最悪の誤読
グールの処理を終えて、私たちはダンジョンの小部屋で休んでいた。
壁際に座り、私は水を飲みながら天井を見上げる。
《死後解釈》の感覚が、まだ頭の奥でざらついている。
……たぶん、
これ、使い方を間違えると面倒なことになる。
でも。
「ナギ、さっきの言い方……どういう意味だ?」
アレンが警戒した声で聞いてくる。
セリオは黙って、私の反応を待っている。
私は少し考えてから――
わざと、曖昧な言葉だけを落とした。
「うーん……」
一拍。
「“正しい扱い”をしたものは、
ちゃんと“残る”ってだけ」
それだけ言って、私は口を閉じた。
沈黙。
「……残る、って?」
セリオが聞き返す。
「さあ?」
私は肩をすくめる。
「結果かもしれないし、意味かもしれないし。
もしかしたら、名前とか」
アレンが立ち上がった。
「おい、そこで止めるな。
それ一番危ないやつだろ」
「でも、私、嘘は言ってないよ」
事実だ。
《死後解釈》が教えてくれたのは、
**“意味は後からでも付与できる”**ということだけ。
「……ナギ」
セリオが、少し困ったように言う。
「それ、聞いた人が勝手に解釈するやつだ」
「うん」
私は即答した。
「たぶん、そうなる」
二人の視線が、重なる。
アレンは頭を抱えた。
「最悪だ……
お前、わざとだろ」
「わざとだよ」
私は笑わなかった。
ただ、淡々と言う。
「だって、
“誤読”って、そういうスキルでしょ」
その瞬間――
頭の奥で、何かがきちんと噛み合った感覚がした。
《誤読》ツリー:効果増幅
《周囲の解釈が自動拡張されます》
(あ、ブースト入った)
私は内心だけで頷く。
アレンは呻いた。
「……なあセリオ」
「うん」
「これ、止められると思うか?」
セリオは答えなかった。
否定も、しなかった。
私は立ち上がる。
「行こ。
休憩終わり」
何も説明しない。
何も訂正しない。
そのほうが――
世界は、勝手に盛り上がるから。




