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腐りゆく街
ナギ本人の、ただの一言。
言い訳にも、告白にもならない、意味の輪郭だけを残した曖昧な言葉。
それが引き金だった。
街のあちこちで解釈が膨らみ、
意図も責任も持たないまま噂は増殖し、
やがて一つの「意味」に収束する。
――《誤読》ツリー、最大解放。
誰もが同じ方向に読み違え、
誰もがそれを“正しい理解”だと信じた瞬間、
街そのものがスキルを獲得した。
最悪スキル
『聖性(誤)』
それは祝福ではない。
救済でもない。
ただ、誤った解釈が“聖なる前提”として固定化されただけだ。
祈られていないのに、祈りが成立する。
信仰がないのに、教義だけが先に生まれる。
ナギはまだ知らない。
自分の一言が、
「何も信じていなかった街」に
逃げ場のない正しさを与えてしまったことを。




