ギルドで鑑定チート能力はっけん?
ギルドに入ると、まず目に入ったのは人の多さだった。
鎧に剣、ローブに杖。
そして――美男美女。
「あの腐れ女神、美男美女が多いって言ってたのは本当みたいだな」
特に、男性二人組のパーティーが目に入る。
距離感が近い。背中を預け合う立ち位置。
……薄い本が、頭の中で分厚くなっていく。
早く執筆したい。
「――あ、あの。いらっしゃいませ」
声をかけられて、現実に引き戻された。
カウンターの向こうには、眼鏡をかけた可愛らしい受付嬢が立っている。
控えめで、少し気弱そうだ。
なぜか、私を見る目が怯えている気がする。
「見かけない方ですが、新規冒険者登録でよろしいでしょうか?」
「うん、登録お願い」
「か、かしこまりました……! ではまず、この水晶に手を置いてください」
来た。
私は知っている。
これは、転生者あるあるイベントだ。
――チート能力がバレるか、
――魔力量が多すぎて水晶が粉々になるか。
どっちかだ。
(黒髪、黒い瞳……間違いない。
この人は、地球の“日本”から来た転生者だ)
受付嬢は、表情を必死に取り繕いながらも、内心では確信していた。
転生者は例外なく、歴史に名を残す。
魔王討伐、新宗教の開祖、未知の技術の発明。
形は違えど、必ず“何か”を成し遂げる存在。
(この人が触れた瞬間、水晶は粉々になる……!)
「じゃあ、触るね」
――……。
何も起きない。
「……あれ?」
光らない。
割れない。
沈黙。
「水晶壊れるパターンじゃないの?」
(え?)
受付嬢は目を見開いた。
水晶は無傷。
表示された数値を見て、さらに固まる。
(……オール、5?)
ありえない。
一般的な十歳児以下の数値だ。
(転生者じゃない?
でも黒髪黒眼なんて、この世界じゃほとんど……)
「えっと……」
「早く冒険したいから、ダンジョン教えて」
「い、いえっ!? あ、あなたがダンジョンに行ったら、確実に死にますよ!」
「でもお金ないし。早く稼がないと」
受付嬢は一瞬悩み、それから慌てて言った。
「そ、それでしたら……隣の宿兼酒場が、人手不足で……。
まずは、そちらで働いてみてはどうでしょうか?」




