に居続ける資格は無いのだと思う。自分が同じ輝きを放とうとしても、心の奥底に眠る暗闇が這い出てきて、荒波のように自分を海の中へ引きずり込む。そして耳元でこう囁くのだ。


 お前は、違う。

 お前の居場所はここだ。

 ここがお前の幸せだ。


 実際、そうなのだと思う。闇の中にいる時が、一番安心できるし、何も失う恐怖が無いから楽だ。自分が光の中で生きようとするには、何かを失うための要素を作りすぎた。だからもう、闇の中で生きることが、一番の幸せなのだと思う。


 だけど、最後にもう一度言わせて欲しい。

 私は貴方が好きでした。

 貴方の太陽のような笑顔が、暗闇に生きる私の光でした。

 現実には夢も希望も無いと思うけれど、

 貴方こそが、私の夢であり希望でした。

 ありがとう。


 海の中で、どこまでも身体は沈んでいき、遂に地上の光は全く見えなくなっていく。それを静かに見守る自分の身体が、この海と同化していくのを、私は微笑みと共に受け入れていた。

 私の身体はやがてプランクトンに分解され、海で泳ぐ魚達の養分となって、食物連鎖の渦の中に消えてしまうのだろう。だが私はそれでも良い。


 ーー貴方が幸せなら。

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― 新着の感想 ―
 森 go太さん、こんにちは 「おちる」拝読致しました。  新着の短編作品から作者様ページ、作品へ流れてきました。  ゆっくりと落下する感覚。  身を委ねたいけど、藻掻いていたい気持ち。  幸せを求…
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