97/163
バーサーカー
さらに下層へ。
床に、無数の引きずった跡。
壁には、爪で削ったような傷。
「……今度は分かりやすく危ないね」
ナギが息を潜める。
突然。
ドンッ!!
天井近くから、
“何か”が落ちてきた。
全身が筋肉の塊みたいな巨体。
鎧は砕け、皮膚には無数の傷。
だが――痛みを感じている様子はない。
赤く濁った目で、こちらを見る。
『オオ……』
『マダ……イケル……』
バーサーカー。
理性はなく、
壊れるまで戦うだけの存在。
「正面から来るぞ!」
アレンが叫ぶ。
次の瞬間、
バーサーカーは自分の胸を拳で叩き――
ドン、ドン、ドン!!
血が噴き出すのも構わず、
さらに筋肉が膨れ上がる。
『コロセ……』
『コロセェェ!!』
「自己強化で自傷って、最悪だ」
セリオが歯噛みする。
ナギは一歩引き、
短く息を吸った。
「……シスター」
ルミエルは静かに答える。
「はい」
「この個体は」
一拍置いて。
「筋繊維が硬すぎます」
「戦闘中に言うことか!?」
アレンが叫ぶ。
バーサーカーが地面を蹴り、
壁を砕きながら突進してくる。
「でも」
ルミエルは微笑んだ。
「煮込めば、柔らかくなります」
狂気の咆哮とともに、
バーサーカーが迫る。




