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腐った宗教国教になる

女王は、ぽたりと――

本の上に、涙を落とした。

「……陛下?」

側近が息を呑む。

「穢れた書をお持ち帰りし、申し訳ございません。

今すぐ、焼却を――」

「よい」

女王は静かに首を振った。

涙は止まらないが、声は不思議なほど澄んでいる。

「素晴らしいではないか」

「陛下……?」

女王は本から目を離さず、淡々と語った。

「わらわは十四で、前国王に嫁いだ」

玉座の間の空気が張りつめる。

「すべては政のため。

王妃とはそういうものだと、

愛とはそういうものだと、

疑うことなく教えられてきた」

女王は、かすかに目を伏せる。

「じゃがな……

この書は、違う」

ページに指先を置く。

「義務でも、契りでもない。

立場を越えて、

それでも相手を選び続けること――

それを愛と呼んでおる」

涙が、静かに落ちた。

「わらわは、

その意味を知らぬまま、

王妃として生きてきた」

女王は、本を閉じる。

「だがこの世界は、

真実の愛が何であるかを、

確かに描いておる」

そして、決断を告げた。

「――宣言する」

側近たちが一斉に跪く。

「今より、

キリスト教の全権限を剥奪する」

息を呑む音。

「サクラ教を、

この国の国教とする」

沈黙。

それは信仰の選択ではなく、

女王自身が初めて下した、

個人的な決断だった。

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