腐女子神になる
ダンジョンの奥。
湿った石壁に、魔力の燐光が滲んでいる。
【スキルツリー《誤読》が解放されました】
「……なんでダンジョンでこれが出るの」
私の視界に、ありえない項目が並んだ。
▶ 文脈破壊
▶ 善意の暴走
▶ 崇高な勘違い
▶ 沈黙の神託(警告)
アレンが即座に言う。
「やめとけ。それ“地雷”って顔してる」
セリオが眉をひそめる。
「取得条件……《制御不能》?」
「最悪って書いてあるけど」
「最悪だからだろ!」
私は指を伸ばした。
スキル取得
【スキル獲得】
《沈黙の神託(Lv1)》
効果:
あなたが発言しなかった場合、
同行者はそれを「深い肯定」として解釈する。
備考:
・取消不可
・否定困難
・沈黙時間に応じて解釈が強化される
「………………」
私は固まった。
アレンが低声で言う。
「ナギ、今すぐ“違う”って言え」
その時。
ダンジョンの魔力が、ざわりと揺れた。
【環境効果発生】
《神託待機》
「え、なにこれ」
セリオが息を呑む。
「……このダンジョン、
“意思ある沈黙”を情報として処理してる」
「そんな仕様聞いてない!」
誤読は内側から始まる
ルミエルが、私を見つめていた。
炎を灯す祈りの姿勢のまま。
「……ナギ様」
私は答えない。
《沈黙の神託》発動
(経過時間:8秒)
「言葉がない……
それは、言葉を超えた肯定……」
「ルミエル! 勝手に補完するな!」
彼女は首を振る。
「火も、最初は沈黙です。
燃える前に、ただ在るだけ……」
【EXP +30:聖的解釈】
セリオが青ざめる。
「ナギ……早く何か……」
《沈黙の神託》
(経過時間:15秒)
→ 解釈段階:深化
ダンジョンの壁画が、じわりと光った。
「壁まで反応してる!?」
アレンが叫ぶ。
「お前、今ここで神扱いされ始めてるぞ!」
最悪の確定
私は息を吸った。
――何も言わなかった。
【誤読派生】
《沈黙=許可》
ルミエルが、はっとしたように跪く。
「……やはり。
否定されないということは、
進めという御心……!」
「進めるな!」
「内臓儀式を?」
「そこで具体化するな!」
【EXP +50:聖女の確信】
セリオが小さく呟く。
「……僕、
少しだけ分かってきた気がする」
「分からなくていい!」
《沈黙の神託》
(経過時間:30秒)
→ 神意仮確定
ログが冷酷に流れた。
【ダンジョン適応】
《神託を受けし者:ナギ》
アレンが頭を抱える。
「……ダンジョンの中で神になるなよ」
私は乾いた声で言った。
「でもさ」
「なに」
「これ、外に出たら――
絶対、印税跳ねる」
全員が絶望した。




