おちる
音が遮断され、ゆっくりとした落下に身を任せていく。
光がだんだん遠ざかっていって、底のない暗闇へと、身体が吸い込まれていくにつれ、少しの恐怖と、たっぷりの安らぎを感じる。ああ、これが終わるということか、と実感すると同時に、覚悟がすっと決まって、眠るように目を閉じる。
身体に力を入れようとする気も起こらず、今はただこの落下に身を任せて、どこまでも沈んでいきたい。浮上するよりも、沈む方が遥かに楽だ。あの光は、自分にとっては眩しすぎて、追いかけると自分の暗闇がよく照らされて、近づけば近づくほど、焼け焦げるような衝動に駆られる。だけどどうしても追い求めずには要られなくて、光に群がる虫のようにみっともなくもがいていると、壊れていく身体と引き換えに、考えられないくらい大きな幸せを得ることができて、それだけでもう満足だった筈なのに、もっと求めてしまって、だから今自分はこうして報いを受けて、海の底に沈んでいる。
自分にとって、貴方の光は途方もなく眩しかった。
貴方と同じ輝きを持つ者でないと、貴方の隣に居続ける資格は無いのだと思う。自分が同じ輝きを放とうとしても、心の奥底に眠る暗闇が這い出てきて、荒波のように自分を海の中へ引きずり込む。そして耳元でこう囁くのだ。
お前は、違う。
お前の居場所はここだ。
ここがお前の幸せだ。
実際、そうなのだと思う。闇の中にいる時が、一番安心できるし、何も失う恐怖が無いから楽だ。自分が光の中で生きようとするには、何かを失うための要素を作りすぎた。だからもう、闇の中で生きることが、一番の幸せなのだと思う。
だけど、最後にもう一度言わせて欲しい。
私は貴方が好きでした。
貴方の太陽のような笑顔が、暗闇に生きる私の光でした。
現実には夢も希望も無いと思うけれど、
貴方こそが、私の夢であり希望でした。
ありがとう。
海の中で、どこまでも身体は沈んでいき、遂に地上の光は全く見えなくなっていく。それを静かに見守る自分の身体が、この海と同化していくのを、私は微笑みと共に受け入れていた。
私の身体はやがてプランクトンに分解され、海で泳ぐ魚達の養分となって、食物連鎖の渦の中に消えてしまうのだろう。だが私はそれでも良い。
ーー貴方が幸せなら。




