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聖なる宴

料理は、どれも異様に豪華だった。

骨付き肉は香草で丁寧に包まれ、

黄金色のスープは湯気の向こうで静かに揺れている。

「……すげえな」

アレンは、正直な感想を漏らしただけだった。

「この肉、柔らかい。

今まで食った中で一番かもしれない」

――その瞬間だった。

「聞きましたか!」

サクラが、ぱっと顔を輝かせる。

「聖アレン様が、“最も尊い肉”とお認めになった!」

(やめろ)

「書き留めなさい!」

従者が慌てて羊皮紙を取り出す。

「“聖人アレン、初めて口にした供物を誉め給う。

その肉、魂を養う力を宿す”――」

(待て待て待て)

「ちょ、ただの感想だ!」

アレンは慌てて手を振った。

「腹減ってただけで、深い意味は――」

「謙遜なさらずとも」

サクラはうっとりと目を伏せる。

「聖人が“無意識に語った言葉”こそ、

最も真実に近いのですから」

(最悪の理屈だ)

その横で、別の従者が声を上げた。

「教祖様!

このスープは“二人が同じ鍋から分け合った”と壁画に――」

「それも聖典に加えましょう」

「えっ」

「“同じ器から食すことは、魂の同調を意味する”

よい解釈です」

(勝手に解釈するな)

気づけば、料理一品ごとに「由来」が生まれていく。

・このパンは、二人が無言で分け合った

・この酒は、視線を交わしたあとに飲んだ

・この香草は、沈黙の時間を象徴している

――全部、今ここで食べてるだけだ。

セリオは完全に固まっていた。

「……アレン」

小声で囁く。

「これ、全部“記録”されてる」

「見りゃ分かる」

アレンは、もうどうでもよくなりつつあった。

そして、問題の一皿が出てくる。

先ほどアレンが「一番うまい」と言った、あの肉。

サクラが、両手で掲げるようにして宣言する。

「この料理は、

聖アレン様が祝福なさった供物――

聖餐として、今後教団の正式儀式に採用します」

「は?」

「信者は皆、これを口にし、

聖人の強さと絆にあやかるのです」

(俺、なに祝福したことになってんだ)

「ちなみに保存は?」

誰かが聞く。

「乾燥、燻製、粉末化――

巡礼用にも対応できます」

(量産する気だ)

なぎは、頭を抱えた。

(終わった……)

たった一言。

「うまい」

それだけで、

世界に新しい宗教儀式が増えた。

アレンは皿を見つめ、乾いた声で呟く。

「……なあ、セリオ」

「なに」

「俺、もう二度と感想言わない方がいい気がする」

セリオは、ゆっくり頷いた。

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