グールを食べてみる
グールを討伐した後、問題はいつも同じだった。
――下処理を誰がやるか。
「……で、どうする?」
私が死体を見下ろして言う。
グールは人型だが、人ではない。
腐肉と瘴気の塊みたいな存在で、魔力はあるが扱いが難しい。
「焼く」
アレンが即答した。
「生」
ルミエルも即答した。
「意見割れるの早くない?」
私は一歩引いた。
「焼かないとダメだろ! 見ろよこの色!」
アレンが指をさす。
「火は浄化です」
ルミエルは真顔だった。
「焼けば“聖性”が逃げます。生でいただくべきです」
「いただくな」
セリオは少し離れた場所でしゃがみ込み、
淡々と観察している。
「グールは死後すぐなら魔力が安定している。
火を通すと効果は落ちるね」
「ほら」
ルミエルが小さく胸を張る。
「でも匂いは?」
私が聞く。
「……それは我慢です」
ルミエルは目を逸らした。
下処理が始まった。
皮を剥ぐ係:アレン(不機嫌)
魔力確認:セリオ(冷静)
祈り:ルミエル(勝手に)
立ち会い:私(何もしない)
問題は最後だった。
「内臓、どうする?」
私が言った瞬間、全員が黙る。
「……心臓は魔力が強い」
セリオが言う。
「じゃあセリオで」
私が即決する。
「いや待って」
セリオは一歩下がった。
「胃袋は浄化の象徴です」
ルミエルが名乗りを上げる。
「やめとけ」
アレンが止めた。
沈黙。
全員の視線が、私に集まる。
「……なぜ私を見る」
「お前だろ」
「適任ですね」
「責任者だ」
「違うだろ」
結局、内臓は焼いて私が食べた。
生派と焼く派の、雑すぎる妥協だった。
「……味は?」
アレンが聞く。
「まずい」
私は即答した。
「でも、多分これ、魔法になる」
ルミエルは静かに頷く。
「やはり食は啓示です」
セリオは何も言わず、黙々とメモを取っていた。
――グール:下処理済み
――効果:不明(後日発現の可能性あり)
今日のダンジョンは、だいたいこんな感じだった。




